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仏蘭西料理と私

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1900年創業、日本最初のフランス料理店、多くの文人・芸術家・軍人などの著名人が集った「龍圡軒」の四代目当主、岡野利男さん。18歳で単身渡仏して修行10年。フランスの最優秀調理師… もっと読む
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『仏蘭西料理と私』~No103 トラムの旅~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No103 トラムの旅~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

昨日、前にも書かせて頂いた、トラムの旅。フィンランドのヘルシンキを見ました。

今回の放送では、全編にわたり音楽が流れているので、私はがっかりしました。それは町の様子、そう、その場の様子が、町の雑踏の音の方がよく分かると思うのです。時間は映像のなかの影で、想像がつくのですが、多分プロデューサーの方は、名所でない住宅の静けさが番組的に寂しいと思われたのだと思います。

実はこの頃、つくづく思うことが

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『仏蘭西料理と私』~No102 心の幸福と貧困~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No102 心の幸福と貧困~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

大変失礼をいたしました。

今朝、恒例の歯の移動をしていただいている歯医者さんでワクチンの話になりました。それで、前回に書いた港区の高齢者の方々の人数が6,500人だと話すと「それはおかしいよ。岡野さん」でした。そして「それはこの地域の話じゃないの」。

その瞬間、我に返りました。

どう考えても私と同じような年齢の人が港区区内に6,500人しかいないのはおかしい。何で気がつかなかったんだろうと、

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『仏蘭西料理と私』~No101 ワクチン接種~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No101 ワクチン接種~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

ここ10日ほどの間に、この文も含め6話も、エッセーを書かせてもらいました。自分でもびっくりするくらい気になる話題があったわけです。昨日、お陰様で、第1回目のワクチンを打っていただきました。この話は、後ほど。

今は27日午後2時50分。食後で、雨が降っています。

今年はびっくりするほど早く梅雨入りしたようで、5月途中での梅雨入りの報道が入ったときには、あのジメジメした蒸し暑い日が来るのかと思いま

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『仏蘭西料理と私』~No100 注射を“打つ”話~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No100 注射を“打つ”話~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

ここ2~3日、嫌な夢を見るのです。

それは第1回目のワクチン接種を受けに行った会場で、接種券を忘れて持っていないのです。大変嫌な場面なのですが、もっと嫌なのは、ここで目が覚めるので、1日が不安のなかから始まってしまうのです。しかし、ですよ。それも、あと1日。明日5月26日11時30分に打てるので、ようやく終わると思います。

昨年の6月に年2回の定期検診に行っている歯医者さん。もう何回もこのエッ

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『仏蘭西料理と私』~No99 新橋、新市庁舎・・・~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No99 新橋、新市庁舎・・・~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

新橋、新橋、なんと良い響き、しんばし、新しい橋です。でも“汽笛一声新橋の~”の新橋ではなく、パリの新橋Pont newfポンヌフです。

前にも書きましたが、しんばしと云っておきながら、セーヌ川に架かる橋で一番古いのです。それと同じような風景を昨日見ました。それは、旧ドイツの音楽の町、ライプツィヒのトラムでの旅という番組のなかで見せてもらいました。それはライプツィヒの新市庁舎でした。

トラム、路

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『仏蘭西料理と私』~No98 前向きの話~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No98 前向きの話~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

今朝、田村正和さんの訃報が朝一番のテレビのテロップで流されました。

生放送をしている女性キャスターは、別のアナウンサーが読む原稿に耳を傾けながらモニターに目を泳がせると、その瞳の驚き様。目はものを云うと云いますが、この方は正直な方だなと思いました。

その数分後に改めて田村さんの訃報とその俳優人生を紹介しておられました。たぶん準備はされていたんだろうと想像しますが、なんと早くこれだけをまとめるの

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『仏蘭西料理と私』~No97 今、やるべきこと~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No97 今、やるべきこと~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

今日は5月18日火曜日です。

あと9日間でコロナのワクチンの接種が可能になります。とにかくこの9日間が一番危険だと気を引き締めて、レストランなのに人と会わないように生活しようと思っております。現在、レストランでは、以前からのお客様だけ、それもご予約のみにさせて頂いております。

