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ゾンビ論文の総括(2024年04月)


概要

2024年04月にGoogleスカラーのアラートに次の検索条件を設定して、ゾンビ論文の収集を行った。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network」

  2. 「zombie -firms -Chalmers -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認用)

単語の前にハイフンをつけると、その単語を含まない論文を探す検索条件となる。「zombie」でゾンビ論文を探し、「-〇〇」で不要なゾンビを検索結果から排除するというわけだ。各キーワードで排除したゾンビは次の通り。

4月中にメインの検索条件に引っかかったゾンビ論文は19本であり、私が探している「本物のゾンビを扱った(と仮定しても矛盾しない)論文」は見つからなかった。

また、5月は次の検索条件で論文を確認していく。ただし、検索条件1をメインの検索条件とする。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI

  2. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」(取りこぼし確認用)

  3. 「zombie narrative」(さらに取りこぼし確認用)

以下、4月の調査の詳細を記載する。



集計結果

まず、集計結果を示す。

2024年04月のゾンビ論文集計結果。最上行の日付はアラートメールが送られてきた日付。
ジャンルごとに集計結果が多い順にソート済

合計で19件のヒット。三月の13件よりも若干多く、平均1.2件/日。論文の内容を確認していたときは物量にかなりきつい思いをした印象だったが、大して多くはなかったようだ。そういうことってよくあるよな~。

ジャンルごとにヒット数を見ると情報科学の四件が最大。次に書評の三件、医学の二件が続く。二件以下は誤差の範疇…とはいえ、その誤差で十件もねらいではない論文がヒットしているのだから、どうにかして減らしたいものだ。一方で情報科学の四件は減らさなければならないため、あとで詳しく検証する。

次に、検索条件2のヒット数は次の通り。

2024年04月の検索条件ごとの集計結果。


取りこぼし確認用である検索条件2に引っ掛かったのは31件。検索条件1の19件と合わせれば50件。取りこぼし確認用の検索条件は50-60件で推移しているため、普段通り。確認時はかなり多い印象だったのだが、ふたを開けるとこんなものか。

評論が11件で最大、書評・メディア学・比較文化学が三件でそれに続く。合計で20件であるから、これを排除できればアラートチェックは相当楽になる。しかも、大体はフィクション作品に関わる論文だろうから、あるひとつのキーワードで排除されている可能性が高い。よって、これらが検索条件1のどのキーワードで排除されているのか確認し、それを検索条件2にも適用することを考えたい。これも後に検証する。



4月の検証結果

事前の検証課題はなかったが、上述の通り結果を見て検証したいことができたため、二点ほど課題を設けて検証する。

  • 情報科学のゾンビ論文の排除検討

4月に引っ掛かった情報科学の論文は次の四件。()の中身は検索に引っ掛かった日付と論文中で出てきたゾンビ。

  1. CLAPNQ: RAG システムのための自然な質問の文章からのまとまりのある長文回答(4/5、ゾンビが出てくるゲーム)

  2. 脱獄即時攻撃: 拡散モデルに対する制御可能な敵対的攻撃(4/7、画像生成アルゴリズムにゾンビを紛れ込ませる)

  3. ハイパードライブプロトコル: 固定金利と変動金利の自動マーケットメーカー(4/12、ゾンビ利息)

  4. AI Planningを使用した自動テスト(4/25、ゾンビが出てくるゲーム)

ゾンビの扱われ方は様々だが、四件中三件がAIに関わる論文である。となれば、情報科学のゾンビ論文を排除するにはAIに関わるキーワードを考えればよさそうだ。そのまま「-AI」か、あるいは「-"artificial intelligence"」か。一旦は検索条件1に排除キーワードとして「-AI」を入れることとする。

しかしAI系の論文はarXivが多い。議論が活発で良いことだ。


  • 評論・書評・メディア学・比較文化学の排除検討

まず、評論は次の11件。

  1. ポスト黙示録文学における人新世の美的変化:モーリーン・F・マクヒューの『アフター・ザ・アポカリプス』におけるゴミと崇高さの分析(4/4。「-narrative」および「-philosophical」で排除)

  2. 『The Last of Us』における翻案、暴力、そしてストーリーテリング(4/4。「-gender」および「-narrative」、「-network」で排除)

  3. ポストレイシャルファンタジーとゾンビ:世界を食い尽くす人種差別的終末政治について(4/5。「-philosophical」および「-gender」で排除)

  4. ファストゾンビと社会的権利:ウンベルト・レンツィのナイトメア・シティ(1980)の場合(4/7。「-gender」で排除)

  5. iZombie: 悪徳企業、有罪と無責任(4/12。「-philosphical」および「-gender」、「-narrative」、「-network」、「-drug」で排除)

  6. …オブ・ザ・デッド: リゾンビ、先住民に基づいた伝染病へのアプローチ(4/15。「-drug」および「-gender」、「-narrative」、「-network」で排除)

