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【小説】恋の幻想

恋人と言っていい状態になって何年も経って、普通なら結婚を意識する時間が経っていた。

出会いからして、普通とか一般的とかとはかけ離れているし、結婚って言っても、書類だけのものだし。

そう思っているある日、良平が言い出した。

「結婚しようか、今のままだと何かあった時に連絡が来ない、お互い何かあった時に最初に連絡が来る関係に為りたくないか?」

考えた事は無かった、だって親も捨てて知り合いって仕事に関係する人と良平と裕子さんだけだと思っていた。

「そうか、結婚すれば誰より先に連絡が来るのか。」ポツリと呟いた、初めて教えてもらった英語を使うような感じで。

「そうだよ、それだけでも結婚に価値が有るんだよ、考えて置いて、直ぐって訳じゃ無いけど、裕子よりも強いつながりが欲しいんだよね。」そう言う良平さんの手に指輪が握られていた。

知らない間に握っていたんだろう、指輪を持つ手が白くなっている、その手を緩めて上げる。

「そんなにぎゅっと持ったら、貰えないじゃない。」きっと考えられない位、に妬けた顔をしてるんだろうな。

「裕子の時にはプロポーズなんて無かったから、緊張したんだよ。」こちらもに妬けた顔の良平。

「でも大丈夫?裕子さんに又覚悟が有るのかって言われるよ、それに私の親は居ないと思っているけど、良平さんの親御さんに連絡しなくちゃ。」一気にそう話す。

「俺の親は居ないよ、居ても関係ないから、連絡はしない。」自分と一緒で親とは連絡しないんだな、そう思うとそれ以上は何も言えなかった。

「友達と仕事関係の人に連絡して、結婚報告しよう。」友達って言葉に身が引き締まる。

親と会わないって友達が親の代わりに確認に来たりするんだよね、「こんな女駄目だ。」って言われたら如何しよう。

「結婚式したい?」と聞かれる、それよりあなたの友達に認めて貰える方が大事なんだよ、なんて言えなくて、「したいと思った時無いよ。」と答える。

「友達に駄目だって言われたら嫌だなって考えてた。」本当の事を言うのが当たり前になっていたから、頭の中まで曝け出す。

「そんなの考えなくて良いよ、俺が良いって言ってんだから、友達は関係ない、それより結婚式でドレスとか着たくない?」とこまでも優しい、でもそれは考えたことも無い。

「結婚って考えたの初めてだから。」

「そうかー、裕子のこと言うのなんだけど、あいつはこれがしたい、あれがしたいって大変だったんだよ、結局式まで行かなかったけどね。」


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