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冬野が書いた小説・随筆

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オリジナル小説。私小説よりのものが多いです。 加えて、リリースした商業小説についても。
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小説『共感覚の記憶』

小説『共感覚の記憶』

「冬の夜の匂いが好き」

 小学生の時、同級生がそう言った。
 それを聞いて、屈託もなく返事をしたのを覚えている。

「私も好き」

 あれからもう何年も経って、常に変わらないと思っていた季節の移り変わりが、どんどんおかしくなっていって、肉体が耐えられないような夏。
 意識が霞むほどの暑さの中で気付いた。
 その匂いがすぐ思い出せない。
 確かにそう言ったのは、記憶にあるのに。

 中学生の時はし

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