  7. 消えゆくユートピア:キューバのスペキュレイティブ映画における革命的理想の批判的解明(4/15。「-philosophical」および「-narrative」で排除)

  8. ジェーン・オースティンと吸血鬼(4/18。「-narrative」で排除)

  9. シェイクスピアの向こうへ(4/18。「-gender」および「-narrative」、「-philosophical」で排除)

  10. 文学におけるポストミレニアル文化の恐怖: 恐怖、リスク、安全(4/30。「-philosophical」および「-narrative」で排除)

各排除キーワードによる排除件数を記載すると、次のようになる。

「-narrative」:八件
「-gender」:六件
「-philosophical」:六件
「-network」:三件
「-drug」:二件

「-narrative」が最も効果的なようだ。次に、「-gender」と「-philosophical」が同着。

次に、書評・メディア学・比較文化学についても調べる。まず書評。

  1. アンヌ・ド・マルケンの『それは永遠に続く、そして終わる』(4/15。「-narrative」で排除)

  2. デビッド・マキニス・ギル作『ゾンビ・トレイン』(書評)(4/21。「-narrative」で排除)

  3. ジュリア・チャンピオン、ロクサーヌ・ダグラス、スティーブン・シャピロ(編)著『アンデッドの脱植民地化:世界文学、映画、メディアにおけるゾンビの再考』(4/25。「-gender」で排除)

次に、メディア学。

  1. ゾンビを欲して(4/25。「-narrative」および「-philosophical」、「-gender」で排除)

  2. リブート カルチャー: コミック、映画、トランスメディア(4/27。「-philosophical」および「-narrative」で排除)

  3. 吸血鬼とデジタルモバイルメディア(4/29。「-network」および「-philosophical」、「-narrative」、「-gender」で排除)

最後に、比較文化学。

  1. 「貧しい人々は状況を改善するために仕事を辞める余裕はない」: コナーズにおける労働者階級の危機(4/23。「-drug」および「-gender」、「-narrative」で排除)

  2. 怖い死体:キョンシーと中国の吸血鬼(4/29。「-network」および「-philosophical」、「-narrative」で排除)

  3. 日本の吸血鬼(4/29。「-narrative」および「-gender」で排除)

それぞれの排除キーワードの効果をまとめる。

「-narrative」:二件、三件、三件(合計八件)
「-gender」:一件、二件、二件(合計五件)
「-philosophical」:ゼロ件、三件、一件(合計四件)
「-network」:ゼロ件、一件、一件(合計二件)
「-drug」:ゼロ件、ゼロ件、一件(合計一件)

やはりこちらも「-narrative」が最多。僅差で「-gender」の方が「-philosophical」よりも多い。ならば、「-narrative」を検索条件2の排除キーワードに入れるのが良いだろう。本来ならば「-narrative」が排除しうるゾンビ論文を検討し、私が求める論文まで排除するリスクがないか確認する必要があるが、それは検索条件3に「zombie narrative」を設定することで代替とする。



4月の新しい学術ゾンビ

4月も新しい学術ゾンビをいくつか得ることができた。リンク先はそれぞれの紹介記事になっているので、意味を知りたければ飛んでいただきたい。

  1. "zombie interest", ゾンビ利息(4/12、情報科学)、14件

  2. "ZOMBIES experiment", ゾンビ実験(4/15、物理学)

  3. "zombie citizenship", ゾンビ市民権(4/18、書評)、七件

  4. "zombie clause", ゾンビ条項(4/19、法学)、26件

  5. "zombie system", ゾンビ機構(4/19、法学)、315件

2024/05/02時点で、これらのゾンビワードがどの程度使われているか、つまり各論文の執筆者が適当に作った造語でないかを確認し、各項目の末尾にヒットした件数を記載した。ただし、イェール大学の設備で行う実験である「ゾンビ実験」はほとんど固有名詞も同然のため調べていない。

最もヒット数が多いのはゾンビ機構だが、systemという単語が高い汎用性を有しているために一義的な意味ではなさそうだった。一方でゾンビ利息とゾンビ条項はそれぞれ経済学と法学のジャンルが大半で、間違いなく一義的だった。ゾンビ市民権は、よくわからない。ヒット数も少ないし、今回は無視してよいと思う。

ということで、ゾンビ利息とゾンビ条項を下記の記事に追加しておく。



5月の検証

5月は次の3つの検索条件で調査を行う。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI

  2. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」(取りこぼし確認用)

  3. 「zombie narrative」(さらに取りこぼし確認用)

この3条件で、以下を検証する。

  • 検索条件1で、情報科学系のゾンビ論文を排除できるか

  • 検索条件2で、小説や映画など、フィクション作品を論じたゾンビ論文(評論・書評・文化人類学等々)を完全排除できるか

  • 検索条件3で、「-narrative」がねらいのゾンビ論文まで排除してしまわないか

条件の変更は05/01から反映される。

以上。


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