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忘れられたイルカ | 写真・詩


忘れられたイルカ

近所の森林公園で見つけた

「わ!君はあの時の!」

「パソコンの授業では大変お世話になりました。」

友達と声をかけてみたけど

何も反応がない

月日が経つのはあまりにも早くて

彼は自分で自分のことを

忘れてしまっていて

オフィスアシスタントとして

活躍していたあの頃が嘘みたいに

今はこんな自然の中で暮らしている

木漏れ日に包まれて

緑の空気に触れて

見たこともない穏やかな表情で

佇んでるイルカの姿がそこには在って

きっと

パソコンの画面から

なんとか消されまいと戦っていたであろう

あの頃とは比べ物にならないくらい

心休めているのだろうな

みんなの小さい頃の

記憶の片隅にしかいなかった

誰もが

本人でさえ存在を忘れていた

あのイルカはいまここで

自分らしく

息をしている

デジタルの世界から飛び出して

今一番

健やかに、軽やかに

過ごしている



忘れられたイルカ
穏やかに

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