映画感想文「かくしごと」認知症の父役の奥田瑛二が素晴らしい。タイトルは最後に回収される
人生の最後、これだけは避けたい。
だけど、きっと避けられない。認知症。65歳以上の5人に1人が罹患してるという。
そんな「いかにも」な認知症の老人を見事に演じた奥田瑛二に圧倒された。
どんどん訳わからなくなってくる様が非常にリアルで切なくて。主人公である娘の千紗子(杏)と同じ気持ちになって、何度か脳内で怒鳴りつけたり、涙ぐんだりした。本人も辛いだろうが周囲も本当に本当に辛い。その様がよく、表現されていた。
厳しかった父と疎遠になっていた絵本作家の千紗子。しかし父が認知症の兆候を示してきたことで肉親として役所から呼ばれ、山里の実家に戻ってくる。
そんな彼女が偶然出会った少年。身体中に残る虐待の跡を見て絶句する千紗子。彼を守るため母を名乗り、認知症の父との擬似家族を作っていく。
しかし平穏で幸せな暮らしは続かない。そんな彼らをある日事件が襲う。
一見筋が通ってるように見えて、実はどこかたがが外れている。そんな狂気を孕んだ杏の演技もよかった。
気持ちは痛いほどわかる。でも超えてはいけない線がある。それでも「魔の時」はやってくる。またドアップが何度か出てくるが、さすが元モデルである。表情の作り方がとても上手い。
かくしごと、というタイトルは最後に回収される。欲を言えばそれも含め、ストーリーが割と想定内で読めてしまうこと。しかし演者の演技は良かった。
また、痴呆、児童虐待、親子の疎遠など重いテーマを扱っているが、背景となっている、山里の景色が大変素晴らしく、それに救われる。
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