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日本、こんな所に都会人。ぽつんと山の中。(2)(台詞のみ)

短編 読切 3 (2000字のドラマ)


「ねえ~!寂しくなったっ!誰かと話したいっ!」
「俺と毎日、話してるじゃねえか。」
「飽きたっ!、、、あんたの言う事、決まってるし、大体予想つくしっ!」
「……じゃ、知らない奴と話せるチャットアプリでも入れろ。Wifiで使い放題だ。」
「おっ!そうだった。世の中にはそう言う物が有ったんだっ!、、、、、、早速、検索、ダウンロードっと。」
「話してて、会いたくなったら会いに行けば良いんじゃね?」
「えっ、行って良いの?」
「行っちゃダメだって言う理由があるか?」
「だって、、、心配じゃないの?私の事、、、」
「病気の事か?、それともお前の素行の事か?」
「うわっ!素行だって、、、私、そんなに軽くないもんっ!」
「へっ、会う相手が男前提で話してるな?お前。」
「ち、違うもんっ!、、、う~、、、」
「まっ、好きにしろ。麓の駅まで送ってやるし、帰りは連絡くれれば迎えに行ってやるよ。」
「……帰んなかったら、どうすんの?」
「一人で暮らすよ。俺一人で。」
「……帰ってこい。とか必ず帰って来てとか言ってよ。パートナーなんだから。」
「相手から愛想を尽かされたら、帰ってらっしゃい。お嬢様。」
「可愛くな~いっ!このだっせー中年っ!」
「ハハハハハ。」

「お~い!お前、通販サイト、作れるか?」
「作れるよ。アプリもあるよ。後は商品と値段とか乗せるだけ。」
「里の直売所の通販サイト、作ってやってくれねえか?ワサビ持ってったら聞かれたんだ。
 ほれ今、都会から買いに来れねえし、宅配便でって言われても電話応対面倒だし、間違えるしってさ。」
「良いよ。今度連れてって。」
「俺のオフロードの軽バンを使え。俺は軽トラで行くから。」
「え~私が運転するの~。っで直売所の誰を訪ねるの?」
「所長か、事務のおばはん。……つっても俺の同級生。爆乳の美魔女。出戻り。こぶつき。田舎には勿体無い美人。お前と良い勝負。」
「良い勝負かぁ~、、、若い分だけ私の勝ちって事で。」
「ハハハハハ。」
「そうかぁ、、、私が戻んなくても良いのは、その人狙ってるんだ~、、、あんた。」
「バーカ。」

「なあ、わさびの葉っぱ、なに出来る?」
「葉っぱ?、、、硬いよねぇ、、、お漬物、佃煮、乾燥させて細かくしてふりかけ、、、」
「……普通だな。」
「しょうがないじゃん!引き出し少ないんだもんっ!」
「例えばさあ、、、わさびのスムージーとか、わさびのパフェ、インスタ映えするわさびタルトとか。」
「…欲しくない、、、」
「もっと飛べよ。お前。普通じゃん、それじゃあさあ~、、、薬、飲んでねえんだろう?」
「飲んでないよ。捨てて来たもん。」
「……元々、普通だったりして、、、お前の今。」
「そうかもしれない、、、思ってた。」
「って事は、お前の周りに居た奴らがおかしかったってか?」
「えっ、おかしな仲間が集まって、それが普通って言ってた訳?」
「そっ。……う~ん、何かの宗教みてえだな。そいつらが信者で、教祖がいて、異端児がお前で迫害してたと言う、、、三流映画みたいな。」
「宗教?、、、何教?、、、セレブ教?、、、上級国民の会?、、、アハっ、ハハハ。」
「上級国民の教祖と言えば、、、元院長?」
「イケないんだっ!そういうこと言っちゃっ!」
「お前は小学生か?」

「ねえ、働きに行って良い?」
「何?仕事か?何するんだ?」
「英会話。直売所の人に聞かれたの。英語出来るの?って。出来るよ、中学の教員免許もあるよって言ったら、教室、持ってって。」
「へえ~英語の先生ね~、、、やってみれば。」
「取り敢えずねぇ、週二日の夕方と土曜日。コミュニティーセンターの研修室、借りてやってみるの。」
「さすが、元お嬢様。教育だけは受けてらっしゃったのね。」
「何よ!教育だけはって。」
「生き方とか人との付き合い方を学べば良かったのにねぇ~」
「それは、今からしますっ!」
「人間嫌いじゃなかったっけ~?」
「人によるのっ。多分、、、ここの人、良い人ばっかり。」
「良かったねぇ~、おかしな人達と縁が切れて、良い人と縁が繋げて、、、」
「はい。おかげ様で。」
「じゃ、里への道、広くしようか?山削って。」
「……広くするって、、、あんたがするの?」
「ああ、するよ。ユンボ借りてくるよ。」
「出来んの?、、、何で?」
「色んなことして生きてきましたからねぇ~、それにこの山の中じゃ全部出来ないとねぇ、、、生きていけませんから。」
「はあ~、あんたの方がぶっ飛んでたのねぇ、、、」
「ハハハハハ、面白いでしょう?」
「うんっ!すっごい面白いっ!」

#2000字のドラマ

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