自分の身体と向き合うこと

ここ10年ほど、風邪を引かなくなった。

それまでは季節の変わり目や疲れがたまるとすぐ、感染症に罹っていた。子供の頃から扁桃腺が大きくて、まず咽にくる。あ…やばいな、なんか咽が痛いな…と感じたらもうアウト。市販の風邪薬は効かない。扁桃炎を拗らし、高熱が出て一週間は寝込む。本当に嫌だった。自分の体質というものが。「大人になれば扁桃腺も小さくなるよ」とよく聞いたけれど、私のはしぶとかった。40代まで全くその勢いは止まらなかった。なんか他に役立つことがあるなら大いに歓迎するけれど、扁桃腺の勢いなんてのはいらんやろ。あの塊がエネルギーをチャージできるバッテリーだったらどんなにか無敵だったろうと。持ち主にとって全く無駄に元気だった私のムダな扁桃腺。

それが、ここ10年ウソのように小さくなった。そしてそれと共に風邪を引きにくくなった。「 あ、これなんかヤバイかも…?」と思ったらすぐに葛根湯を飲み、市販の風邪薬を2日か3日も飲めば治ってしまう。(私の場合だいたい風邪の引き始めは異常な肩こりからくる。疲れがたまっているというサインだ。血液の流れが悪くなり、末端が冷えてきて免疫力が低下してウイルス感染し、熱を出すというパターンだった。そう、10年前までは。) 市販の風邪薬ってちゃんと効くんだな、ということをここ10年でようやく体感した。それまではあんなに全く効かないもの、なんでみんな飲むんだろう?と不思議に思っていたのだ。

10年前までは常に病院で処方された抗生剤を持ち歩いていた。前回罹った時の残りを1~2個、キープしておいて、(抗生剤は決まった分量を最後まで飲みきらないといけないため、それを飲みきる前に再受診し、「まだ治らないからもう少し薬出してください」ともらっておく。大抵ワンクールでは治まらない。) それを咽が痛いと感じたら即刻飲む。そして病院へ。ほんとは自己判断で飲んだらダメなんだけどね。

「ちょっと咽が赤いねぇ。とりあえずこれで様子をみて」と総合感冒薬など処方されようものなら断固固辞し、医師にこれまでの私の風邪パターンの経緯を説明する。絶対これから熱が出る。そしてガンガンに扁桃腺が腫れる。わかってるのは自分だけだから、ここで医師に食い下がり、言い分を押し通さなければいけない。そして抗生剤と解熱剤をゲットしてくるという寸法だ。

それがなぜがここ10年ないのだ。年とともに体質は変わるとは言うけれど、それだけではないと確信している。それはなぜか。スバリ、ストレスとの関係性だ。

「病は気から」というのは本当で、我が身をもってそれが証明されたと思っている。今から12年前、私は二度目の離婚をした。そこからのストレスフリーの生活は私の身体に大きく影響を及ぼした。( ただし、離婚後の一年間はPTSDに悩まされたため体調は芳しくはなかった。それもかなりのストレスになっていたと思うと、離婚から2年くらい経ってようやくストレスフリー状態になったと言えるかもしれない。)

一番ストレスがかかっていたのは離婚する直前の2年間だった。心労で食べられなくなり体重がみるみる落ちた。手足は常に痺れ、顔面がピリピリと痙攣した。常に咽に違和感 ( 締め付けられるような感覚や咽の奥の壁面にデキモノができているような感触 ) があり、目眩や貧血がひどく、夜は眠れない。しかし病院へ行く時間もお金も気力もなく、眠れない夜は家にあった精神安定剤と鎮痛剤を併用していた。このままどうなってしまうのだろうと自分で自分の身体を信用できなくなっていた。それよりなにより、自分の身体を心配している暇がなかった。離婚への準備と離婚後の生活を立てるための就活で物凄く忙しかった。自分の身体まで気にかけている余裕など微塵もなかったのだ。病気だろうがなんだろうがどうでもいい、どうにでもなれ、そんな感じだった。

