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【小説】恋の幻想

「何処で待ち合わせする?」そんな時間や場所じゃ無くて、家から出るのには覚悟も情報も要る。

どうやって家を借りたり、仕事を探したりしたらいいんだろう、彼とは違って私は真剣だ。

「住む所や仕事が居るよね、お金もある程度ないとね。」彼と一緒に居る積もりは無くても、それ位は言って於いた方が良いだろう。

「お金ってアルバイトのお金貯めてたんじゃ無いの?」自分の生活力は考えて無さそうだ。

「貯めてはいたけど、まだ少ないよ、今すぐ住む所を決めるなら、お金はもう少しいると思う。」こんな普通の感覚も無いのかな?そう考えながら答える。

「フーン、でもさ大丈夫、大丈夫、最終的には親が出してくれるからね、難しい事は考えなくて良いよ。」と言っている、最悪の状況を考えたりしないんだな、幸せな生活を送ってきたんだ。

私は家を出るのは一緒でも、一緒に暮らすのは考えていなかった、この人と居たら、気楽に生活するだけで、次の人生なんて考えない。

家に居るのと同じになってしまうのが目に見える、駄目な男は利用はしても、一緒に生活するには向いていない。

何度も何度も、この人を使って家から離れて、仕事を探そうと考えていた、信頼するには足りないからね。

「私は親が出してくれるわけじゃ無いから、仕事を探すつもりだけど、あなたは大学?」聞かなくても良い言葉を発してしまう。

何も考えないで付いて行けたらどんなに良いだろう、子供の頃からの習い性で、先ずは心配をしてしまう。

「大学に受かったら大学、試験で落ちたら、違うこと考える。」あっけらかんとしている。

話していて切りが無いので、ある日一緒に家を出て、何処かに行こうと約束して見た。

「駅だな、最終で東京に行くつもりだから、絶対に来いよな。」そう言って彼は約束を取り付けた。


雨の降っている日だった。

雨で肌寒く、コートの中に冷気が忍び込んでくる、来ないかも知れない、来てもきっと電車には乗らないだろう。

期待して居た訳では無いのに、約束の時間に来ないと寂しくなる、駅は暗くなって、人が居るのを拒否しているみたいだ。

雲が自分の未来を閉ざしている、出ていけないのが情けなく感じている。

「傘貸そうか、これ以上濡れたくないでしょ。」男性が話しかけてくれる。

「ありがとうございます、傘は良いです。」夜は怖い、着いてはいけない。

「ここに居ると夜になると変な奴が来るよ、早く帰った方が良い。」もう一度言ってくれる。

「家に帰りたくなくて。」空を見ながら声を出した。

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