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小学生のオーバーハンドパスは「持つ」のを大目に見るべきなのか?(2/4) 「持たせなくても大丈夫」

小学生のオーバーハンドパスは「持つ」のを大目に見るべきなのか?(1/4)「持たせるところから始める」指導の意味 からの続きです。
前回は、小学生バレーの現状と「持たせるところから始める」指導が意味することについて説明してきましたが、今回は、それでは「どのような指導が可能なのか?」ついて、詳しく説明していきたいと思います。

指導者に「持たせなくても大丈夫」と安心してもらいたい

中高カテゴリーになっても、以下のような理由で「あえて持つことを教える」指導者も多いようです。中高でそうならないように、小学生のうちにちゃんと「ヒット」できるようにしておきたいところですが、これらの理由があまり大きな問題ではないことを分かっていただければ、安心して指導できるのはないかと思います。

・持たないとダブルコンタクトの反則を取られる
・持った方がコントロールしやすい
・少し持つぐらいが良いハンドリングである
・それしか教えられない

これらに「持たないと飛ばせない」も含めて、何ができそうか考えていきたいと思います。

・持たないとダブルコンタクトの反則を取られる

初心者の場合、「手の形が全くできていない」こともあります。手指のどこに当たるかまるで分からないのでは、上手くヒットできるわけがありません。

その場合は、オーバーハンドパスの体勢で手をボールになじませるよりも「床に向かって両手でボールをつく」のをお薦めします。オーバーハンドパスの体勢でやると、練習が成立するために様々な条件が必要となり、難しすぎて「手をボールになじませる(ボールにあった形をつかむ)」ことに専念できないからです。難しすぎると「持つ」しかなくなりますね。

ある程度連続でボールを床につけるようになってきたら、両手の親指の間の距離とか人差し指の間の距離とかに注意を向けていけば、「ボールにフィットした手の形」を自分で見つけていくことができます。

もう少し上手くなってきて「たまにクリーンヒットすると、きれいにしっかり飛ばせるけど、普通にダブルコンタクトの方が多い」というような場合、指導者としてどうしたいと思うでしょうか?「ダブルコンタクトしてしまうんだから、ハンドリングを直さないといけない」と思うのではないでしょうか?

しかし、「たまにきれいに飛ばせる」ということは、ハンドリングも含めてそのやり方を体が知らないわけではないということです。では、どうすれば再現性を高くすることができるでしょう?再現性が低いのはなぜでしょうか?

再現性が低い一番の理由は「ボールをとらえる位置や姿勢が安定しない」ことだと考えられます。ボールに力を伝える条件が一定しなければ、ハンドリング(手の使い方)をどうすればいいかなんて分かるはずがないですね。言い換えれば「ハンドリングを試行錯誤で上達させるためには位置や姿勢が安定していた方が良い」ということです。

ここで「この姿勢で(こう構えて)、この位置で取りなさい」と言って教えれば上手くいくかというと、決してそうではありません。飛んでくるボールに対して自分の体の「動き」でボールに力を伝えるというのがどうすれば上手くいくか?それは「これが正しい形と位置だ」と言われてそれを覚えることとは全く違います。「形や位置を教えられる」ことと「ボールに上手く力が伝わるときの感じをつかむ」こととは全く次元が違い、役に立つのは「感じをつかむ」方です。

いい位置で取っているかどうか、今捉えた位置がいいかどうか、そもそもいい位置とは何か?というのは、体の力がボールに上手く伝わるかどうかでしかないわけで、「正しい位置はここ(オデコの前)」と言って教えられるものではないんですね。

「ボールをどこでとらえればどこに飛ぶか」をたくさん体験し、「思ったところに飛ばすにはどこでとらえればよいか」を探していくことが、適切な姿勢、とらえる位置、力の伝え方を自分の感覚としてつかんでいくことになります。そして、それが「ハンドリング」を安定させ、より洗練させていくことにもなるわけです。

そもそも、小学生の間はダブルコンタクトの反則をとられないわけですから、安心して子どもたちに試行錯誤させてあげてほしいと思います。中学以降のバレー人生に、何を選手の財産としてプレゼントできるでしょうか?

・持った方がコントロールしやすい

「体を上げる方向に向け」ればボールは正確に目標に向かって飛ぶのか?(コントロールのメカニズム) で解説したように、ボールが飛ぶ方向は「体の中心→ボール」を結ぶ線の方向になり、「ボールをとらえる位置」によって正確なコントロールができるということになります。

この「ボールはどこでとらえればどこに飛ぶか」という感覚は、プレイヤー自身が試行錯誤でつかんでいくしかないものなので、それなりに時間がかかります。それに比べて「持って投げる」をやらせれば、ずっと早くそれなりにコントロールできるようになるでしょう。しかし、それをやってしまうと「ボールをとらえる位置」と「ボールが飛ぶ方向」は一定の関係がなくなり、「ボールはどこでとらえればどこに飛ぶか」というコントロールに最も重要な感覚がつかめなくなってしまうのです。

持たないで試行錯誤した方が、ちゃんとコントロールする力を身につけられるということですね。

・少し持つぐらいが良いハンドリングである

確かにハンドリングは「微調整」の部分で重要な能力かもしれませんし、前回の記事でも書いたように、上級者はハンドリングだけで絶妙なボールコントロールができます。その微妙な手の使い方こそオーバーハンドパスの究極のゴールなのかもしれませんが、それは初心者から求めるべきことなのでしょうか?

それを求めていくことは「バレーは遊べるまでにたくさん苦労するのが当然だ」ということになり、バレーボールをやってみようという人を減らすことにつながるのではないかと思います。

・それしか教えられない
・持たないと飛ばせない
については次回 (3/4)「どのような指導が可能なのか?」 で説明したいと思います。

バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。