purr
ひざの猫とヱビスを流し込む僕がなかよくのどを鳴らす食卓
猫がのどを鳴らすことを、英語で「purr」というらしい。
発音は多分「パー」だ。
少なくとも僕はそう発音しているけれど、確かではない。
イスに座ると、猫はすかさずひざに乗り、丸くなり、のどを鳴らし、いかにも質のよさそうな眠りに落ちていく。この一連の流れはあくまでも淀みなく、心地いい。
この世で一番好きな音は、猫が鳴らすのどの音だ。(「この世で一番」は、さすがに言いすぎな気がして自問してみたけれど、問題なかった)
「鳴らす」というよりも、無自覚のうちに「鳴ってしまっている」感じが好きなのかもしれない。(実際に無自覚なのかどうかは知らない)
しかも上機嫌なときに鳴ってしまうなんて。
なんだよ、そのうかつさは。
僕に足りないのは、このうかつさではないか、とも思う。
ちまちまと周到に予防線を張るのが得意な僕は、もっとうかつであるべきだ。ない知恵を絞らないことだ。起きていないことに臆病過ぎないことだ。
……などと考えていたら、いつの間にかのどの音が寝息に変わっていた。そっと背中をなでてやると、またすぐにのどを鳴らし始めた。
……という文章を書いていて、確認のために「purr」という単語を調べた。「purr」には「満足そうな調子で話す」という意味もあるらしい。
猫のことを話しているときの僕は、「purr」なのかもしれない。
発音は多分「パー」だ。
少なくとも僕はそう発音しているけれど、確かではない。
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そんなそんな。