映画感想文「宝くじの不時着」予定調和だがほっと安堵できるコメディ映画。お正月らしい
毎年お正月になると思い出す。
ある年の三が日、父に連れられて行った映画館。いまも鮮明に覚えている。
渥美清の演じる寅さんシリーズだった。
決まって誰か困ってる人がいて、寅さんが助けて終わる。そんな予定調和の人情ものだ。
子供心にも、別にわざわざ見る内容じゃないと思った。
しかし、満席でぎゅうぎゅうの映画館は華やいでいた。大人たちは嬉しそうにスクリーンに向かい、決まったところで共に笑いさざめいていた。
それは楽しげで、なんだか妙な一体感があった。
今年の三が日。
そんな記憶が再現された韓国映画を観た。
韓国の兵士チョヌが6億円の宝くじの当選券を手に入れる。有頂天になるが、国境警備の合間に風に吹かれた宝くじは北朝鮮の領土に飛んで行ってしまう。
取り返そうと躍起になるチョヌ。対するは北朝鮮の兵士ヨンホ。こちらも譲らない。
さて、彼らの宝くじを巡る戦いはどう決着するのか。
互いの国の実情をおもしろおかしくディスりながら、大金に目が眩む人間をも笑っているのだが、最後は円満に収まるところが寅さんと同じだ。
結局、人類は皆兄弟、とばかりに徹底的に性善説なところに安堵を覚える。
そんな懐かしさを感じるコメディ映画。正にお正月にみるに相応しい、肩の力を抜いてみることができる作品であった。
毎年お正月恒例のテレビのバラエティ番組同様、映画にもこんな寅さん枠があってもいいよね、と思う。
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