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セットするときは「ボールの下に入り、上げる方向に正対」すべきなのか?(後) -セットアップの基本を考える-(2/5)

セットする(トスを上げる)ときは「ボールの下に入り、上げる方向に正対」すべきなのか?(前) -セットアップの基本を考える-(1/5)からの続きです。

「体を上げる方向に向け」ればボールは正確に目標に向かって飛ぶのか?(コントロールのメカニズム)

ボールが飛ぶ方向は体の向きだけで正確にコントロールできるものでしょうか?

例えば、セッターの右手をねらってパスをコントロールしたり、レフトへのセットをネットから50㎝離れたところに上げたりすることをイメージしてください。ブレが10㎝以内になるように、体の向きを調節することができそうでしょうか?目標を10㎝ずらすために体の向きをどのくらい変えればいいのか想像できるでしょうか?「体の向きで方向がコントロールできる」というのはそれができるということですが、そんなことは無理ですよね?

つまり、ボールが飛ぶ方向は体の向きだけで正確にコントロールできるものではなく、腕の使い方によって決まるわけです。 日本バレーボール協会編「コーチングバレーボール 基礎編」の「セットの動作原理」には、「重心の鉛直線上とセット目標を結んだ位置でボールを捉え、目標に向かって両手を動かすと正確にコントロールできる」と書かれています。

ボールが飛ぶ方向は動画【フォーラム】セットのバイオメカニクス(後編)でも説明されているように、「体の中心→ボール」を結ぶ線の方向になり、「ボールをとらえる位置」によって正確なコントロールができるということになります。

つまり、体の向きよりも「体の中心と目標を結んだ線上でボールをとらえる」ことが重要で、後はボールに向かって真っ直ぐ腕を伸ばして力を伝えれば、ボールは目標に向かって飛ぶことになるのです。 

「体を上げる方向に向ける」のは、その方が「体の中心と目標を結んだ線上でボールをとらえる」ことがやりやすいかもしれないので、余裕があればそうしてもいいのですが、重要ではありません。 むしろ、目標とボールを結んだ線の後ろに回り込まなければならないために間に合わなくなり、また、余裕がないと、体の向きを変えながらボールをとらえることになって、とらえる位置が曖昧になるという大きなデメリットがあります。

繰り返しになりますが、「体に対してボールをどの位置でとらえるか」が「体がどこを向いているか」よりも圧倒的に重要なので、とらえる位置が曖昧にならないように、「脚の力(床反力)を使ってボールを飛ばそうとするまでには、体の回転を止めて向きを固定しておく」必要があるということです。

そもそもセッターは、レフト方向を向いてクイックにもライトにもバックアタックにも上げられるようになる必要があり、「上げる方向に体の正面(または背中)を向ける」のはほぼ不可能になります。そのための土台となる感覚「体の中心と目標を結んだ線上でボールをとらえる」を最初から身につけるべきではないでしょうか?
(どこでボールをとらえればどの方向に飛ぶか」をつかむための練習方法(前) -セットアップの基本を考える-(3/5))に続く

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