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語彙に頼らない言葉の引き出し方【エッセイ】

こうやってエッセイを書いていると、学生時代と比べて使っている単語の種類=語彙が増えたなぁと思います。
あくまでも以前の自分と比べて増えた、というレベルですけど。
若い頃は今よりもっと決まり切った言葉しか使っていなかった気がします。決して語彙の少ない文章が悪いわけではないと思います。むしろ同じ面白さだったら使っている単語がシンプルなほうが優れた表現だと感じます。

でも毎日ふらふらとエッセイを書いている分には、語彙が多い方が自分の言いたいこと、痒いところに手が届きやすくて便利です。うまく言葉を当てはめられた時の気持ちよさもあります。難解な単語だけではなくて、平易な単語の手持ちが増えると小回りが利いて快適です。

じゃあ今の自分が書いた文章の中に、学生時代の自分が知らなかった単語がそんなに沢山あるのでしょうか? いえ、そんなことはありません。
学生時代の自分も目にしたことのある単語ばかりだと思います。

これはつまり、自分の中にある単語のストックが増えたというより、文章を書くときに単語をリストアップする能力が上がったということではないでしょうか?
ちょっと面白がった言い方をすると、脳内Googleの検索能力が向上したのです。
理由は大きくふたつあると思います。

ひとつは、シンプルにアウトプットが積み重なっていること。
文章を書こうとして、何度も何度もサーチを繰り返した結果、アルゴリズムが洗練されてきた。そういう脳のファンクションの問題。

もうひとつは、検索ボックスに投入するデータの〈切り口〉がはっきりしてきたこと。
例えばInstagramのフィードに、とても綺麗な湖の写真が流れてくる。どこだろう? 見た限りアルプスにある湖のようだけど、具体的な情報が書かれていない。じゃあGoogleで調べようと「アルプス 湖 名所」とか「アルプス 湖 観光」とか「Alps lake beautiful」と打ち込んでみる。でもうまくお目当ての情報に辿りつけない。
そんな時は、ボックスに入れる語句の〈切り口〉を変えてみますよね。「スイス 人気スポット 2022 湖」とか「インスタ映え 湖 ヨーロッパ」とか、あるいはスクリーンショットを撮って、画像データで検索してしまうとか。

どういう〈切り口〉で検索をかけていくのか。その〈切り口〉によって、脳内Googleにリストアップされる単語が変わってきます。増減するだけではなく、セレクトされる言葉の毛色も異なってくる。
若いうちは通り一遍、右へならえの検索の仕方しか知らなかったけど、経験をかさねると自分なりのデータの突っ込み方が確立されてくる。人によっては複数方向からの〈切り口〉を持っている。

このデータを投入する〈切り口〉は、いわゆる〈文体〉と言われているものに結実していくと思います。
どういう態度とやり方で、言葉を探していくのか。
(クリエイティブ界隈でいうところのトーン&マナーですね)

インプット&アウトプットの量も大事ですが、〈文体〉つまり語り方をはっきりと定めると、効率よく言葉が引き出せると思います。
効率よく言葉が引き出せると、どことなく文章に軽みが出ます。
変な言い方ですが、重い内容でも、うまく言葉が引き出されている文章には軽みが感じられます。フットワークのよさとでも言うんでしょうか。
書き手も書きやすく、読み手も読みやすくなって一石二鳥です。

「よしエッセイを書こう」と思い立った当初は、穂村弘さんや乙一さんのエッセイの文体を真似て書いていたのですが(好きなので)、お二人だとどうしても独身男性の感覚が強くて上手くフィットしなくて途中から変更してみました。(あくまでもマッチングの問題です)
そのうちまた文体を変えて、出てくる言葉の違いを試してみたいと思っています。
また当初の文体を使いはじめたとしたら、その時は私が独身に戻ったのだという可能性もありますけど。


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