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ウーバーイーツとIT技術者「労災特別加入」省令案

労働政策審議会・労働条件分科会・労災保険部会

昨日(2021年6月18日)、厚生労働省「労働政策審議会・労働条件分科会・労災保険部会」がAP虎ノ門会議室で開催された。議題は次のとおり。

議題
(1)第97回労災保険部会 特別加入制度に係る主なご意見
(2)労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令案の要綱等について(諮問)
(3)その他

また、配布資料は次のとおり。

配布資料
資料1 第97回労災保険部会 特別加入制度に係る主なご意見
資料2 特別加入制度の対象範囲の拡大に関する検討事項
資料3 労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令案の要綱等(諮問)
資料4 毎月勤労統計の影響による労災保険の追加給付の実施状況について
資料5 特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律 概要

第98回 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料(厚生労働省)

昨日(6月18日)の労災保険部会に関する報道

時事ドットコムニュースは「労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)は18日の部会で、料理を宅配する「ウーバーイーツ」などの自転車配達員とフリーのITエンジニアについて、労災保険が利用できる特別加入制度の対象とすることを了承した」(6月18日配信)と報じた。ただし、この記事の「労災保険が利用できる特別加入制度」という表現は不正確。

また東京新聞Web版は「厚生労働省の労働政策審議会部会は18日、個人事業主として働く、宅配代行業『ウーバーイーツ』などの自転車配達員と、ITエンジニアを新たに労災保険の特別加入制度の対象とする省令案を了承した。9月1日から運用を始める。雇用関係のない個人事業主は通常の労災保険に加入できない。だが特別加入の対象になれば、保険料を自己負担することで業務中のけがなどに対する補償を受けられる」(6月18日配信)と報じた。

政府は、個人事業主保護の一環で特別加入の対象拡大を進めてきた。

業界団体によると、自転車配達員は約9万人、ITエンジニアは17万~25万人程度いる。配達員は交通事故のリスクが高く、ITエンジニアは長時間のデスクワークで腰痛などが多いという報告がある。

ただ特別加入の利用が増えるかは見通せない。特に自転車配達員が自己負担する保険料は、年間約1万5000~10万9000円と、ITエンジニアの4倍だ。

部会では、労働者代表の委員が「掛け金がネックになり加入者が少なくなっては意味がない」と指摘。仕事を請け負う際の契約金額に保険料を上乗せするなど、配達員が負担をしなくてもよい仕組みの導入を訴えた。(岸本拓也)(東京新聞Web版、2021年6月18日配信)

hamachan(濱口桂一郎氏)ブログの指摘

hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)に昨日(6月18日)「労災保険特別加入の追加案」という記事が投稿された。

まず省令案に記載されたウーバーイーツなど配達員に関する「労災保険特別加入の追加案」は次のとおり。

一 特別加入の対象となる事業として、自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業に加えて、原動機付自転車又は自転車を使用して行う貨物の運送の事業を新たに規定すること。

hamachan(濱口桂一郎氏)は「これは別にウーバーイーツなどのフードデリバリーだけでなく、ソクハイなどのバイシクル便も含まれますね」と。さらに「逆に、ウーバーのようなプラットフォーム型の就労形態であるかどうかは法文上は出てきません」。

確かにウーバーイーツなどの「プラットフォーム型の就労形態であるかどうか」については省令案には記載されていない。

次に省令案に記載されたIT技術者「労災保険特別加入の追加案」は次のとおり。

二 特別加入の対象となる特定作業として、情報処理システム(ネットワークシステム、データベースシステム及びエンベデッドシステムを含む。)の設計、開発(プロジェクト管理を含む。)、管理、監査若しくはセキュリティ管理その他情報処理システムに係る業務の一体的な企画又はソフトウェア若しくはウェブページの設計、開発(プロジェクト管理を含む。)、管理、監査、セキュリティ管理若しくはデザインその他ソフトウェア若しくはウェブページに係る業務の一体的な企画その他の情報処理に係る作業であって、厚生労働省労働基準局長が定めるものを新たに規定すること。

hamachan(濱口桂一郎氏)は「もう一つのIT技術者の方はえらく複雑怪奇な規定ぶりです」と。なるほど「複雑怪奇」。