変化は恐れるものではなく、楽しいもの。 世界一周した夫婦の 「挑戦の原点」 とは
ちょっと勇気が欲しいときや、ワクワクしたいとき。
そんなとき、甘い香りが漂うお店や、香ばしい香りのするキッチンカーに思わず足を止めたことはあるだろうか。
『il pleut / イルプル』は、誰もがふと立ち寄りたくなる、フレンチフードトラックと焼き菓子のお店。ふんわりとした優しい香りとともに、明るい笑顔で出迎えてくれるのは、店主のご夫婦(友哉さん、美咲さん)。
現在、お二人はキッチンカーや焼き菓子のテイクアウト専門店など、日々新たな挑戦をしながら、お客様に素敵な焼き菓子と食事、笑顔を届けている。その裏では、何度も新型コロナウイルスの影響を受けたそう。しかし、どのような困難な状況でも、持ち前の明るさと行動力で苦境を乗り越えてきた。
今回は、『il pleut』を営むご夫婦の魅力に迫りながら、世界一周を経験されたフレンチの料理人、友哉さんの「変化に対する考え方」を探った。
紆余曲折を経て、今がある
ーー4月12日の実店舗オープン、おめでとうございます!実店舗で販売されているメニュー内容は、キッチンカーと異なりますか?
ありがとうございます!実店舗では15、6種類の焼き菓子と、カップケーキを2種類ほど提供しています。テイクアウト専門店として、約20種類くらいの焼き菓子をメインに販売しています。
キッチンカーでは、数種類のお菓子と食事を提供しています。僕はずっとビストロで修行していた経験があって。その経験を活かして、鴨肉や羊肉などの、家庭では少し調理しづらい食材を扱っています。
ただ、そればかりだと手を出しにくい部分もありますよね。それで、サーモンやサバなどの馴染みのあるものを、いぶりがっこのタルタルソースや自家製のソースと合わせて販売しています。お子さんからご年配の方まで食べていただけるようなメニュー構成を心がけています。
ーー実店舗の開業までに、どのような過程がありましたか?
まず最初に「将来こんなことやりたいです」という宣伝の目的を兼ね、キッチンカーを始めました。当初は2、3年キッチンカーを経験した後、実店舗に移ることを目標にしていたんです。
そしたら、キッチンカーを始めて3、4ヶ月のタイミングで、トントン拍子でテナントが見つかって。キッチンカーの同業の繋がりの方から、現在の店舗のテナントをご紹介していただきました。「どのみち実店舗を始めるなら早い方がいいか」と思い切ってテナントを借りました。
ーー現在は当初の目標とは少し違う形で、キッチンカーと実店舗を運営されているのですね。
はい。実は、実店舗とキッチンカーを両立させながら、フレンチとお酒と焼き菓子が楽しめるお店にしていこうか、なんて話も奥さんとしていました。
ただ、二人だけでイートインとキッチンカーを両立させるのはなかなか難しくて。実店舗はテイクアウト専門の焼き菓子店にしようと決めました。テイクアウト専門店としてなら、奥さん1人で仕込みができるし、僕はキッチンカーを回せるし。それで今のような、キッチンカーと焼き菓子のテイクアウト専門店というスタイルになりました。
見たことのない風景が、自分を突き動かす
ーー世界一周の経験があるそうですが、なにか大きなきっかけや意志があったのですか?
僕が大学生(19)のときに、1年休学してニュージーランドで英語の勉強をしていたのが大きなターニングポイントです。そこで英語を勉強したことをきっかけに、ニュージーランドにいた際もいろいろな国へ行きました。帰国後も、長期休暇中にバックパッカーとしてアジアを巡っていました。
「社会人になったらどこかのタイミングで絶対世界一周したいな」とずっと思っていて。その後就職して4年間経ったとき、「今しかない!」と思い、仕事を辞め世界一周の旅に出かけました。
ーー異国に飛び込んだり世界一周に挑戦したりするのは、かなり勇気が必要だったのでは?
大学生のときは、「海外でバックパッカーとして旅をしたい」という楽しみの方が勝っていたので、あまり恐怖心はありませんでした。実際に大学生のときに留学をして、ある程度「海外ってこんな感じなのか」というイメージがついていたし。その延⻑線上の世界一周だったので、不安はそれほどありませんでしたよ!
ーー以前から外国に興味があったのですか?
めちゃくちゃ興味ありました!外国の食べ物も好きだったし、行ったことのない場所へ行って、新しい環境に順応することも好きでしたね。
ーー奥様も、オーストラリアへ行かれてましたよね!
