株安と円安とインフレに関する雑感

ロシアによるウクライナ侵攻が本格化し、株式相場は全世界的に大きな下落を記録しました。昨年31年ぶりに3万円を回復した日経平均も続落し、先週木曜日には一時26,000円を割り込み、現在も27,000円を回復することなく推移しています。

株式市場が大きく反応しているのに対し、為替市場ではもはや定説となった「リスクオフの円高」は意外と進んでいない様子です。本日も土日を経て明け方こそ大きな窓開けがありましたが、蓋を開けてみれば円の全面安で推移していた金曜深夜の相場にほぼ全戻しをしている様子です。

当事者のロシアルーブルは経済制裁を背景に暴落している状態ですが、それ以外の通貨はどこ吹く風の状態です。一つの要因としてはツイートにも書いた通りの円安を導く原油高があろうかと思いますが、より長期的な視点では、日本の競争力低下を背景にした低成長がありそうです。

大きな話題になっていた先週の日経記事とともに、年末のロイターの記事が頭をよぎります。

安倍政権の時代から一貫して輸出産業強化を旗印に円安誘導を行ってきたわけですが、個人的には円安とつねに抱き合わせで提唱されるインフレターゲットがことごとく未達になっていることこそが根本的な低成長の要因ではないかと感じています。

今を時めくIT企業が集積するシリコンバレーでは、年収1,000万円(今の相場だと9万ドル弱でしょうか)程度ではもはや貧乏人と言われてしまうわけですが、同時に物価も驚くほど高く、生活水準はさして変わらないなどという話はよく耳にします。

物価が上がり、給与も上がり、消費も上がるというサイクルが達成されている地域と達成されていない地域があるなら、流通しているモノやサービスが全く変わらなかったとしても、外形的には前者は成長していて後者は成長していないという結論になるわけです。

確かにシリコンバレーは世界の最先端をゆくエリートの会社が集う所かもしれません。しかしながらシリコンバレーと比べるならまだしも、日本が世界平均と比べてまるで成長できていないとか、世界から取り残されているなどの言説には肌感覚の時点で違和感があります。

日本には良い商品、良いサービス、良い産業が存在します。それにもかかわらず世界と比べて成長ができていないといわれるのは、本質的な成長やイノベーションの実現が出来ていないからというよりも、インフレが達成できておらず、外形的に低成長になっていることが主因なのではないかと思う次第です。

現在のこの低インフレは複雑な諸要因に起因しているので、簡単にまとめることは本来できないのだが、あえて簡単に言ってしまえば、お金の量とは関係なく、製品やサービスの需給が大きく供給過多に傾いていることが大きいのだろう。

多くの経済学者はこれを需要不足と捉え、財政拡大や生産性の向上で需要のかさ上げをすべしと主張するのだが、実際のところは、需要はもう何をしてもそれほど伸びないのだ。それが少子高齢化を伴った経済の成熟化ということである。

財政出動はもちろん一時的に需要を増加させるが、その効果は長続きしない。金融緩和やマネーの供給は、そもそも需要の増加にはほとんど貢献しない。その一方で、技術革新やサプライチェーンの高度化で供給力はどんどん強化されていく。

引用元:「何をしてもインフレが起きない」時代を考える

金融緩和をとなえ、円安に誘導すれども、それでインフレを達成することは今の日本の環境では難しいのではないかと思います。

上記の記事で触れられている「少子高齢化を伴った経済の成熟化」もそうですし、何より日本社会のマジョリティになりつつある年金受給者にとってインフレとは自身の実質的な年金受給額を目減りさせる、百害あって一利なしの現象であることから、そもそも国民がインフレを求めていないという背景も重要でしょう。

高齢者の立場から仮に、年金という強力カードで残りの余生を勝ち逃げするという自己中心的な考え方に立脚して考えると、デフレで低成長というのが一番経済合理的な環境になるわけです。

日本のデフレと低成長はそうした個人個人の思惑が結集して民主主義的に導かれたナッシュ均衡なのかもしれません。


本日は以上です。
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それではまた次回。

2022.2.28 さいとうさん


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