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テレワークハラスメント(テレハラ)、リモートハラスメント(リモハラ)とは

テレワークハラスメント(テレハラ)、またはリモートハラスメント(リモハラ)という新しいハラスメント被害についてネット上でも散見されるようになったが、テレワークやリモートワークにおけるWeb会議などにおけるパワーハラスメント(パワハラ)やセクシャルハラスメント(セクハラ)にあたるハラスメント被害になる。

パワーハラスメント(パワハラ)定義
パワーハラスメント(パワハラ)の定義はパワハラ(パワーハラスメント)防止法に記載されている。このパワハラ(パワーハラスメント)防止法は2020年6月1日に施行(実施)されたが、パワハラ(パワーハラスメント)防止法とは2019年5月に改正された労働施策総合推進法(正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)のこと。

この改正労働施策総合推進法が施行されて2020年6月からパワハラ(パワーハラスメント)防止対策が法制化されるため、「パワハラ(パワーハラスメント)防止法」と呼ばれる。また、パワハラ(パワーハラスメント)防止法に基づきパワハラ(パワーハラスメント)防止指針が策定されたが、パワハラ(パワーハラスメント)防止対策の詳細についてはパワハラ(パワーハラスメント)防止指針に定められている。

パワハラ防止指針(パワハラ指針)は、パワーハラスメントの定義を「職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう」とし、また「なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」とも記載している。

この指針のパワーハラスメント定義の根拠は、パワハラ防止法の第30条の2に規定された「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」という条文になる。

パワハラ定義には「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動」とあるが、テレワークにおける在宅勤務なども「職場」にあたり、「優越的な関係を背景とした言動」は面と向かった言動だけでなくリモートワークによる言動も含まれる。またセクハラについてもパワハラと同様、テレハラにおける在宅勤務等も職場になり、面と向かった性的言動だけではなくリモートワークによる性的言動も含まれることになる。

テレワークハラスメント、リモートハラスメント事例
テレワークハラスメント(テレハラ)、リモートハラスメント(リモハラ)の事例としては、次のような事例がネット上で紹介されている。

1 リアル職場では見受けられないようなセクハラ事例
ツナグ働き方研究所の平賀充記所長が書いた『在宅勤務「上司にイラッとした人」の切実な叫び-テレワーク・ハラスメントが知らずに横行中」(東洋経済電子版、7月16日配信)という記事には、「常にパソコンの前にいるかチェックされていている」「チャット等で定期的に話しかけられる」といった「密視」といったテレハラ・リモハラが紹介されている。

平賀充記氏によると、「ずっとテレビ会議をつなぎっぱなしにさせられて、1秒の隙もなくひたすら監視」とか、「2分に1回、上司にZoomで撮影」といった極端な「密視」の例もあるとのこと。

「テレワークをうまく生かせるコツは、性悪説ではなく性善説に立脚し、業務プロセスより成果を重視することとされています。リモート環境において、そもそも業務の進捗をこと細かく管理するには限界」があると平賀充記氏は指摘している。

また「仕事ぶりが見えづらいことが、テレハラの温床となってしまう一方で、見えすぎることで起きてしまうハラスメント」もあるとテレワークハラスメントの問題を紹介している。

テレワークをしていると必然的にコミュニケーションは、SlackといったチャットツールやZoomといったテレビ会議ツールを使うことになります。これらのツール自体はとても便利なのですが、家にいながらカメラを通して話すわけですから、いろんなモノも映り込みます。これまで知りえなかった相手のプライベートが見えてしまうことで、リモート環境では仕事場と自宅との境界が薄れていくことになります。これがセクハラの温床になってしまうのです。
秋本さん(仮名・30代・女性社員)はPCセッティングや部屋の整備など不慣れなオンライン会議への対応で、テレワークを始めた当初は余裕がなかったのが、次第に上司の発言に疑問を感じるようになったとのこと。
「『在宅で少し太った?』とか『今日、すっぴんなの?』とか、いままで言われたことなかったようなことを指摘され……」と、違和感を口にしました。オフィスでの上司には信頼を寄せていただけに、「これって、やっぱセクハラですよね。ちょっと不快です」と残念そうでもありました。

