【短編】 山吹茶屋
山道の脇に彩りを添える山吹の花。
その気品高き花姿に侍は嘆息する。
何だか旅の疲れがすっと軽くなる。
侍が山吹の花にそっと触れようとしたその時、遠雷が轟き数秒後に雨が降りだした。
これはいけないとばかりに侍は、両袖を簑代わりにして駆け出す。
すると見慣れぬ茶屋が顔を出した。
これは運がいいとばかりに、袖をはらいながら侍が腰かける。
「いらっしゃいませ」
可愛らしい声で娘が挨拶をする。
「すまぬが、わしは客では」
「大丈夫です。どうぞ雨宿りしていってくださいませ」
「あい、すま