相樂 ケイゴ

風景を描く人

相樂 ケイゴ

風景を描く人

記事一覧

契り。繋がり。

僕の住む地域では、夏は一瞬で過ぎ去っていってしまいました。 というより、夏の終わりがずっと続いていたような感じがします。 始まりはなく、終末だけがただ続いていた…

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あなたに会うために生きたと信じたい

その夢のなかでは、僕はまだ12歳くらいの少年で、永遠に終わらない夏休みの昼下がりを過ごしていました。夜も朝もこないその世界で、僕はたった一人の住人だったのです。 …

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ずっと暗くて寒くて、優しい世界

まずは、素敵なお手紙ありがとうございます。あなたの手紙を読み、あなたを想い、あなたに向けて文章を綴れることを嬉しく思います。 僕たちの二人の世界には、白い軽自動…

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遅行性幸福感

以前ほど、飛び跳ねるぐらいの幸せなことは起きなくなった。 いや起きているのだけど、 めちゃくちゃ起きてるんだけど…。 なんだろう 幸せを感じるセンサーが鈍くなっ…

白虫どものソーシャル・ディスタンス

部屋の明かりに反応した、米粒みたいな虫たちが、窓の外に張り付き寄り合っている。 それぞれが、うろうろと歩き回っては自分と同じ姿の生物に驚いて、飛び跳ねている。 …

牛丼ミッドナイト先行プレー

シオン氏企画に牛丼ミッドナイトなるものがある。 https://twitter.com/co13n/status/1290294383657402368?s=20 https://twitter.com/saccchan_k/status/129066979626299

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契り。繋がり。

僕の住む地域では、夏は一瞬で過ぎ去っていってしまいました。

というより、夏の終わりがずっと続いていたような感じがします。

始まりはなく、終末だけがただ続いていた。そんな気がするのです。

久しぶりの雨のあと、冷たい風が僕の頬をなぜました。

新しい季節が始まります。

夏の初めにあなたと再会して、初めて季節が変わりますね。

でも、夢の中で密会したときの、少し暗くて風の冷たかったこの季節、僕は

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あなたに会うために生きたと信じたい

その夢のなかでは、僕はまだ12歳くらいの少年で、永遠に終わらない夏休みの昼下がりを過ごしていました。夜も朝もこないその世界で、僕はたった一人の住人だったのです。

何の前触れなく、あなたはそこに居ました。淡い空色のワンピースと麦わら帽子、強い日差しでも侵されない白い肌の、少し年上のお姉さん。ひとしきりその姿に引き込まれたあと、名前も聞かずに僕は、あなたの手を引いてぎこちなく世界を案内をしました。(

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ずっと暗くて寒くて、優しい世界

まずは、素敵なお手紙ありがとうございます。あなたの手紙を読み、あなたを想い、あなたに向けて文章を綴れることを嬉しく思います。

僕たちの二人の世界には、白い軽自動車のなかの空間や日本の田園風景の中にある一軒の家屋、いま僕の住んでいる実家の部屋が流れ着いてきています。その世界で僕らは色々な話をしました。お互いの家族の話、考え方、哲学の話、好きな言葉の話、などなど。

まだまだこの世界は狭く、もろくて

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遅行性幸福感

以前ほど、飛び跳ねるぐらいの幸せなことは起きなくなった。

いや起きているのだけど、

めちゃくちゃ起きてるんだけど…。

なんだろう

幸せを感じるセンサーが鈍くなっている気がする。

燻らせておくほうが炎は長く持つ、という言葉を

いつか、どこかで聞いた。

僕は、幸せという薪を燻らせるということを、

どこかで覚えたのだと思う。

幸せだけでなく、感情は貴重な消耗品なのだ。

じっくり温めて

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白虫どものソーシャル・ディスタンス

部屋の明かりに反応した、米粒みたいな虫たちが、窓の外に張り付き寄り合っている。

それぞれが、うろうろと歩き回っては自分と同じ姿の生物に驚いて、飛び跳ねている。

タダの反射行動だが、結果的に彼らはみんな常に一定の距離を保っている。

特定のやつと一緒にいるやつはいない

特定のグループで群れることもない

ところで、僕は今この白虫どもを潰すことができる。

暗い場所で一人でいればいいのに

わざ

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