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広島協奏曲 VOL.2 尾道・流れ星 (9)


クリスマスプレゼント

10月11月と、村上が尾道に帰る日を選び雅恵から連絡し、居酒屋で酒を酌み交わした。

「ようよう見ると、まーちゃんは美人じゃのぉ~。」
「パッと見はブス?。」
「ガハハハ、、いや、いや。ブスじゃなぁでぇ~。ワシみたいに、、、。」
「ゴンちゃんもええ男よ。髭さえ剃って髪の毛も切りゃ~ね~。可愛い目をしとるし。」
「ははっ、散発行く暇が無ぁのぉ~。結構すりゃまだイけるきゃぁ~。」
「イケる。イケるっ。」
慰めあいの様な会話だ。
「ところで、服とか靴とか何処で買よ~るん?。」雅恵が聞く。身長はあまり高くないものの、肩幅や胸板の厚い村上は、既製服がきつそうに思えた。
「大阪行った時に大きい服専門店でのっ。昔からの馴染みよ。」
「ええねぇ~。女もんなんか、この辺じゃ、なかなか無いんよね、大きなサイズ。あっちって女物もあるん?。……今度、連れてってや!。」
「ええで。女もんも有るし、連れてっちゃろぅ。」
「やったぁ!。頼んだね。」
「おお。任せとけ。……そういやぁ、男もんのスニーカー履いとるんじゃのぉ。……靴、サイズなんぼ?」
「26.5センチ。大きいじゃろ。普段は男もんばっかし。革靴は通販。おしゃれ用が無いんよねぇ~。」
「神戸にゃ、靴専門店がいっぱい有るし、知っとる靴屋もあるし、多分、有ろうてぇ~。」
「ほいじゃ、神戸と大阪。決まりじゃね。」
「はは、ほうじゃのぉ。」
【……お泊り旅行になるんかね?。…ま、良えよね。】

【ゴンちゃんは、イケメンじゃなあけど良え男よね、、、頭がバリバリ良え訳じゃなあけど、なんか賢そうな人な気がする、、、傍におったらドキドキする人じゃなあけど、安心するし、、、一緒に住んだら、帰ってくるのを待てる人よね、、、必ず、帰ってくれそうな気がする。……どしてぇか分からんけど、、、】

神戸、大阪旅行も出来ないまま12月になる。
雅恵が村上にLINEで聞いても”行ける時がよう判らん。すまん。”や、”空く時、連絡する”位の返事しか帰って来ない。
忙しそうだ。募集しても人が来ないとも言っていた。頼まれたら断れない人なんだ。と雅恵は自分に言い聞かせた。

【クリスマス。どうするかねぇ~。イブはうちの誕生日でもあるんじゃけどねぇ~。ゴンちゃんには言うとらんけど、、、。】
12月中旬のある夜、村上にLINEした。
”24日、尾道に居る?”
”クリスマスイブ、パーティーしよ。”
”プレゼントもあるよ。”
返事は翌日早朝、”いいよ。多分帰れる”のみだった。
【帰ってこれんかも知れんのんかぁ~、、、でも準備だけはしとかんとね。】
大学からの友人、明子には彼氏がいる。普段の何も無い時には会えるが、イベントは無理。

数日後、自販機で暖かい紅茶を買い飲んでいると、
「あ、毛利さん。ちょっと良いかな?」と背後から声が。富田だった。
「……ハイ。何ですか?。」少しびっくりして答えた。
「あの、、、イブは何か予定有るの?」
「……えっ。……一応、友達とパーティーを、、、。」
「あ、そう。……いや、特に何って事じゃ無いんだけど、聞いてみただけだ。ごめん、気にしないでね、じゃ。」
と言って、事務所に上がる階段の方へ富田は去っていった。
【……何っ?。予定が無かったら誘ってくれるんだったん?……ちょっと嬉しい、、、ってゆうか都合がええねぇ~所長さん。
 ゴンちゃんと約束してなかったら、所長と?、、、どっち?、ゴンちゃん?、所長?、、、雅恵、、、】
村上とは縁がないかもしれないと思う時もあるのは確か。
雅恵は妄想の中で答えを出そうと暫く考えていた。答えは出るはずも無く、イブの日は近づいてきた。

22日の朝、村上からLINEが来ていた。
”ごめん帰れんようなった。”
”神戸からその足で北陸と東京へ向かう”
”すまんいつか埋め合わせする”
【……やっぱり、、、。そんな気がしとったわ。
 ……所長へゆうてみる?、イブ空きましたって。……ゴンちゃんに悪い?。でも、まだそんな関係じゃなあし、、、。
 ……まっ、いいか。今年もぼっちクリで。3年連続じゃね。……慣れてしもうたわ、、、。

24日イブ当日、土曜日で朝から雅恵は自宅。
昨日金曜日、帰宅すると宅配便の不在票が有ったので即、サイトから再配達を翌日午前中と入力した。
9時過ぎ、宅配便が届いた。大きな、そして丈夫そうな光沢のある紙袋。発送元が見たことの無いカタカナ名のお店。住所は兵庫県神戸市。
【……何?、うち何も頼んどらんよぉ。間違いじゃったらどうしょ。】宛名は雅恵であり、住所もここの住所だ。
思い切って開けてみた。箱が二つ入っていた。箱も高級そうな化粧箱だった。
一つ開けてみた。黒いフォーマルシューズが入っていた。Size 8.5の文字がタグに見えた。
【……誰が送ってくれたん?……もしかして、ゴンちゃん?。】
もう一つの箱を開けてみた。薄い水色のドレスシューズだった。Size 8.5だった。
【……やっぱり、ゴンちゃんじゃ。これってプレゼント?。、、、何か、高そうじゃけど、、、。】
履いてみた。少しきついが履き慣れれば、大丈夫そうだ。少しずつ嬉しくなってきた。
村上へLINEを送った。
”プレゼント着た。ありがと。” 動くキャラクター付きで送った。
【……じゃが、こういうのはうちが選ばにゃ意味無いがね~、、、色々見て選ぶんが楽しいのに、、、。】
【……もしかして、ゴンちゃん、店に入って買うたん?。……店の人に何、言うたんじゃろか。……サイズ言うて選んでもろたんかねぇ。】
その時の様子を想像し、雅恵はくすくす笑った。嬉しい様な、ちょっと不機嫌で。


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