見出し画像

サトウキビ NiF8

農林8号 (母本:CP57-614 父本:F160)

生い立ち

 1981年台湾で産まれ鹿児島で播種された.1983年に系統名KF81-11と命名された.1992年に品種登録され,NiF8と名付けられた.その後も鹿児島と沖縄,どちらでも広く栽培されている.どちらかといえば春植からの株出しとされることが多い.1茎重は重いが分げつ数も確保されている.普及の進んだ2000年頃には鹿児島でも沖縄でも日本で最も多く栽培された品種となった.なにより糖度が高いため品質取引開始以降のさとうきび産業を支えた品種である.配布された当初は出穂しにくいという特徴を持っていたが,栄養繁殖を繰り返し行うと花を咲かせるようになっていった.すると品質が悪くなるので現在はNiF8に変わる品種が育種目標となっている.

時代背景

 かつて,サトウキビの取引は目方だけで行われていた.サトウキビの甘さは今ほど重要視されていなかった.よってとにかく重たい,あるいはたくさん採れる品種が重宝された.砂糖を作る側,買う側にとってはこれでは困るのでサトウキビ目方と甘さの両方で取引されなければならない.そうすると今の品種は限られた時期にしか収穫できなくなってしまう.そんな理由からこれまでのサトウキビとは違い「甘さ」を追求したサトウキビが必要とされた.1992年に登録.その2年後の1994年に品質取引が始まった.ただ重たいだけのサトウキビは淘汰されていった.収穫時には甘くなる品種,いわゆる早期高糖性の研究はこの品種以前からも行われていたのだが,定着し始めたのはこの品種からであろう.

草型と特徴

 分げつ茎は直立しているように見えるがやや斜めに伸びる傾向にあるので鞘頭部では茎と茎との距離が開いている.未展開葉は直立気味であるが茎が斜めなので主茎以外は斜めに伸びる.そして先端から横向きに垂れる.最上位展開葉は直立せず横へ,茎に近い方から垂れ下がる傾向にある.下位葉は真横に展開し,先端は下向きになる.葉の多い位置は上下に分かれているように見える.



以下,参考にならない勝手な考察
 日本で最も多く栽培された品種は3つある.大正時代はPOJ2725,昭和に入ってからはNCo310そして昭和後期から平成時代がNiF8である.勘違いしてはならないのは「一番普及している」ということは,平均を作っている品種である.さらに言えば最高と最低と平均,全部この品種,という地域もあったはずなのだ.ではなぜ,単一の品種が選ばれたのか?「平均値を押し上げる」という要因もあっただろう.一方でいずれの品種もそれぞれの特徴が時代にあっていたのだろうと,私は思う.NiF8は糖度だ.糖度が決め手となったのは品質取引が始まったことが要因であろう.
 葉が横に広がる,茎が斜めに生える品種は今でこそ珍しくもないが,この時代以前では少ない.このような形でかつての生産量10aあたり6t前後が達成できていたことは一つヒントになるかもしれない.
 一度高い位置に持ち上がり垂れ下がる.その時茎よりも遠い位置へ伸びていく.下位葉に近付くにしたがいその傾向は強くなり地際付近では完全に横へ展開している.そうすると葉が多い部分は最上位展開葉よりも上だけでなく,地際付近でも光を捕まえられるような形になる.おそらく下位葉は暗いところに展開している.だが,この位置には葉があることが重要なのかもしれない.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?