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ヒメシロチョウ

登場人物

シナリオスクールに行っていたときの課題作品です

フワッとにもフワッとをかけた作品でしたが、意外に評判は悪くなかったです

これも残されたものと生き続ける者の私なりの何か

私なりのミニシアター感

美少女と白さえあればなんとかなる(わけではない)


三島瑠々(11)小学生
三島美知瑠(36)瑠々

〇三島家・子供部屋
  風鈴の音、真っ白な部屋。白い布団に絹のハンカチを顔に乗せた少女が横たわっている。それを三島瑠々(11)が覗き込んでいる。瑠々は喪服。

瑠々「ねぇ知瑠ぅ。寝てるの?」

 瑠々少女の顔のハンカチを取る。瑠々とそっくりな顔が現れる。瑠々横たわる少女の頬に自分の頬を寄せる。

瑠々「冷たい」

 瑠々の頬を涙が伝う。瑠々少女の顔から取ったハンカチを握りしめる。

瑠々「これ、借りとくね」

 瑠々ハンカチをポケットに押し込む。部屋の白いカーテンが大きく揺れて瑠々を隠す。

〇三島家・子供部屋
 部屋のカーテンが揺れて収まると奥から机が二つ現れる。片方には瑠々。もう片方の上に鉢植えが乗っている。

〇同・階段下
 三島美知瑠(36)が階段上に声をかけてる

美知瑠「瑠々~宿題終わった?」

 瑠々扉の方に向け返事をする。

瑠々「余裕~」

 手には少女漫画。フッと隣の机の上を見やる。

瑠々「あ…。」

 瑠々子供部屋の扉を飛び出していく。

瑠々(声)「お母さん!大変!」

 鉢植えに白い蝶。卵を産んでいる。瑠々の机の上の絵日記が風でめくれる。白い蝶と卵の絵。

〇三島家・居間
 蝉の声。座卓の上に透明プラスチックの虫かご。瑠々が床にうつぶせで漫画を読んでる。座卓の上の絵日記には芋虫の絵。

〇三島家・子供部屋(夜)
 美知瑠机の上の絵日記をめくる。机の虫かごには蝶の蛹。瑠々は二段ベットの下で漫画を読んでる。

美知瑠「こんな事だろうと思った」

 絵日記の中、蝶と芋虫の後は真っ白。

美知瑠「明日から学校よ?準備は?」

瑠々「余裕~」

美知留「鞄見せて」

瑠々「いいよ~」

 美知瑠鞄の中から色とりどりの大量のハンカチが出てくる。

美知留「わ、なにこれ!」

瑠々「みんなに返すハンカチ」

美知留「…全部借りてるの?」

瑠々「うん」

美知留「どうして、ハンカチくらい持って歩きなさい」

瑠々「持ってるよ」

美知留「じゃあなんでこうなるの」

瑠々「手を洗った後瑠々がこうしたら」

 瑠々幽霊のように手を前に

瑠々「みんな貸してくれる」

 美知留頭を抑えて天を仰ぐ

瑠々「瑠々のハンカチは手なんか拭かない」

美知瑠「だったら何に使うの」

瑠々「ん~、知らない」

美知瑠「一体どれが誰のかわかるの?」

瑠々「余裕~、みんなのお気に入りは決まってるんだ。レースのは佳奈ちゃん、チェックでパリッしてるのは智ちゃん、タオル地は桃ちゃん、青くてやわらかくて良い匂いがするのが修人君」

美知留「男の子にまで借りてるの?」

瑠々「そうだよ?」

美知瑠「とにかく洗ってアイロンかけなきゃ」

瑠々「ダメだよ!」

美知瑠「どうして」

 虫かごの蛹がゆっくり羽を伸ばしていく。

瑠々「修人君のは丸まってるのがいいの!」

 虫かごバタバタと音を立てる。瑠々机に飛んでいく。

瑠々「わぁ!」

 瑠々虫かごの蓋を開ける

美知瑠「瑠々!何するの?」

 虫かごから窓の外へ白い蝶が飛んでいく。

瑠々「行ってらっしゃい」

 窓の白いカーテンが大きく揺れる。

〇三島家・子供部屋(夕)
 カーテンの大きな揺れが収まると瑠々がランドセルを背負って扉から入ってくる所が現れる。

美知瑠(声)「ちゃんとハンカチ返したの?」

 瑠々ポケットから出した青い丸まったハンカチの匂いを嗅いで微笑む。

瑠々「余裕~」

 窓から白い蝶が入ってきて机の上に止まる。

瑠々「え!帰ってきちゃったの?」

 はねをゆっくり動かす蝶。それを覗き込む瑠々。

瑠々「お帰り、知瑠」

 蝶動きを止めてぱたりと倒れる

瑠々「あぁ!」

 顔をしかめながら蝶を掌で掬う瑠々。

瑠々「わかったよ、これ、返すね」

 ポケットから綺麗に畳まれた白い絹のハンカチを取り出して間に蝶をはさむ。そのハンカチに頬を寄せる瑠々。

〇三島家・庭
 瑠々がハンカチを土に埋める。丸まった青いハンカチを嗅ぎながら泣きじゃくる。

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