はい!奥さんと同じ職場で、「いつか海外に住んでみたい」とお互いに夢を語り合っていました。好きな趣味とか環境が似ていたんです。
僕が4年間勤めた就職先を辞めて、先に世界一周に出ました。それから奥さんも仕事を辞めて、海外へ来たんです。そのとき僕はオーストラリアでワーキングホリデー(仕事をすることで滞在資金を補いながら、海外生活を体験できる制度)を利用して農家へ働きに出ていて。そのタイミングで奥さんも一緒に参加して、オーガニックファームで半年間、二人で一緒に野菜やフルーツの育て方を学びました。
ーーお二人とも行動力がものすごくありますよね!「とにかく行動する」タイプですか?
みたいですね(笑)。自分でもわからなかったんですが、キッチンカーとか実店舗の運営とか、世界一周とか。他人から言われて「とにかく行動する」タイプだと気づきました。
失敗と挑戦を繰り返し、成長を続ける
ー一多くの経験をされてますが、20代の早い段階で自分自身のキャリアビジョンを考えていたのですか?
世界一周する前は、今後のことは考えていなくて(笑)。世界一周中にこれからどうしようかなって考えていました。そのとき海外で一番印象的だったのが「どこでも働けるって素敵だな」と思ったことです。それが、料理人になりたいと思った一つのきっかけでした。
僕はずっとウェディングの仕事をしていたのですが、式場に行かないと仕事がなくて。料理はもちろん好きだったんですけど、僕にとって海外でもどこでも働けることが、料理人の魅力でした。世界一周中の大発見です。
ーーさまざまな経験をする中で、ご自身の進みたい道を見つけたのですね。やはりお二人のようにワクワクを追求することが、自分の進路を発見する近道なのでしょうか?
一概には言えないけれど、選択は人それぞれだと思うんです。僕らの場合、気持ちのワクワクすることを仕事にしたいタイプだけれど、それはそれで葛藤があって。好きなことだから、どこまででもできてしまうので、仕事とプライベートの境界線がなかなかなくて。自分の気持ちがワクワクする仕事に就けるのはいい反面、休日も休みきれない部分はあります。
僕はそれが苦ではないですが、人によってはしっかり土日休みがあって、給料も毎月入ることを重視したい人もいるだろうし。休日にはお友達と遊んだりキャンプに行ったりだとか。そこで充実させれば、満足度は高くなると思います。
自分自身がどうありたいか、どんな仕事に就きたいか、どんなふうに生きたいかを、その都度自分で決断していく必要があると思います。
僕は27歳で仕事を辞めましたが、「自分の気持ちに素直に動くと、どういう結果になるのか」と考えていたことが大きかったです。20代は、自分のキャリアビジョンをなかなか決められないですよね。結婚や出産のこととなると、なおさら先のことすぎてわからない部分もあると思うし。やってみないとわからないことも多いので、まずは挑戦してみるのもいいかもしれませんね。
ーー挑戦には失敗がつきものですが、失敗への恐怖心はありませんでしたか? 挑戦に対して緊張とか恐怖心がなさそうですが……。
そんなことないですよ!めちゃくちゃ怖いです !(笑)それこそ、お店を失敗したら怖いなって思ったりするし。どうして怖いんだろうって考えたとき、僕たちの恐怖は経済面でした。でも、それで諦めてしまうのはもったいないって気づいたんです。
最近は「チャレンジすることに意味がある」と思っていて。挑戦するうえで何が自分の心に引っかかってるのか。失敗の原因を紐解いて、どのように解決するのかを考えるようにしています。
失敗への恐怖心は誰もが持ってしまう部分ですよね。でも、僕は「やってみたい」気持ちが強くて。「やるだけのことを全部やって、駄目だったら駄目でしょうがない。でも、何回でもやり直せるよね」って夫婦でもよく話しています。
ーー多くのことに挑戦し、純粋に変化を楽しんでいるからこそ、今のお二人があるのですね。今後、お店を運営するうえでの目標や展望はありますか?
今後はネット販売にも挑戦したいなと思っています。キッチンカーと実店舗、さらにお菓子のネット販売という3つの軸があれば、バランスがいいのかなと思っていて。そうすれば、お客様も飽きないと思うし。
「あの夫婦また違うことやってるね!」という1つの話題が地域でつくれると面白そうだなと思いました。時代やお客さんのニーズに合わせて、さまざまな形態をとれれば、自分たちもきっと楽しいですしね!
ーー挑戦する中で、また今後やりたいことが増えていきそうですね。貴重なお話をありがとうございました!
変化は楽しい。そこから世界が広がる
今回は『il pleut / イルプル』を営むご夫婦の魅力と、友哉さんの「変化に対する考え方」を探った。キッチンカーや焼き菓子店の開業、世界一周の旅。多くの挑戦には「変化は楽しいもの」というマインドがうかがえた。
変化は恐れるものではなくて、楽しいもの。そう考えられるようになったとき、小さな一歩を踏み出せるかもしれない。
そして、おいしくて眺めていてなぜかワクワクするような焼き菓子や料理。多くの人に愛されるお二人の温かい人柄。『il pleut』へ足を運んでみると、自然と勇気が湧いてくるはず。
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