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~スロベニア・イタリアからSAGAへ~ 異国から移住した2人が見つけた、それぞれの居場所。

佐賀のライター講座2023を受講し、初めて記事を書いています。大渡留美です。生まれも育ちも佐賀県。学生時代は他県へ出たものの、故郷が好きで戻ってきました。私自身も縁あって国際結婚ですが、佐賀県でも、少しずつグローバル化が進みつつあり、身近にも外国人や外国人家族がいて、仲良くさせてもらってます。
田舎でなんもないと言われる佐賀県へ、外国人が移住してきて、どんな暮らしをしているのか。笑顔が素敵なお二人に、話を聞いてきました。

(取材・文 大渡)
(写真 ヴェラさん、ヤーデルさん、大渡)


老舗お茶屋さんに嫁ぎ、母国のハーブと嬉野茶をコラボさせた、スロベニア出身【徳永ヴェラさん】

スロベニア出身のヴェラさんが初めて来日したのは、2003年。大阪の大学に留学しました。当時、今の旦那様のお兄さんとペンフレンドだったそうで、それがきっかけで東京に住んでいた弟である和久さんと出会いました。大阪の留学生活は、楽しかったですが、都会の空気は、美味しくないと感じたそう。田舎体験で九州旅行をした折に、和久さんの実家である嬉野を訪れ、「うわぁ~!空気がきれい!呼吸ができる~!」と感動されました。その後、お付き合いが始まり、2008年の結婚を機に、嬉野市へ移住。
現在は、和久さん・娘さん3人・柴犬、そして旦那様の家族と共に、徳永製茶の三代目おかみとして、生活されています。

徳永ヴェラさんと旦那様の和久さん

日本茶の老舗に嫁いだことで、ヴェラさんの人生は、大きく変わります。
日本のことが好きなのに、母国の家族と離れて暮らすことや生活文化に慣れず、ホームシックになり、最初は、よく泣いたそうです。でも、「周りの人たちや家族の温かさにふれ、お茶の仕事が好きになりました。娘達の子育てを一生懸命にしていて、ふと気づいたら住んでいる嬉野のことが大好きになっていました。」

日本茶ソムリエの資格を持つ、ヴェラさんが淹れる緑茶は、最高です

「嬉野の生活で大切にしていることが、あります」と、ヴェラさん。母国のエッセンスを生活に取り入れることです。3人の娘さん達に、スロベニア語で会話したり、国の話をしたり、郷土料理を教えます。「長女は、もう私が手伝わなくても、おいしいパンケーキが作れるんですよ。」と嬉しそうに話してくれました。クリスマスやイースター等の年中行事も、大切にしています。絵本を読んだり、人形の飾りでキリストの話をしたり、スロベニアのケーキも作ります。
「離れていても、日本で生活していても、スロベニアの文化も大切にすることができていますよ。」

ヴェラさんのお気に入り、スロベニアの散歩道。

「コロナ禍で、里帰りができなかったときは、本当に淋しくなりました。自分たちも歳を重ねるように、親世代も高齢になってきました。でも、今は、テレビ電話やSNSがあるから、昔よりは便利ですね。」と、ヴェラさん。
お気に入りの、スロベニアの散歩道の写真をみせてくれました。

ヴェラさんが好きな嬉野の景色。お茶畑。

嬉野は、本当に空気がおいしいそうです。一面に広がる茶畑も、大好きな景色の一つ。都会では味わえない、自然豊かな暮らし。自身の趣味の時間も作れないほど、今は、仕事に子育てに頑張っていらっしゃいますが、この広大なお茶畑の景色に癒されているそうです。

スロベニア産のハーブと嬉野茶のコラボ

ヴェラさんの二つの故郷への想いが詰まった、素敵なお茶が生まれました。スロベニア産のハーブと嬉野茶のゆめのコラボです。カモミール緑茶は、2019年と2022年に日本茶アワードを受賞しています。
リラックス効果のある、カモミールとヴェラさんの笑顔が重なって、飲んでいて優しい気持ちになりました。
日本独特の緑茶という世界に、異なる国からやって来たヴェラさん。確実にそして彼女らしく、居場所を見つけられている気がしました。



身体に優しいを追求し、世代を超えた人とのつながりの大切さを熱く語ってくれた、武雄市のピザ屋さん。イタリア出身【ソルチ ヤーデルさん】

イタリア出身、ソルチ ヤーデルさん。ヤーデルさんが初めて日本に来たのは、2005年。それからホテル勤務などを経て、奥様の恵里子さんと出会い、2008年に結婚されました。ミシェランの一つ星を取った経歴のある、凄腕のイタリア人シェフでもあります。
様々な国で働いたことのあるヤーデルさんは、2021年に、武雄市にテイクアウトのピザ屋さん、Da lader (ダ・ヤーデル)をオープン。3階建てのビルは、2Fに奥様の恵理子さん姉妹のエステサロン。1Fにヤーデルさんのピザ屋さん、と、夫婦仲良く仕事をされています。

