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10年ぶりに京都のカフェコチでキッシュを食べた話
窓辺にカウンター席があって、一人で気兼ねなく長居できる。それから、コーヒーとサラダ付きのランチが美味しい。
それだけでもう、大学生一人で訪れるカフェとしては、はなまる合格。
けれど、その店にあるのはそれだけじゃない。
まず入り口が素敵。
スペインの街角みたいな白い壁に、植物と、それからカフェメニューの黒板の深緑色のコントラスト。
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板張りの階段を上った先にある扉を、キィーっと開ける。薄暗い勘定台を抜けると、通された奥の大きな窓からは光が注ぐ。京都の街は高い建物なんてないし、二階でも十分空が近い。
ガラスケースの中に並ぶパンを眺めながら、歩みを進める。古い小説や雑誌、漫画、さまざまな本が迎えてくれる。学生時代に手に取った本がいくつもありそうな懐かしい雰囲気。
それから、レトロな色合いの布張り、革張りの1人掛けソファが贅沢にいくつも置かれている。
店員さんは直接何も言わない。
けれど、お店の雰囲気が、「ゆっくり、好きに寛いでください」と言ってもらえているようで、安心する。
まったく、ここにはありとあらゆる時間があった。
読書の時間も、
久しぶりに会った友人とのお喋りの時間も、
映画が始まるまでの待ち時間も、
胃を満たすための食事の時間も、
カフェ巡りの一つの時間も、
窓の外を見てぼーっとする時間も。
誰が、いつ行ってもいい。
日常も、非日常もそのまんま受け入れてくれる、
そんな場所だった。
10年以上たって、再び訪れても、
全く変わっていなかった。
帰省した私は夫と、お花見帰りの腹ごしらえに。
隣の席では、男子学生が就活の話をしている。
前の席では、おじいちゃんとおばあちゃんとその娘らしき人が食事を静かに楽しんでいる。おばあちゃんは、やってきたフレンチトーストにニコニコが止まらない様子。
窓辺のカウンターには、それぞれ一人でやってきた女性が3人。スマホを眺めたり、読書をしたり。
思い思いの時間を過ごしている。
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メニューを眺めながら、訪れた日に思いを馳せる。
沢山のメニューがあって、目移りする中、なんとなく慣れている様子を装いたくて、ランチメニューの一番上の「キッシュ」を頼んだ。キッシュってなんだろって思いながら。
運ばれてきたケーキのようなオムレツのような、それを、初めて食べたとき。
あまりに美味しくて!以降は毎回ガラスケースのパンと迷いつつ、キッシュを選んでいた。キッシュだけで言うなら、ここが私のふるさとの味だ。
今回訪れた時も、黒板にキッシュがあって嬉しかった。パン・サラダ付き780円。飲み物つけてもプラス100円。学生にも優しい価格設定。変わってないな。
一口食べて、コレコレ!この味!
ふんわり優しい卵と、サクサク香ばしいデニッシュ生地。
10年経っても変わらぬ味に、驚いた。キッシュばかりじゃない。添えてあるサラダも、柑橘系の酸味が効いた懐かしい味だった。
通っていたカフェのほとんどは閉店し、いくつかは改装し、京都の中心部は随分様子が変わってしまったのに、ここだけ時間が止まっていたのかと思うほどだ。
京都の街は、古いものがずっと残っていると思われがちだけれど、意外と入れ替わりが激しい。京都の人は新しいものが好きだし、近年は観光客向けのお店がどんどん参入しては、根付かずに消えていく。
良いものだけが、地元の人に愛され続け、観光客にもその雰囲気が好かれて、残っていく。
ここはたしかにそういう場所だな、と思った。
また訪れたい。
●カフェ コチ/京都市役所前
※2022年4月1日より休業されているようです(2022.4.8追記)
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