一寸の虫にも五分の魂〜恐怖への処方箋〜

夏は虫がこわい。外にいる虫はまだいい。家の中の虫がこわい。自分の家を脅かされるのが嫌だ。どんな虫でも嫌だ。Gはもちろん小baeのようなゴミに群がる奴等も嫌だ。特に梅雨明け。今くらいの季節。冬を越し虫が発生することなどとうに失念した生活が定着した頃に、冬眠を終えた奴等はやってくる。

私はそれを知っている。対策する。彼らの接近の危険性を常に把握し、あらゆる危険は排除する。万全に備えて生活している。つもりだった。夫が出張へ赴き家にひとりになって、ハッとした。夫がいる時、恐怖心は薄れてしまう。半分、いや3分の2は、彼らの存在を忘れて生活してしまっていたのである。

奴等が住み着き卵を置いていきそうなダンボールは、箱のままいくつも玄関の前に積み重なり、キッチンの生ゴミは封もせず何日間も放置されていた。夫不在時は恐怖や不安が募りやがる。処理しようにも、どうにもこわくて手が付けられない。夫が帰ってきてから手をつけようと、心が折れる。勇気が出ない。

夫帰還の頃、奴等の出没率はもっと高くなっているに違いない。何もせずにはいられない。我が家はワンルーム。玄関のすぐ両脇はランドリーとキッチン。密室暗室のそこはまさに奴等にとっての恰好の場。いつ何かが現れるのではないか。そのうちリビングにも何か入ってくるのではないか。冷や汗が落ちる。

気配を感じて腕が痒くなる。黒い汚れを見ると潰したくなる。ゴキジェットを近くに置くと少し落ち着く。時々あたりを警戒しながら夫の留守を泣く泣く過ごす。寂しさよりも恐怖がデカい。なぜ1人になると、こんなにも恐怖心が増しやがるのだろうか。鯖缶を処理せず皿を洗わず旅立った夫を責めたくなる。

それでも我が家は逃げ恥スタイル。少々お小遣いをいただいて主婦している身の私は夫を責めるに値しない。自業自得だ、がっくし。生理を言い訳に何もできなかったと言っても、きっと優しい夫は怒らない。お金を払って家事代行でも呼ぼうか。待て、それでいいのか。良い妻良い母になるんだろ私・・・

こんな時に使える魔法のコトバがある。「いつか母になるのだから。」何度も自分に言い聞かせる。母性よ奮い立て、と。すると「いいや、面倒だから早くやってしまおう!」と意識の転換が訪れてくれる。未来の子どもの姿を想像すると、途端に勇気がみなぎる。どうだ?良い母になれそうだろワタシ。(1mmも妊娠はしていない)

こんな言葉の処方箋を持っておくと、自分で自分を落ち着かせることができて大変便利。ひとりで恐怖にぶち当たりどうしようもなくなったとき、あなたならどんな処方箋を出す?


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