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「どこでボールをとらえればどの方向に飛ぶか」をつかむための練習方法(後) -セットアップの基本を考える-(4/5)

【4/5】


「セットアップの基本を考える」5回シリーズの続きです
1/5 「ボールの下」とはどこ?
2/5 「体を上げる方向に向け」ればボールは正確に目標に向かって飛ぶのか?
3/5 「どこでボールをとらえればどの方向に飛ぶか」をつかむための練習方法
4/5 注意してほしいこと
5/5 「セットアップの基本」とは?

注意してほしいこと

シリーズの1回目(1/5)で「問題のある練習」について書きましたが、重要なことは「どこでボールをとらえればどの方向に飛ぶか」をつかむための練習になっているかということです。

ボールを捉えるべき位置は、どこに上げるかでも違いますし、コート上のどこから上げるかによっても当然違います。まず、「状況次第で変わる」という前提に立てないと、適切な位置を見つけることはできませんね。「いつも同じ位置でとらえろ」と言われてないでしょうか?

次に問題なのは「適切な位置」で捉えられたかどうかをやっている本人が感じられない場合ですが、「ボールの下に入ってキャッチ」をやらせると「適切な位置」かどうかは分からなくなります実際に上げてみてこそ「どの方向に飛ぶか」が分かる、つまり、捉えた位置が適切だったかどうか分かるわけですね。

同じ問題は「持って投げる(持ちパス)」をやる場合にも起きます。持つことで「捉えた位置から移動させて、別の位置でボール投げる」ことができてしまうので、捉えた位置が適切だったかどうか分かりようがないということになります。

ボールを捉えるべき位置への移動は、直線的に行い、向きを変えないで止まる方が時間がかからず、間に合う可能性が大きくなりますから、ステップにこだわらず臨機応変に行えるようにしておいた方がいいだろうと考えています。「体の止め方」はいろんなパターンを経験しておいた方がいいでしょうね。

「間に合わない(自分がとらえたい位置まで体を持って行けない)」と判断したときは、アンダーやワンハンドに切り替えることも重要です。 「間に合う」というイメージができてくると、自分の限界のスピードで動こうとするようになるし、よりロスの少ない止まり方を探せるようになります。

「機敏でない」と言われる選手は「自分が間に合っている状態」を知らないことが多く、それを知ってもらう練習をすると、個人の限界のスピードで動いてくれるようになることがほとんどです。

ここで特に気を付けたいのが「プレイヤー自身の判断を尊重する」ということです。「間に合っているイメージ」もそうですが、プレイ中はプレイヤー自身の感覚に従って判断し行動を選択するしかないわけですから、プレイヤーが自分の判断を信じられなくなったら、最適な行動はとれなくなってしまいます。

たとえば、「間に合う」と判断して無理なプレイをしてミスになった場合、その判断を振り返ってもらうことはあっても、「自分で判断し、それに従って行動した」ということ自体を否定しないということですね。自分の判断を信じてそれに従って行動することが守られてこそ、自分の判断基準を修正していくことができることになります。

ここまで、実は「サイドセット」を前提に書いてきましたが、指導者がそれを許さず、「上げる方向に体を向けろ」と言われるかもしれません。その場合も「ボールに対してどんな位置で、どんな体勢を取れば、上げたいところに上げれそうか」をイメージして、その体勢になれるように体を止めることはできると思います。 

やってはいけないことは 「ボールの下に入る」→「目標に向けて体勢を整える」→「目標をしっかり見る」→「トス(セット)」 というふうに何ステップも掛けてしまうことです。いくら時間があっても足りませんね。 しっかりイメージを作って、ワンモーションでその体勢へいけるようにしてください。

なお、「サイドセット」については前回説明の通り、日本バレーボール協会から出ている「コーチングバレーボール」のp143「セットの動作原理」とp150「セッティングの練習方法」に基本として書かれています。

「コーチングバレーボール」では「重心の鉛直線上とセット目標を結んだ位置でボールを捉え、目標に向かって両手を動かすと正確にコントロールできる」と書かれており、「重心の鉛直線上」という言葉を使っていますが、動画【フォーラム】セットのバイオメカニクス(後編)では単に「身体」という言葉を使っており、このnoteでは「体の中心」という言葉を使っています。

この点が実は曖昧なところで、様々な方向へのボールコントロールをつかんでいくうちにプレイヤーの感覚として捉えられていくものだろうというのが、現時点での認識です。

最終回「セットアップの基本」とは? に続きます。

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バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。