寛解後3年経って思うこと

双極性障害という病気に翻弄されていた頃、寛解した人の情報が欲しくて探し回っていた。「どうやって治ったんだろう」「どんな方法で?」という疑問があったから。でも、そんな努力も虚しく、寛解した人の体験記を見つけることはできなかった。

でもそれは、寛解した人がいないとか極端に少ないとかではなく、単純に寛解したら皆、自分の人生が動き出して、結果的にSNSから遠ざかり、病気のことを忘れるからだということも、長年調べていくうちに、段々と分かってきた。

そういう経験があったので、自分が寛解したら、絶対にその経緯を書き残したい気持ちがあった。同じ病気の人に寄り添うためにも、SNSからは離れないぞ、と強く思っていた。

その数年後、寛解した。結果、SNSから離れてしまい、体験記のことも、どこかに忘れてしまった。自分の人生が動き出したからだ。

あの決心はいずこへ。自分でも情けない。しかし、それが普通なのかもしれない。自分のリアルな人生が動き出すと、日常が充実して忙しくなって、そこまで気が回らなくなる。なんなら、あんなに苦しんだのに、自分が病気だったことも忘れてしまうのだ。喉元過ぎれば熱さ忘れる、である。

私の場合、寛解後しばらくして、動き出した自分の人生に慣れてくると、時間的にも気持ち的にも、少し余裕が生まれてきた。すると、まだ同じ病気に苦しんでいる友人たちがいることをやっと思い出すようになった。

気になったので、試しに「双極性障害、寛解」というワードでネット検索をかけてみる。以前よりは体験記は増えていたが、寛解までの個人的な経験を記した本は見当たらなかった。未だに、誰も書き残していないんだな。そう思ったら、書かなきゃいけない使命感が、眠っていた心の奥底から沸々と沸き上がってきた。

そうやって書き上げたのが、今年2月に出版した本「双極性障害・双極症を乗り越える7つのステップ」である。この本がどれくらい役に立つかはわからない。ただ、同じ病気で長年苦しんでいた夫は、私がこの本に記した情報をもとに、病気への取り組み方を改善し、同じく寛解するに至った。今はフルタイムで仕事をして、趣味も楽しんでいる。この本がこうやって誰かの寛解への一助になれたらいいなと思う。

今の私は、毎日3食料理して、ジムに通って、授業をして、講演会をして、音楽やって…と、病気だったことを本当に忘れるくらいに安定した日々を送っている。

今双極性障害で苦しんでいる人、特に目の前が真っ暗で先が見えない人には、「私が寛解したんだから、きっとあなたも寛解するよ」とエールを送りたい。人生の可能性は無限大。寛解するにはコツと努力が必要だが、諦めないで取り組めば、病気は必ず良くなる。諦めるな。向き合い続ければ、未来は明るい。そう伝えたい。

現実には、向き合い続けることから逃げる人がいることも知っている。寛解した今思うのは、そういう人は、何年経っても同じ場所をぐるぐるするだけだ。カウンセリングの重要性を説いても、なかなかカウンセリングに足を運ばない。主治医を変えることを勧めても、動かない。それでは、病気があなたの人生を一生侵食し続けるぞ。あなたの人生が、病気で終わっていいのか。迷っている方は、もう一度自分に問うてほしい。あなたは自分のために、ベストを尽くしているか、と。

私は病気で自分の一生が終わるのが心底嫌だった。だから、できることは全てやった。うつ状態のときは、体が動かなかったから、休むのが仕事と信じ、何もせずに休息した。しかし、気分が上向きになって、体が動くようになったとき、ここぞとばかりに、病気に取り組んだ。

うつ状態から気分が上向きになると、多くの人は無駄なことにエネルギーを使い始める。例えば、SNS上で雑談し始めたり、人と会ったり。元気が出たときこそ、省エネで動かなければならない。そして、そういう時こそが病気と向き合うチャンスなんだ。それを忘れないでほしい。

どうか自分を見捨てず、自分のために今できるベストを尽くしてほしい。その積み重ねが、未来を明るくしてくれる。躁鬱の波が消える日常が待っている。



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