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サトウキビ NiTn10

農林10号 (母本:F177 父本:NiF4 )

生い立ち

 1982年に台湾で産まれ,1984年に那覇で播種された.1963年に系統名RF84-106と命名された.1996年に品種登録され,NiTn10と命名された.多収性品種であり早期高糖性品種である.中太の茎が特徴のいわゆる中間型品種.主に沖縄県の南部および八重山地区で普及した.干ばつおよび台風に弱かったとされている.日本で交配育種された(系統ではなく)品種になったサトウキビを親に持つ最初の品種になった.なお,台湾にゆかりのある品種は「NiF」から「NiTn」となったのもこの品種からである.

時代背景

 バブル経済がなくなり日本全体の景気が悪くなり始めた.これがどれほど沖縄の農業に影響したのか定かではないが,サトウキビだけでなく農家が少なくなり,農地面積が少なくなり,日本全体のサトウキビの生産量が落ち始めた.「目指せ100万トン」といいながら,ただ単収を上げるだけ,栽培方法を工夫するだけ,ではこれまでの生産量に追い付かなかったので製糖工場が減り始めた.少ない人数で今の面積を維持しようと考えた時,機械化・省力化が必要となる.品種にもそのための性質が求められた.
 機械刈りは作業効率が良いので手刈りで数週間かかる畑でも数日で作業が終了してしまう.すると品質の良いタイミングで収穫したいため中生・晩生のサトウキビは12月や1月に収穫したくない.また自然災害で品質を落としたくない.そのような品種が求められた時代である.

草型と特徴

 葉身は長く,葉幅は広め,というのが特徴である.未展開葉は直立し,先端は弧を描くように下を向く.展開葉は直立せず横向きに広がり弧を描いて下垂する.この傾向は最上位展開葉以下の下位葉の方が傾向が強い.このような形なので第1展開葉の上下で葉の伸び方が縦から横に変わっているように見える.したがって葉が密集している位置は最上位展開葉よりもさらに下の位置になるので群落の上部はかなり明るい.先端は下垂するのだが葉身が長いので畝方向へ水平に伸びる間隔も長い.



以下,参考にならない勝手な考察
 単収を上げるためにはどうすればいいか?夏植えを増やせばいいのである.では夏植えの増収はどうすればいいか?適期植付けを行えばいいのである.ではいつが適期か?NiTn10はその幅が広く8月が最適だが9月から10月でも品質が変わらないという報告がある.台風に強い反面干ばつには勝てなかったようで安定生産には繋がらなかったようだ.
 この品種のように未展開葉と展開葉の開き方が異なる場合,どのような受光態勢になるのだろうか.群落の上部はイネ科型なので受光態勢が良い.つまり下位葉へ光が届く,ということである.下位葉は広葉型に近いため急に暗くなるように思える.一番明るい場所には未展開葉,その陰になりにくい位置へ展開する上位葉.ここまではいいが長くて幅広,つまり個葉面積が大きいという「弱点」をもつ品種の,下位葉が広葉型になるということは,実際はどうなのだろうか?
 株元が暗くなると分げつにも悪影響であり,この品種は株出しの萌芽が悪いこともあり,茎数が増えなければ減収という憂き目にあったようだ.それならば畝方向密植させて茎数を増やし,未展開葉と上位葉だけでLAIを稼ぎ,畝間を広げて畝の上の光も有効利用できる現在の植え方では増収が見込めるのではないだろうか.
 

 


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