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DXの絵本

昔々、まちには馬車が走っていました。

ある時、こう考えた人がいました。
「もっと速く、もっと遠くへ移動することはできないだろうか。」

そのころすでに使われていた「蒸気機関」という力を使って、蒸気船や蒸気機関車がつくられました。

多くのヒトやモノがはやく、遠くへ運べるようになり、人々の暮らしは便利になりました。


昔々、人々は紙に書いた文字で言葉や想いを伝えていました。

ある時、こう考えた人がいました。
「もっとはやく、もっと手軽に言葉や想いを伝えることはできないだろうか。」

そのころすでに使われていた文字や数字を電気に変えて伝える力をさらに発展させて「電話」がつくられました。

多くの人たちが遠く離れた大事な人たちに言葉や想いを自分の声で伝えることができるようになりました。


昔々、人々は演奏家のもとへ訪ねて音楽を楽しんでいました。

ある時、こう考えた人がいました。
「この素晴らしい音楽をもっと多くの人に楽しんでもらうことはできないだろうか。」

音を閉じ込める「録音」という技術が生まれ、レコードやCDに音楽を閉じ込めることができるようになりました。

多くの人たちが音楽を楽しみ、街は音であふれ、人々の暮らしに彩りが生まれました。


昔々、計算は人々が紙とえんぴつを用いて頭の中でやっていました。

ある時、こんなことを考えた人がいました。
「機械に数式を解かせることはできないだろうか。」

「コンピューター」が生まれ、人々は「デジタルテクノロジー」を手に入れました。


多くの情報、多くの便利がもたらされるようになった世界で、こんなことを考えた人がいました。

「世界中のコンピューターをネットワークでつないだら、世界中の人たちがコミュニケーションできるようになるのではないか。」

インターネット(The Internet)が生まれました。


さらにたくさんの人たちが色々なことを考えます。

「電話をするように手紙が送れたらいいのではないか。」
eメールが生まれました。

「音楽を持ち歩いて出掛けられたらいいのに。」
持ち運べる音楽プレーヤーが生まれました。

「移動しなくても集まって話し合いができたらいいのに。」
WEB会議ができるツールが生まれました。


世界がどんどん便利になっていく中で、こんなことを考えた人がいました。

「たくさんの便利なツールが手のひらの中で使えたらいいのに。」

スマートフォンが生まれました。

人々は直接会わなくてもたくさんの人と文字や映像、音声を使ってコミュニケーションが取れるようになりました。
スマートフォンには音楽を聞くツールや地図を見るツール、その他にも様々な便利なツールが詰め込まれ、子どももお年寄りも多くの人が便利になりました。


どんどん便利になる世界に、ある日とても恐ろしいウイルスが生まれました。

ウイルスはとても感染力が高く、話したり、触れあったりすることから人々を遠ざけました。

しかし、これまでに生まれた様々な便利なモノたちが人々の暮らしを支えました。

人々は気が付きます。
世界が大きく変革(トランスフォーメーション)されていたことに。


そして、人々はもうひとつ気が付いたことがありました。

誰かと会って話をしたり、外で友だちと走りまわったり、食事を共にしたりする。
そんな当たり前だと思っていた時間がとても貴重で大切だということに。
どんなに便利なモノができても「人と人が触れ合う」ということはヒトにしかできないのだということに。

人々は思いました。
色々なモノが便利にしてくれた時間を、人と人とが触れ合うことや、繋がりを作ること、自分を成長させるために使おう。

それはヒトにしかできないことだから。

色々な人の想いが積み重なり、様々なツールによって便利になった世界で「温もりのある時間」を手に入れた人たちがたくさん生まれました。


あとがき

DX(Digital Transformation)の目的は至極単純です。
「人間がやるべき仕事は人間に。そうじゃない仕事は機械に。」
しかし、単純であることほど難しく考えてしまうという傾向が人間にはあるようです。

「DX」というのはなにか特定のツールを指すのではなく、あくまでも考え方であり、これまでにも行っていたであろう変革のための活動に「デジタル」という要素を付け足す。
言ってしまえばそれだけのことです。

しかし、組織によってはその変革がとてつもない痛みを伴うものであるように見えるようです。
ましてや行政のような利益という指標もなく、法律や条例に決められていたことを粛々とやっていれば良かった組織には「変革?どゆこと??」みたいに思われるのは自然なことかもしれません。

今回は「絵本仕立てにすることによってエッセンスをうまく伝えることができないか」というチャレンジをしてみました。
皆様に少しでもDXの真の姿が伝われば幸いです。