この5月に入ってからの東京都緊急事態措置の中核がテレワークや人との接触を避ける、で「不必要な外出はしないで下さい」とテ

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『仏蘭西料理と私』~No96 ヴァンデグローブ~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No96 ヴァンデグローブ~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

自分でもバカだな~と思いました。それはテレビでヨットレースをしていて勝手に思い込んでいたのです。あの有名なフランスの世界一周レース、ヴァンデグローヴです。

ヨットですから風力で船を進めるので、ヴァン・デ・グローヴ Vent des Globes vent(風)des(の)→de(の/前置詞)+les(不定冠詞)→desと書く。globesは、globe(世界)の複数形で、風での世界一周だと思って

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『仏蘭西料理と私』~No95 夫婦愛~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No95 夫婦愛~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

今日、映画のワンシーンのような場面を西麻布の交差点で見ました。

前を行く老婦人が、これまた同じ老犬を引き連れてと云うよりも、ゆっくり歩みを進める婦人のあとをヨタヨタと老犬がついていくのです。見ていて何とも言えない安心感というか、漢字ではない心あたたまる光景。長年寄り添ってきた仲。人生、犬生の相棒なのでしょう。本当に映画のワンシーン。

あれ、どこかで見た感覚がありました。そう、それはルルーシュの

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『仏蘭西料理と私』~No94 噛む~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No94 噛む~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

昨日、お客様から「岡野さん、痩せられましたか?」と、来店一番、声をかけられました。答えは「はい、少し痩せました」でした。

「1ヶ月前より首回りがスッキリしたように見えたのでお聞きしたの。ごめんなさい」

「いえ、実は家内の血圧が高いので、先生が薬を飲むか、ご主人と相談してください。薬を飲むと、ずーっとですから、と云うわけで減塩と食事の量を減らして運動することにしたのです」

「それでご主人も?」

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『仏蘭西料理と私』~No93 味付け~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No93 味付け~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

初っぱなから尾籠な話しで失礼。

昨晩、3回もトイレに置きました。犯人は分かっているのです。それと共犯者も。現在、私が大変憂いていることがあります。それは流行です。

今回のコロナもそうですが、流行は問題です。この流行には二通りあり、自分のなかだけで流行ること、世間全体で今回のコロナのように流行る、この2つです。どちらにしても、あまり好ましいことではないと思います。

自分自身を振り返ってみても、

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『仏蘭西料理と私』~No92 心温まるお話~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No92 心温まるお話~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

前回は、私の無知で大変お騒がせいたしました。改めて、お詫び申し上げます。今回はこのコロナ禍のなかで、ちょっと心温まるお話しです。

それは遡ること3週間ほど前に、感染症拡大防止協力金の交付の受付が始まったので、申請書類と店の写真を送るために初めて、アイパットで写真を撮ったのです。問題はここからでした。

どのようにと云うよりも、どこに持っていって現像して、いや待てよ、現像はフィルムの写真の話で、フ

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『仏蘭西料理と私』~No91 チューリッヒ~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No91 チューリッヒ~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

モータープール。前回の話しですが、ひょっとしたら今でも勘違いする人がいるかも知れないと思いました。なぜならば、今ではほとんどの駐車場で使っている言葉はParkingパーキングですから。こんな言い訳がましいことを云っても、自分が無知なのと、バカだったのは変わりません。

でも言葉の流行というのでしょうか。流行言葉には、これでいいのかと思うことに多々、出逢います。今の若い人たちと云うよりも、女の子達が

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『仏蘭西料理と私』~No90 モータープール~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

『仏蘭西料理と私』~No90 モータープール~【龍圡軒 四代目店主 岡野利男シェフ】

こちらの記事は、災害防止研究所公式サイトにて連載しております、過去ブログの内容です。最新記事は、下記リンクからお読みいただけます。バックナンバーは、マガジンにもまとめておりますので、是非ご覧ください。

私が生まれ育った新龍圡町から北東へ400mほど行ったところに、今ではパリのシャンゼリゼと同じくらい有名な交差点があります。それはROPPONGI六本木です。

さきほど家内と連れ添って、この六本木

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