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新しい時代の働き方に関する研究会(厚生労働省の新たな有識者会議)

第1回 新しい時代の働き方に関する研究会

本日(2023年3月17日)、厚生労働省公式サイトに新たな有識者会議「新しい時代の働き方に関する研究会」(労働基準局が実施する検討会等)のページが新設され、第1回研究会の開催案内が公表された。

第1回「新しい時代の働き方に関する研究会」は2023年3月20日に開催され、議案は「新しい時代の働き方について」。

なお、開催案内には「資料につきましては、開催までに当省ホームページに掲載します」記載されているが、現時点(3月17日)では厚生労働省ホームページに掲載されてはいない。

新しい時代の働き方に関する研究会 目的

「新しい時代の働き方に関する研究会」開催要綱によると、新たな研究会の目的は「働き方や職業キャリアに関するニーズ等を把握しつつ、新しい時代を見据えた労働基準関係法制度の課題を整理すること」とされている。そして検討事項は、次のとおり。

新しい時代の働き方に関する研究会 開催要綱
1.趣旨・目的

新型〇〇〇ウイルス感染症等の影響により生活・行動様式が変容し、働く方の働き方に対する意識、職業キャリアに関するニーズが個別・多様化している。
これに加え、人口構造の変化等の経済社会の潮流、技術革新による産業構造の転換、新たな働き方の拡大等を踏まえ、これからの新しい時代の働き方を構想し、働く方の働きがいを促進していくため、組織と個人の働く関係を捉え直す時機が到来している。
このため、働き方や職業キャリアに関するニーズ等を把握しつつ、新しい時代を見据えた労働基準関係法制度の課題を整理することを目的として、「新しい時代の働き方に関する研究会」(以下「本研究会」という。)を開催する。

2.検討事項
本研究会においては、次の事項等について調査・検討を行う。
① 働く方の働き方や職業キャリアに関するニーズの変容について
② 企業の意識、人材の管理・活用等の変容について
③ 働く方の健康確保と働きがいの促進について
④ デジタル技術を活用した働く方の保護について
⑤ ①から④までを踏まえた、法制度の基本的在り方について

新しい時代の働き方に関する研究会 開催要綱(厚生労働省)

新しい時代の働き方に関する研究会 名簿

「新しい時代の働き方に関する研究会」の参集者には、安部和志・ソニーグループ株式会社執行役専務(人事・総務担当)、今野浩一郎・学習院大学名誉教授・学習院さくらアカデミー長、戎野淑子・立正大学経済学部教授、大湾秀雄・早稲田大学政治経済学術院教授、小林由佳・法政大学現代福祉学部臨床心理学科准教授、武田雅子・株式会社メンバーズ専務執行役員CHRO、伊達洋駆・株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役、中村天江・公益財団法人連合総合生活開発研究所主幹研究員、水町勇一郎・東京大学社会科学研究所比較現代法部門教授、以上9名の有識者が選ばれいる。

9名の有識者のうち、使用者側(企業の代表取締役や執行役員)が3名、労働者側(連合の研究員)が1名、公益側(大学教授などの学者)が5名。

学者5名のうち、今野浩一郎・学習院大学名誉教授は経済学者、戎野淑子・立正大学経済学部教授は労働経済学者、大湾秀雄・早稲田大学政治経済学術院教授も労働経済学者、小林由佳・法政大学現代福祉学部臨床心理学科准教授は心理学者、水町勇一郎・東京大学社会科学研究所比較現代法部門教授が労働法学者。

つまり「新しい時代の働き方に関する研究会」メンバーの中で労働法学者は水町勇一郎教授のみとなるようだ。

新しい時代の働き方に関する研究会 参集者名簿
安部和志 ソニーグループ株式会社執行役専務(人事・総務担当)
今野浩一郎 学習院大学名誉教授・学習院さくらアカデミー長
戎野淑子 立正大学経済学部教授
大湾秀雄 早稲田大学政治経済学術院教授
小林由佳 法政大学現代福祉学部臨床心理学科准教授
武田雅子 株式会社メンバーズ専務執行役員CHRO
伊達洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役
中村天江 公益財団法人連合総合生活開発研究所主幹研究員
水町勇一郎 東京大学社会科学研究所比較現代法部門教授

新しい時代の働き方に関する研究会 開催要綱(厚生労働省)

「新しい時代の働き方に関する研究会」開催要綱(PDF)

