飲食業界のDXとシェアリングエコノミーが生み出す機会
昨年の緊急事態宣言のころマイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏が決算発表で、「この2ヶ月で2年分に匹敵するほどのデジタルトランスフォーメーションが起こった」と話していました。あれから1年近くたち、2年どころか業界によっては、5年・10年ものDXが進んでいると言っても過言ではないかもしれません。
行政のデジタルトランスフォーメーション
世界から大きく後れを取っていた東京都や政府も、この1年弱の間に信じられないスピードでDXを推進しています。都政は、「シン・トセイ戦略」を発表し、バーチャル都庁によるクラウド化の推進、ペーパレス化、行政手続きのオンライン化、全都立施設の100%キャッシュレス化など推進、政府はデジタル庁を今年の9月に設立する準備を急ピッチで進めています。
どちらも突然新たなテクノロジーが生まれたわけではなく、東京都は元ヤフー社長の宮坂学さんが副知事として就任されていたこと、政府も自民党のIT戦略特命委委員長をされていた平井卓也デジタル改革大臣の就任という、IT業界に知見もネットワークも、経験も豊富な方々がブレーンたちとリーダーシップを発揮しているからこそ、今まで中々動かなかった政治の世界のデジタル化が進んでいます。
行政だけでなく、民間でデジタル化の遅れていた業界は、補助金を頼りにじっと耐えるのではなく、明確な戦略とリーダーシップでDXや未来を先取りした企業やサービスがこれから大きく成長していくの間違いありません。
飲食業界のDX
飲食業界もDXとシェアリングエコノミーによって、大きく変化しています。飲食店はUber Eatsなどデリバリーサービスを活用し、テイクアウトやデリバリーに特化した「ゴーストキッチン」など新たなサービスや店舗も続々と増えています。
特にマクドナルドは自社および他社のデリバリーの積極活用、スマホで注文・決済後に従業員が駐車場で商品を手渡ししてくれる「パーク&ゴー」、ドライブスルーのノウハウに加えて海外ではAIも導入するなど、コロナ禍でDXへ大きく投資し、最高益を実現しています。
ゴーストレストランも、来店客のスペースがないのはもちろん、複数の店舗やブランドが同居する「シェア型」の店舗を提供する事業者が国内外で急成長し、少ない投資で飲食業を始め、2-5坪で月商500万円以上の売上を出している店舗も生まれています。
一方、テレワークが拡がることで、日中の仕事場を探す人が増えています。三菱地所は先日、店舗やホテルの空き時間をテレワークのスペースとしてマッチングするサービスを開始したと発表されました。こういったスペースのシェアリング、マッチングも増えています。
飲食業界を変えていく注目のシェアサービス
DXの活用から、キッチンスペースのシェア、デリバリスタッフのシェアなど、シェアリングエコノミーは大きく業態を変えています。海外では、ソーシャルダイニングと呼ばれる食卓版のAirbnbとも言われる「Feastly」や「EatWith」も人気ですし、国内でも家事代行で料理の作り置きをしてくれる「タスカジ」や「シェアダイン」、フードトラックと駐車スペースのマッチングサービス「Mellow(メロウ)」や、飲食店のフードロスを減らすためのフードシェアリングサービス「TABETE(タベテ)」など、飲食系のシェアサービスが拡がりつつあります。
ADDressで多拠点居住をしている料理人が、とても面白いサービスの立ち上げを発信していました。飲食店の料理人というのは、店の営業があるのでほとんどの人が店から離れられず、ゆっくり旅行もできない人が多いそうです。そんな料理人のインプットとアウトプットを多拠点で実現できるようにしたい、また人口減少が進み飲食店も減っている農山村や過疎地域で、料理人が短期間お店を開ける場をつくりたい、という想いから「サーカスキッチン」というサービスを立ち上げるとのこと。
飲食営業ができる場所と、料理人がマッチングするだけでなく、農家さんら生産者と料理人が繋がり、体験し、会話し、さらにお店で料理を提供する。そんなことが、都市部の飲食店で料理する方々が、地方で料理・仕事をする機会が多拠点で増えたら、本当に素晴らしいと思います。
シェアリングエコノミーの本質とは、個人が活躍する機会をつくり、需要と供給のズレをすき間なく埋めていくことにあります。また個人の領域を越えて、自営業やマイクロアントレプレナーが大きく成長できる機会も生み出します。DXやシェアリングエコノミーが拡がることで、少ない投資で活躍する人たちが増えていきます。そして新たなプラットフォームが大きくなっていく可能性も拡がります。
そんな飲食業界の当たり前が変わる、新レストラン考と題して、日経MJ×COMEMOのオンラインイベントが開催されるようです。飲食業界だけでなく、様々な業界のDXや未来を先取りするヒントとして、参加してみてはいかがでしょうか?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?