見出し画像

風を感じなさい -2-

言葉は風の中で生まれるものだ。


新緑の香り 

人々の笑い声

そこに宿る生命

そのすべてを風は 


異なる場所へ

異なる時代へ

わたしからあなたへ


それはそれは自由に

全てを運んでいくのである


その風にのって あなたの想いは

はるか遠く海を越えて

その先にある町の誰かへと届くかもしれない


その風の便りに誘われて

やがて一人の青年が

海の向こうにあるあなたの街へと

舟を漕ぎ出したくなるかもしれない


その風に背中を押されて

世界のどこかで泣いていた 名前も知らない誰かが

ふっと微笑みを浮かべるかもしれない


それはわたしたちの

目に見えない恋文のやりとり

あるいは

無意識の愛の呼応なのである


例え舞台の上で高らかにうたわれなくても

何百万人の聴衆の耳に届かなくても

あなたが今

他の誰にも見せない日記の上で綴るこの言葉は

そう、確かな風となって 風に乗って

海の向こうにいる誰かの元へと

光となって届くのだろう


だから書き続けなさい

伝え続けなさい

きっと風は、世界中 いや 宇宙の隅々からの

愛を 愛の言葉を

きっとあなたの元へと届けてくれる


その送り主を、あなたは必ずしも知る必要などない

それは見えない愛の詩の交換であり

無意識の愛の呼応であるのだから


あなたが綴り続ける限り

その愛の詩は

さまざまな人から さまざまな形で

あなたの元に届き続けることだろう─

今日もこの涼やかな風に乗って。


風を感じなさい。


Kana






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?