【小説】恋の幻想
3人でハンバーガーをパクついて、大口を開けるのは恥ずかしいって言う女の子が、居るってのを聞いたのを思い出した。
食べるのに恥ずかしさなんて感じるのは、特殊な感覚なのかも知れないが、聞くところによると、大きな口を開くには抵抗が有るらしい。
食べるのは生きるのに直結しているから、生に対する執着みたいなのを感じているのかな、ふとそう思った。
男の方が欲求に正直で、女の方が自分の欲は、示したがらないのかも知れない。
それとも、欲に支配されてるみたいに感じるのかな、人間は欲に関わるのは恥ずかしいと感じる生き物だ。
生きているんだから、それは考えなくても良いんだろうが、欲は見ていて格好悪い、見栄えを気にすると良くないのか。
女性の特性で大口を見られるのに抵抗が有るのかも知れない、そんな人間ばかりじゃ無いだろうけどな。
忍も裕子もかなりの大きな口を開けて、ハンバーガーを食べている、俺には恥ずかしさを感じ無いのかな。
彼女らの口に運ばれるハンバーガーを、自分も食べながら眺める、家族は恥ずかしさを感じないよなと思いながら。
「どうしたの?なんか付いてる?」忍が視線を感じたのか聞いて来る、何見ていたか言いにくいな。
「美味しそうに食べてるなって思ってさ。」口元を見ていたけど、正直には言わなかった。
「何かついているんじゃ無いの?付いていたら言ってよ。」忍の言葉が敬語から普段の言葉に為っているのが嬉しくなって、にやついてしまっている自分を感じた。
「何ニヤニヤしてるの、いやらしいんだけど。」裕子にはいつも痛い所を突かれる。
「食べ方がダイナミックでそこが好きだと思ったんだよ。」忍のそんな飾らない所に魅力を感じている。
「忍ちゃんの食べる所に、にやつくなんて変態だよネ。」裕子が忍を見ながら言っている。
「変態って訳じゃ無いだろ、好きな子の食べる所は、見ていたいのが普通だよ。」変態に一寸反応する。
性的な事を言われるのは嫌だ、忍が性に嫌な感情を持つ限り、ずっと待ちたいと思っているから尚更だ。
「私は気にしません、自分の見えてた世界だけが現実じゃ無いと思ってるし、知っている男だけが男じゃ無いって分かったから。」そう言って、俺の方を向いて微笑んでいる。
「良かったね、良平みたいな変態でも良いんだってさ。」裕子が茶化してくる。
「良平さんは変態じゃないですよ、私の知ってるどんな男よりも紳士です。」真剣な顔で忍が答える。
その表情を見て、裕子が目を回した。
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