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女性研究者として『気に入った手袋』をさがす

こんにちは、東北大学 サイエンス・アンバサダー(SA)のゆみです. 
今回はある女性の紹介を行いたいと思います。
 
大学進学への進路変更や浪人選択、さらには留学への挑戦、大学院進学などさまざまなフェーズにおいて今でも私のバイブル的な女性になります。

それは昭和を代表するテレビドラマの脚本家であり、エッセイスト、小説家である向田邦子さんです。

没後40年以上が経ってもなお褪せることのない魅力一人の女性としての生きる姿はちくま文庫から出版された「向田邦子ベスト・エッセイ」(2020年3月10日発行)の最後に収められた一編「手袋をさがす」に顕著に現れていると思います。


「気に入った手袋が見つからないから」という理由でひと冬を手袋なしですごした著者。やせ我慢をしているように見えた周りから風邪をひくからと忠告されても、妥協して間に合わせの手袋を買ったりはしませんでした。そんな彼女の意地っ張りさを見かねた先輩の男性が、次のように忠告してきたようです。 「君のいまやっていることは、ひょっとしたら手袋だけの問題ではないかもしれないねえ」(中略)
「男ならいい。だが女はいけない。そんなことでは女の幸せを取り逃すよ」

ちくま文庫「向田邦子ベスト・エッセイ」2020年3月10日発行

これを聞いた向田邦子は一旦は「やり直すならいまだ。」「今晩、この瞬間だ。」と考えたのでした。
しかし、その一方で彼女は『ほどほどの幸せ』を歩むことに満足しなかった、と言います。

何不自由ない毎日であるはずなのに、さっぱり楽しくないという彼女は、小さい頃からの高のぞみの性格も相まって、「このままでは、私の一生は不平不満の連続だろうな」と思っていたといいます。


そしてーー私は決めたのです。
反省するのをやめにしようーーと。
ないものねだりの高のぞみが私のイヤな性格なら、とことん、そのイヤなところとつきあってみよう。そう決めたのです。

ちくま文庫「向田邦子ベスト・エッセイ」2020年3月10日発行

彼女が望んだのは『それなりの人並みの幸福』ではなく、『このままの自分で、理想を追い求めて好奇心のままでいること』でありました。この一節を読んだ私は、彼女の芯の強さに憧れを抱くとともに、時代の先を進む強い女性の決意を感じました。


1999年に制定された男女共同参画社会基本法は国民全てが性別に関係なく、個性と能力を発揮できる社会の実現を目指したものでした。
その法律の先駆けになった男女雇用機会均等法の施行は1986年です。

その遥か30年以上前の22歳の向田邦子がこのように考えていたことーー時代や環境のせいにせず、自分の道を切り開くその姿には清々しい気持ちさえ感じます。



気に入らない手袋だったらはめない。妥協せず、欲しいものを諦めず、常に高みを追い求める人生を歩む。 

女性研究者として自分の人生をとことん極める女性の姿として、今でもその背中を追っていきたいと思っています。

皆様の憧れの人は誰ですか?
貴方にとっての『気に入った手袋』はなんですか?

ぜひ一緒に夢に近づきましょう。


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