新しい時代の働き方に関する研究会 私感

(1)開催案内が公開された日の午後5時が傍聴締切
第1回「新しい時代の働き方に関する研究会」は2023年3月20日の月曜日の開催だが、厚生労働省(労働基準局 労働条件政策課)は3月17日に厚生労働省公式サイトに開催案内を公開した。土曜日・日曜日は休みだから本当に直前になってからの開催案内になった。

さらに問題は、開催案内に記載されている傍聴者募集要項によると、傍聴申込締切は新設の有識者会議の開催案内が公開されたばかり3月17日午後5時(メール必着)となっている。

厚生労働省が新設した有識者会議、しかも今後の労働基準法など労働法規の見直しや改正につながる重要な有識者会議の開催にもかかわらず、開催案内の公開が遅すぎるし、逆に傍聴申込締切は早すぎるだろう。

第1回「新しい時代の働き方に関する研究会」開催案内
傍聴者募集要領

(1) 傍聴を希望される方は、電子メールにて、氏名(ふりがな)・勤務先又は所属団体・電話番号を明記してお申し込みください。また、会議冒頭については、写真撮影・ビデオ撮影・録音が可能です。希望される方は、「頭撮り希望」とお書き添えください。
〔申込先〕
厚生労働省 労働基準局 労働条件政策課(担当:佐藤 上野畑)
メールアドレス:roudoujouken01@mhlw.go.jp
※電話・FAXでのお申し込みは御遠慮ください。
(2) 申込締切
令和5年3月17日(金)17時00分(必着)
希望者が多数の場合には、抽選を行います。このため、傍聴できない場合がありますのでご了承ください。抽選の結果、傍聴できない方には、事前に当省から電子メール(申し込みいただいた時のメールアドレスに送付)もしくは電話により御連絡いたします。なお、傍聴可能な方については特段の連絡等は行いません。
※当日は、「傍聴申込用紙(電子メールによるお申し込みの場合には、送信メールをプリントアウトしたもの)」及び「顔写真付き身分証明書(免許証、マイナンバーカード、社員証、パスポート等)」をご持参いただき、入館の際に提示してください。
※車椅子で傍聴を希望される方は、その旨お書き添えください。また、介助の方がいらっしゃる場合は、その方のお名前も併せてお書き添えください。
※複数名お申し込みの場合も、お一人ずつの記載事項をお書きください。

第1回「新しい時代の働き方に関する研究会」開催案内(厚生労働省)

(2)労働法を見直す有識者会議にもかかわらず労働法学者が一人だけ
「新しい時代の働き方に関する研究会」は新設の有識者会議でもあり、その開催要綱によると、厚生労働省が新設した有識者会議の目的は「新しい時代を見据えた労働基準関係法制度の課題を整理すること」、また検討事項は「働く方の働き方や職業キャリアに関するニーズの変容」「 企業の意識、人材の管理・活用等の変容」「働く方の健康確保と働きがいの促進」「デジタル技術を活用した働く方の保護」を踏まえた労働基準関係法制度の基本的在り方になっている。

そのような労働基準法など労働法の広範囲にわたる大きな見直しにつながる有識者会議にもかかわらず、労働法学者が水町勇一郎教授一人だけがメンバーとは疑問(水町勇一郎教授は現在、内閣総理大臣諮問機関・規制改革推進会議の人への投資ワーキンググループのメンバーでもある)。

また、学者5名のうち、今野浩一郎名誉教授は経済学者、戎野淑子教授は労働経済学者、大湾秀雄教授も労働経済学者、小林由佳教授は心理学者、水町勇一郎教授だけが労働法学者、といった構成だが、もうお一人ぐらい労働法学者か労働法に詳しい弁護士を加えてもよかったと思う。

また、労働法見直しにつながる有識者会議にもかかわらず、使用者側(企業の代表取締役や執行役員)が3名、労働者側(連合の研究員)が1名というメンバー構成も疑問に思う。労働者側として一人、または二人は加えるべきだろう。

追記:第1回 新しい時代の働き方に関する研究会 資料と報道

本日(2023年3月20日)、第1回「新しい時代の働き方に関する研究会」資料が公開された。

議事次第(PDF)

資料1 新しい時代の働き方に関する研究会 開催要綱(PDF)

資料2 研究会の公開の取扱いについて(案)(PDF)

資料3 経済社会と働き方の変化等について(PDF)

資料4 今後の進め方について(案)(PDF)

