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住野よる『よるのばけもの』

住野よるさんの『よるのばけもの』を読みました。

お恥ずかしい話ですが、わたしは住野よるさんの作品を読んだことがありませんでした。読みたいなぁと思いつつ、気付いたら時が過ぎていました。

なんとなく青春小説のイメージ。どれから読もうかなとあれこれ迷った結果、noteで紹介されていたこの作品が気になり読んでみることにしました。

『よるのばけもの』は心が苦しくなるお話でした。中学生の微妙な感情がリアルに描かれていて、自分自身も学生時代に感じていたもやもやとした空気感を思い出してしまうんです。読みながら心の奥底がヒリヒリしました。

主人公である中学生の安達は夜になると化け物になってしまいます。

ん?ファンタジーなの?と最初から驚かされます。6つの足と8つの目を持つ化け物。想像しただけで震えてしまいますよね。

ある日、学校に数学の宿題を忘れてきたことを思い出した安達は化け物の姿のまま夜の学校に忍び込みます。するとそこにはクラスメイト全員から無視されている矢野さつきの姿がありました。

彼女は驚きますが、化け物が安達であることを見抜いてしまいます。その日から夜の学校で過ごす2人だけの夜休みが始まりました。

化け物になっているとき、安達は自分のことを僕と言い、矢野さんと呼ぶ。それに対して人間のとき、自分のことを俺と言い、矢野と呼びます。

一体、どちらが本当の安達なのだろう。そんなことを思いながら読み進めていくと、次第に安達自身も「正しさ」や「本当の自分」について考え始めます。

ラストで安達が起こした行動は凄いなぁと思いました。(ネタバレになってしまうので言えませんすみません)もしもわたしが同じような立場だったら出来ないです。多分。

しかしよく考えてみるとそれは特別なことではなくて、本来なら当たり前にあるべきことで。そう思った瞬間、悲しみが押し寄せてきました。

昼の学校で矢野が起こした行動は正しいものではないかもしれない。でも、夜の学校で矢野が好きなものや洞察力の鋭さ、抱えている恐怖に触れたとき、最初に抱いた印象がわたしのなかでも変わり始めました。

ラストで安達が抱いた望みが叶うといいな。少しずつ広がっていきますように。そう静かに祈りたくなるようなお話でした。

中高生がこの作品を読んだらどんな感想を抱くのだろうと少し気になります。また住野よるさんの作品を読んでみたいと思いました。

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