見出し画像

サトウキビ Ni6

農林6号 (母本:F153 父本:多父交配)

生い立ち

 1977年沖縄産まれ.翌年,沖縄県で播種される.1983年に系統名RK78-16と名付けられる.品種登録期間は1990年ごろからで,品種名Ni6と命名される.細身だが茎長が長いので茎数型と茎重型の両方の特性を持っており新植よりは株出でその成果を発揮する.しかし黒穂には弱かった.終戦後のサトウキビは様々なタイプを試していく中で作型が定着しているような印象であったがこれは明確に「多段階株出」を意識した育種となっている.主に南北大東島で普及した.日本で種を取った品種にはNiのあとにアルファベットがない.なお沖縄県で交配し沖縄で育種された第1号の品種である.成熟してくると茎は黄色がかった褐色と紫がかった赤の縞模様になるので美しく、大変分かりやすいサトウキビである.

時代背景

 奄美・沖縄が本土復帰を果たし、これまで国境をまたいで行われたさとうきび育種も連携が取れ始めた。連携していく中で,沖縄県で交配・沖縄で選抜を行うようになっていた.品種特性の研究も進み収量構成要素を考慮した選抜が議論された.その成果として収量構成要素のうち必要な特性の相関を見ていく中で,茎数型は1茎重が軽く,茎重型は茎数が少ないという性質も明らかになっていった.ところが茎数型の中でも茎が長いものは1茎重が重くなる性質があるということも分かってきた.茎数型であり軽重が長く1茎重が重い性質が注目され,Ni6は品種化された.

草型と特徴

 未展開葉は立葉だが先端部分は下垂する.展開葉も同じように下垂するので葉身は湾曲して下垂する.どちらかといえば展開葉の葉身は直立する部分よりも下垂する部分の方が長い.全体的にバランスよく葉が配置されている印象を受ける.したがって一番葉が密集している部分というのは群落の中でもまちまちで,強いて言うなら分げつが出始めた時に最上位展開葉のしたあたりが多くなる時期がある.分げつが多いため主茎よりも短い茎が多いのがその要因である.さらに分げつ茎はやや斜めに伸びる.そして,どの展開葉も全て一度高い位置へ伸びて下垂する.



 


以下,参考にならない勝手な考察
 遠目にみると葉身の形はネピアグラスのようだと思ったことがある.もちろんそんなことはなく葉の厚さや中肋はサトウキビのそれである.葉が密集している高さは上位葉からその少し下くらいではあるが光は上位葉が最も明るく,下位葉はほぼ上位から中位の葉の影になっている.茎が長いので葉と葉の間が空いているのがNiF5と異なる点である.
 葉が長い品種は,あるにはあるが茎数型ではどちらかといえば珍しい.長い葉はLAIを拡大しやすいのだが大きな影を作る欠点がある.だから茎数がすくない茎重型ではまだ許容できるが茎数型では敬遠される.また葉が地面に届くと降雨のたびに葉身に土が付く.これは土壌病害に罹患する要因となるため好ましくない.
 葉身の機能の一つとして雨水を受け止め地面へ流す,という物がある.Ni6の葉身に雨水が当たると大きく弧を描いた頂点を分水嶺にして葉鞘側に流れる水と葉先に向かう水に分かれる.さとうきびにとってどのように影響するかは興味深い.特にこの品種は高い位置に扇上に広がる葉身を持っているので光も雨も高い位置で受け止め有効利用する形をしている.
 黒穂の問題さえなければ,もしかしたら令和まで生き残った可能性もあると私は見ている.
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?