(1)新しい働き方の拡大
これら第1回「新しい時代の働き方に関する研究会」資料の中で資料3「経済社会と働き方の変化等について」は最も準備された資料になり、個人的には資料3の36頁~44頁に記載されている「新しい働き方の拡大」に関心をもった。

「新しい働き方の拡大」に記載されている内容は、テレワーク導入状況、テレワーク実施率の推移(地域別)、テレワークの実施率推移(業種別)、緊急事態宣言発出前後の労働者代表の有無とテレワークに関する状況、雇用形態別副業の有無、勤務先の副業制度、年収別副業の有無、副業動機(従業員側調査)。

(2)シンクタンクと企業からのヒアリング
第1回「新しい時代の働き方に関する研究会」の資料4「今後の進め方について」(案)には、次のように記載されている。

今後の進め方について(案)
○ヒアリング
・シンクタンク
・企業
○構成員からのプレゼンテーション
○個別の論点について
○議論のとりまとめ

第1回「新しい時代の働き方に関する研究会」資料4(厚生労働省)

事務局(厚生労働省)が準備した案どおりになるとすれば、ヒアリングはシンクタンクと企業からしか行われないようだが、関係団体、労働組合、労働法に詳しい弁護士、労務問題に詳しい社会保険労務士などからもヒアリングを実施してもらえないだろうか、とも思う。

なお、日テレNEWSは「多様化する働き方にどう対応? "新時代の働き方研究会”初会合」と題した記事の中で「初回(第1回「新しい時代の働き方に関する研究会」)の20日は参加した有識者から『就業年数が長くなっていることから一社で一生働くという価値観は変わってきている』といった意見などがあがり、働き方に変化が出ていることに着目し、個人のキャリア形成の多様化にあわせて企業の人事制度を変える必要があるといった声が多く上がりました。今後、企業などからヒアリングを行いとりまとめを行うとしています」と報じている。

(3)働き方改革関連法の見直し(2024年)に向けて
また、NHK NEWS WEB(「コロナ禍でテレワーク普及 新時代の労働政策など議論 初会合」2023年3月20日配信)によると、厚生労働省は「新しい時代の働き方に関する研究会」の議論を踏まえ、「新たな時代にふさわしい労働政策や制度の在り方」について検討を進めるとともに来年(2024年)予定されている働き方改革関連法(労働基準法などの労働法規)見直しにも反映させたいという考えをもっているらしい。だから、労働法学者が一人だけという研究会構成に危惧がある。

なお、参集者の一人から「労働法制が分かりにくくなっているとして、新たな働き方に対応した法律を考える際には、法の趣旨や目的が明確で実効性の高いものに整理するよう求める提言も出されました」と、NHK NEWS WEBは報じている。

コロナ禍をきっかけに働き方や働く意識が大きく変わる中、厚生労働省は新たな時代にふさわしい労働政策や制度の在り方について検討するため、有識者による議論を始めました。

コロナ禍でテレワークの普及が進んだことをきっかけに、働く場所や時間が多様化し、仕事に対する価値観や意識も大きく変わってきていると指摘されています。

こうした中、厚生労働省は労働問題の研究者や法律の専門家など9人で作る研究会を発足させ、20日、初会合を開きました。

会合では、委員から「テレワークや育休を取り入れた自分らしいキャリアに関心が高まっているが、うまくいく場合ばかりではなく何かを諦めて折り合いをつけるか、転職や起業をするかの選択につながっている」として、キャリアパスの支援を検討すべきだという意見が出されました。

また、「世界中から働き手を確保しようという動きが出ていて、多様な人材を活用する際の公正な労使関係を規定するルール作りが課題だ」といった指摘もありました。

さらに、労働法制が分かりにくくなっているとして、新たな働き方に対応した法律を考える際には、法の趣旨や目的が明確で実効性の高いものに整理するよう求める提言も出されました。

厚生労働省は研究会の議論を踏まえ、新たな時代にふさわしい労働政策や制度の在り方について検討を進めるとともに来年、予定されている働き方改革関連法の見直しにも反映させたい考えです。

コロナ禍でテレワーク普及 新時代の労働政策など議論 初会合(NHK NEWS WEBS)

追記:第2回 新しい時代の働き方に関する研究会

(1)第2回研究会開催案内
第2回「新しい時代の働き方に関する研究会」は2023年3月29日に開催される。議案は「有識者からのヒアリング」。

(2)第2回研究会資料
2023年3月29日に第2回「新しい時代の働き方に関する研究会」資料が公開された。

議事次第(PDF)