笑顔が素敵なご夫婦。ヤーデルさんと恵里子さん

ヤーデルさんのピザは、ローマ発祥の四角いピザ。原材料には特にこだわり、トッピングやソースも手作りと、とても手が込んでいます。
きれいに並んでいる、目にも綺麗な鮮やかなピザは、圧巻。
「ピザもキッシュも全粒粉を使っています。ティラミスのビスケットも手作りです。酵母も凄く時間かかるんですが、頑張っています。身体にいいものばっかりです。」と誇りをもって仕事をされています。
ヤーデルさんがこだわって作る本場イタリアのピザは、絶品です!

イタリア・ローマ発祥の四角いピザ。ボリュームたっぷり!

ヤーデルさんは、家族や人の繋がりについて、熱く話してくれました。
「みんな今、忙しい忙しいといつも言ってますね。武雄だけじゃなく、日本もイタリアもです。みんな、生活を急ぎすぎです。疲れています。心が死んでしまいます。家族でゆっくり話したり、ハグしたりしていますか? おじいちゃん、おばあちゃんを大切にしていますか? 病気になったらすぐ、病院や施設に入れていませんか? 言葉を大切にしていますか? 色々考えると悲しくてたまりません。そんな疲れている人たちに、私が作る身体にいいものを食べてほしい。そして、優しい気持ちになってほしいんです。」と熱い想いが重なっていって、涙を浮かべながら、話してくれました。
祖先や年配者を尊敬し、今ある生活に感謝をし、大切な人に愛情を優しい言葉とハグで伝える。
インタビューしているうちに、私もハッと考えさせられました。

ヤーデルさんの家族。イタリアにて。
ヤーデルさんの故郷。自然がいっぱい。

「武雄は生活しやすいです。自然も豊かです。食材の買い出しへ福岡に行くのですが、交通も便利です。でも私は、わざと高速道路を使わず、ゆっくり行きます。なぜなら景色がきれい。二時間かけて、いろいろなカラー、赤青緑黄色を目で感じながら、ドライブするんです。心が幸せになれますね。」と、ヤーデルさん。なんだか、とても素敵な表現です。奥様の恵里子さん曰く、この表現が、「わぉ!とってもイタリアーノ!」なのだそうです。
ヤーデルさんは、「いろんな国で生活しましたが、今は武雄が心地いいです。商売をする上では、大変なこともありますが、家族と幸せに安心して暮らせるので、気に入っています。」とおっしゃいました。
ヤーデルさんも、心地いい居場所を見つけたみたいですね。

ヤーデルさんが目で楽しんだ、買い出しドライブ

インタビューの終わりに、とても興味深い話をしてくれました。
今は、世界中がコロナや戦争などで『CRISIS』です。このCRISISという意味は、とてもネガティブな印象の言葉です。漢字が好きなヤーデルさん。日本語は『危機』。日本語でも、一見ネガティブですが、よく見てください。あれ?【機】という漢字が入っています。【きっかけ、機会】… 
そうなんです!日本は、今チャンスなんです!!! 
日本人でも気づかなかった、深イイ話を、ありがとうございました。


【まとめ】                        お二人の話を聞いて、すっかり魅せられファンになりました。

今回、自分と同じ国際結婚ということで、すでに親近感をもって取材させていただいたのですが、お二人の話が新鮮で魅力的でした。母国を離れて暮らすのは、とても大変です。淋しい思いもたくさんします。でも、どこに住んでいても、佐賀に住んでいても、生活の中に母国のエッセンスを取り入れ、自分の心地いい居場所を見つけ、幸せへの努力も忘れない。
終始、笑顔がたえなかった素敵なお二人とお話しができて、もっと佐賀が好きになった気がします。住みやすい佐賀県。みなさん、ぜひウェルカムです。多文化バンザーイ! 本当にありがとうございました。


★筆者プロフィール★
大渡 留美(おおわたり るみ)
佐賀県武雄市在住。アメリカ人の主人・息子2人・犬(シェルティ)
家族経営の鉄工所事務、こども英会話講師、教育委員、
国際交流団体たけおワールドフレンズ事務局
趣味は、うつわ集め・料理・ホームパーティ
そろそろ体のメンテナンスと運動が必要な歳ですが、
ポジティブシンキングで、毎日を笑顔で暮らすのがモットーです。

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