通常の「リアルな職場」では見受けられないような言動がテレワーク、リモートワークでは起きている。企業などはテレハラ・リモハラをこのまま放置しないでテレワーク・リモトートワークにおけるセクハラ・パワハラなどのハラスメント防止対策を講じる必要がある。

『在宅勤務「上司にイラッとした人」の切実な叫び-テレワーク・ハラスメントが知らずに横行中』(東洋経済電子版)

2 働いている姿が見えないことで起こるパワハラ
NEWSポストセブンが『「テレハラ」対策-サボり前提にした制度を作れば監視も不要』(NEWSポストセブン、2020年6月14日配信)という記事を配信し、そこで太田肇・同志社大学政策学部教授のテレハラ防止策を紹介している。

テレワーク中の社員からは、「いつも見張られている感じがする」とか、「以前より頻繁に報告を求められるようになった」、「常に回線を接続しておかなければならない」といった不満が聞かれる。一方、管理職の側には、「部下が仕事をサボっていないか不安だ」と口にする人が多い。最近はテレワーク中のパソコンの内部を覗いて、どれだけ仕事をしているかをチェックするシステムも普及しているという。そこまでいくと、もはやストーカーのレベルだ。
こうした現象を目の前にして、「テレワークは性善説に立たなければ機能しない」と忠告する人もいるが、果たして性善説に立てば問題は解決されるだろうか?
思うに上記のような管理職の行動は、管理職自身に問題があるのではない。実際、だれかがサボれば、他の人にそのしわ寄せがいく。また性善説のもとで信頼を裏切る部下が現れたら、「正直者が馬鹿を見る」とばかりに、他の部下までサボり出すかもしれない。性善説は、それが裏切られたとき対処不能になる。だからこそ管理職は、部下が頑張っているかどうかをチェックしなければならないのだ。要するに「テレハラ」の根本原因は管理職の意識や姿勢にあるのではなく、組織と仕事の仕組みにあるといえる。そもそも従来の組織と仕事の仕組みは、テレワークに適していないのである。

そこで太田教授が推薦する仕組みとは「社員がサボってもよい仕組み」をつくることらしい。つまり、「サボってもよい仕組みとは、仕事へのインプット、すなわち仕事ぶりを問わないかわりに、アウトプット、すなわち仕事の成果を厳しく問う制度」とのこと。

また、「成果をあげているか、役割を果たしているかどうかで評価するためには、一人ひとり仕事の分担が明確になっていることが重要なポイントになる」と太田教授は指摘する。すなわち、「川下の原則」を徹底することらしい。

私は、その人に求められている仕事の成果や果たすべき役割に近いところを「川下」、そこから離れた仕事に対する態度や姿勢などを「川上」と呼んでいる。「川下」で評価すれば「川上」は本人の裁量に委ねられるので、サボっているかどうかを監視する必要はない。
ところが多くの日本企業は、かつての成果主義に対する反省もあって「川上」で評価する傾向があり、社員の側も成果だけでなく努力も見てくれると歓迎する声が多かった。それが今、“努力や頑張りの監視”という形で裏目に出ているのである。
努力や頑張りそのものに価値があるわけではない。仕事で成果をあげ、役割を果たすことこそ大切だという原点に返ることが、「テレハラ」の防止につながるはずだ。

よく理解できなかった面もあるが、テレハラ原因が上司の性格や資質によるものではなく、テレハラに適した評価制度でないためテレハラが発生しているので、評価制度をテレハラに適した仕組みに変革する必要があるということだろう。

『「テレハラ」対策-サボり前提にした制度を作れば監視も不要』(Yahooニュース)