資料1  経済社会構造の変化と新しい時代の働き方(外部有識者 山田氏提出資料)(PDF)

資料2 近年の日本労働市場の動向について(外部有識者 小林氏提出資料)(PDF)

(3)経済社会構造の変化と新しい時代の働き方
資料1の外部有識者は山田久氏は株式会社 日本総合研究所調査部副理事長。

山田久氏は資料1「経済社会構造の変化と新しい時代の働き方」の「労働政策の課題」において次のような具体策を述べている(資料1の20頁)。

その山田氏の提言の中でも「集団的労使関係による対等性確保」「(フリーランスの)団結権」「集団的労使関係の再構築」「拡張適用の容易化(組合非加盟労働者の保護)」「適切なデロゲーションを担保する従業員代表制の導入」「産別組合の機能強化」といった個別的ではなく集団的労使関係に係るワードに注目した。

今後、現場力・品質力を維持・強化しつつ革新力を高めるため、内部労働市場の利点を維持しつつトータルな外部労 働市場の機能強化が必要で、そのための主な具体策は以下の通り。
1)労働法制
労働者の職務選択意思の尊重 労働契約解除の適正プロセスの確保(労働者意思の尊重、再就職支援サービス、 集団的労使関係による対等性確保)、キャリアブレイク制度 フリーランスに対する労働保護(団結権、労働時間規制、 最低賃金、労働保険)、教育訓練に関わる労働時間規制の柔軟化 2)能力開発支援
産学官連携による企業横断的・社会横断的な仕組みの整備
3)外部労働市場整備
日本版O-NET(ジョブタグ)の普及・改善による外部労働市場の標準化(共通言語の確立)
職業紹介事業のガイドライン(労働者サイドに立ったキャリアコンサルティング機能の強化)
4)集団的労使関係の再構築
拡張適用の容易化(組合非加盟労働者の保護)、適切なデロゲーションを担保する従業員代表制の導入、 産別組合の機能強化

第2回 新しい時代の働き方に関する研究会 資料1(厚生労働省サイト)

(4)近年の日本労働市場の動向について
資料2の外部有識者・小林祐児氏はパーソル総合研究所シンクタンク本部上席主任研究員。

小林祐児氏は資料2「近年の日本労働市場の動向について ―主に就業者意識と人事管理の面から―」の最後のページで「今後の人的資源管理に求めたいこと」として「個人の『多様化』(人材のダイバーシティ)を『孤立化』(支えの無い個)に直結させない人事管理」を提言。

例として「リスキリングにおける『学びの共同体化』」「テレワークにおけるコミュニケーション円滑化のためのITC投資・組織開発支援」 「社内キャリアにおける『集合的なキャリア支援』(≒個別支援)」「越境学習支援」をあげ、そして「労働政策においても、上記のような企業の動向を後押し・支援するような方向性が望まれる」と結んでいる。

追記:第3回 新しい時代の働き方に関する研究会

(1)第3回研究会開催案内
第3回「新しい時代の働き方に関する研究会」が2023年4月7日に開催される。議題は「構成員からのプレゼンテーション」。

(2)第3回研究会資料
第3回「新しい時代の働き方に関する研究会」の資料が開催日の2023年4月27日に公開された。

議事次第(PDF)

資料1 人的資本投資を増やすために必要なこと(大湾構成員提出資料)(PDF)

資料2 テレワークとエンゲージメントをもとに新しい働き方を構想・展望する視点を得る:分化と統合の枠組みを切り口に(伊達構成員提出資料)(PDF)

追記:第4回 新しい時代の働き方に関する研究会

第4回研究会開催案内
第4回「新しい時代の働き方に関する研究会」が2023年4月21日に非公開で開催される。議題は「企業からのヒアリング」。

追記:第5回 新しい時代の働き方に関する研究会

第5回研究会開催案内
第5回「新しい時代の働き方に関する研究会」が2023年4月27日に開催される。議題は「構成員からのプレゼンテーション」「有識者からのヒアリング」。

また、公開された資料(議事次第)によると、構成員からのプレゼンテーションは小林由佳構成員が担当し、有識者からのヒアリングは産業医科大学産業生態科学研究所人間工学研究室の榎原毅教授。

議事次第(PDF)

資料 働く人のウェルビーイングと健康確保に向けて(小林構成員提出資料)(PDF)

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*ここまで読んでいただき感謝!