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無印良品の段ボールから学ぶ 「おもてなし幻想」

「おもてなし」= 「通常のサービス」  プラス  「無料のカスタマーサービス」?

ホテルマンの私は、この定義にいつも疑いの目を持っている。

「おもてなし」= 本当にそれは目の前のお客様にとって素晴らしいものなのか?

「おもてなし」=「しない」ことがお客様にとって最高のサービスということだってあることだってあるのではないか?

ホスピタリティ業に従事する者の考えは十人十色で考えても尽きないが、これだけは言える。「おもてなし」は高級やホテルや格式高いレストランだけのものではない。

このnoteは先日ベッドリネンを一新した時の、MUJIの”粋な”「おもてなし」の話である。


カッターがいらない段ボール

スタッフ対応でもなく、電話口のカスタマーサービスでもなく、私が感動したのはMUJIの段ボール。

私は一つの段ボールから「おもてなし」を感じた。

とても楽しみにしていた綿三重のシーツと枕カバー。さっさとお気に入りの柔軟剤で洗濯して、出かける前にお日様の下でカラッと干そう。そうすれば今夜は肌触り抜群の気持ちいリネンと一緒に、最高の睡眠環境でぐっすり眠れる。

お家時間が増え、オンラインショップを利用することが多くなった。買い物に行かなくていい&帰りに大きな荷物を持って電車に乗らなくていいといった素晴らしい利点がありつつも、玄関にたまりに溜まっていく段ボールと過剰包装で出たプラスティックのゴミ、いずれいらないゴミになるチラシや送付状の山にストレスを感じるのはきっと私だけではないはず。納品書はメールで見れる。もう、あれ ぶっちゃけいらなくない?  デフォルトで決まったように同封せずに、希望する人の荷物にだけ入れるようにすればいいのに。

私はいつも通りカッターを取り出しMUJIの段ボールを開ける体制に入った。

「あれ・・・これ、カッターいらない!」

段ボールの中心部に入った目盛りをめくって、下に引くと、ぺりぺりと簡単に段ボールを開けることができる。

感動!!!!!!!!!! 

カッターぐらい簡単に使える。だけど極力使いたくない。危ないし。

そしてこの段ボールすぐに畳める。なんだこれ・・・

極め付けは納品書。なんと住所が書いてある宛名シールを剥がすと出てくる仕組みになっていた (!)

箱の中に入っているものは私が頼んだシーツ、掛け布団カバー、枕カバーのみ。

ゼロウエイストまでいかずとも、極力「ゴミを減らす」という企業努力をされているのは消費者の私から見てもわかる。

電車ではSDGsバッチを胸元でつけているビジネスマンをよく見かけるようになった。一世を風靡したファストファッションブランドはどこかに消えてしまった。どの業種でも、どこかでSustainableの文字を社で掲げていないと今後の生き残りにかかってくる時代になったんだろうな、というのはヒシヒシと感じる。

これだけの速さでエコフレンドリー・且つ消費者の手間を省くアクションができている無印良品。 私がこのブランドの虜になったのは言うまでもない。

極力ごみを減らす、客室のものを減らす、といった「減らす」ことが顧客の心身の心地よさの創出  =「おもてなし」につながることだってある。


「おもてなし幻想」

おすすめしたい本が2冊ある。

「おもてなしビジネス」をこれまで続けてきた日本にとって、この言葉は皮肉に取れるかもしれない。「幻想」という言葉を使って私たちの常識をぶち壊そうとしているのだ。

私は英語から日本語に翻訳された本が本当に苦手である。この本は著者が日本語で執筆しているが、目線は外国人なのだ。こんなにありがたいことはない。この本を読まない理由はなかった。

おもてなしを売りにしている日本のホスピタリティー産業は、実は外国人観光客から見るとおもてなしの以前に残念な点がたくさんあるということをこの本を読んで思い知った。これらは外国人を受けれ入れる日本のサービスパーソンとして、常に疑いを持ちたいところである。


今、おもてなしは「プラス」ではなく「マイナス」へ

私が考えるおもてなしは、豪華なウェルカムサービスでもなく、質問攻めによる表面だけの気遣いでもなく、ホテルオリジナルグッズのギブアウェイでもない。

やらなくちゃいけないことをいつの間にかやってくれている、億劫だと思っていたことがいつの間にかなくなっている、そんなかゆいところに手が届いた顧客の手間を省くサービスだ。

先述の2冊の本にはこの同じメッセージが込められていた。

顧客のこと、そして顧客の「これからの行動」を先回りして思い、行動する。その瞬間だけの顧客の笑顔だけではない「おもてなし」の効力。

ついつい 「あれもこれもやってあげたい!」と思ってしまうのだが、このように考えるようになってからは、一歩立ち止まり考えてからお客様と向き合うようになった気がする。

我々日本人が思い込んでいた「おもてなし」の定義。このデジタル時代の顧客満足、海外の常識から見て実は笑われていることもしばしば。

いつかインバウンド需要が回復した時に「あれ、日本ちょっと変わった?前より旅行しやすくなったしよくなったね!」と思われたい。

一若造が堂々とおもてなしについて語るんじゃないと一喝されそうだが、私はMUJIのオンラインショップを利用してこれまでずっと考えてきた「マイナスのおもてなし」を初めて受ける側になった。購入の後までの顧客アクションを考えた細やかな視点に感動した一若造&一MUJIファンの私は、このnoteを書かずにはいられなかったのである。

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