なのでしょっちゅう具合が悪くなり、風邪を拗らせた。今から思えば、よくもったなぁと思う。若さは身を助く、というところか。まぁ、もうそんに若くもなかったけれど。

晴れて離婚が成立し、子供たちとの新しい生活になって変わったこと。それはズバリ、「笑うことが圧倒的に増えた」こと。笑うと言ってもウフフとかアハハではない。ガハハハハ❗️という大笑いだ。子供たちとの会話が、以前とは比べ物にならないくらい増えた。離婚後、狭いマンションに引っ越したこともあるが、ウチの中は常にオープン、3人がいつもそばにいる感覚でお互いの「嬉しい」や「楽しい」や「美味しい」を共有化することが増えた。

笑うとこは「ナチュラルキラー細胞」を増やし、免疫力を高めると聞いたことがあるけれど、あれはまさしく本当だと思う。


しかしながら年齢には逆らえず、50を過ぎた辺りから体力的にガクンと衰えを感じることが増えた。更年期に入って肩こりも一層酷い。自分で何ができるかを考え、以前から細々と続けているヨガに再度真剣に取り組みだした。食べるのもにも気を付けて、夜は極力糖質を控えている。私には白米よりもパンの方が合っているようで、朝は必ずカフェオレとサラダと卵と果物入りのヨーグルトとパンを食べる。昼もサンドイッチが多い。お米は日本人の体質に合っていて欠かせないと思っていたけれど、50を過ぎた辺りからほとんど食べなくなった。きっと人それぞれに食材の向き不向きはあるのだろう。

思い込みや世間一般の常識を捨てて何が自分の身体に合っているか、何が必要で何が不要かを把握すると、体調も良い状態をキープできるように思う。そして精神的にもとても安定する。私に欠かせないのは野菜、たんぱく質、少しの糖質、そしてワイン。

別に気取っているわけではなく、日本酒やビールやウイスキーなどあらゆるアルコールの中でも一番ワインが身体に合うのだと思う。ベリー系の果物が大好きだからかもしれない。「美味しい」という感覚はどんな種類のお酒にもあるけれど、私にはワインを飲んだときにしか得られない特別な「幸福感」が脳内の何かに作用しているような気がする。そう思って飲むから余計に美味しく感じるのだろうけれど。

いや、お酒の話ではない。話をもとに戻そう。ついつい好きなものの話は深掘りしたくなる。そうではなくて、身体のこと。ここ数年はいわゆる更年期の症状に色々と翻弄されている。

まず感じたのは先程も述べた肩こり。そのこり方の加減が尋常ではない。ちょっとスマホやiPadや本に集中しようものなら、首はゴリゴリと音を立て、肩は岩山と化す。なんなんだこの固まり方は。湿布やマッサージなどほとんど効かない。元々こり性ではあったけれど、ここ数年のこり方は「誰か肩に乗ってます?お祓い行ったほうがいいですか?」ぐらいのヤバさ。ストレッチやヨガで朝晩ほぐしてはいるが、なかなかよくはならない。自分でできる対処法としては、ビタミン剤や更年期障害用の市販の漢方薬を飲んでいる。それと肩こりには葛根湯。

他にも様々な症状に悩まされている。味覚障害というのか、舌が痺れたような感覚が気になって調べたことがある。更年期の女性特有の症状らしい。何がきっかけという訳ではなく、気がついたら痺れていた。そして舌先で感じる辛味にとても敏感になっている。辛いを通り越して痛いかんじ。ここ数年ドライマウス気味で、特に夜中に咽がカラカラになって目が覚める。うがいをして水を飲むのだがそれでもカラカラ。耳鼻咽喉科で診てもらったが、専門外だから分かりませんと言われた。ネットで検索して対処法を調べようとしたが、最後には「あまり神経質にならないこと」と書かれていた。要するに気にするなってこと。

私は正直者で素直な性格なのでネットで調べた答えの通り、気にしないことにした。多少の違和感や以前ほどに食物の美味しさは感じないというのは残念だが、病気じゃないし(多分ね)そのことにイライラしたり常に「なんでだろう、どうすればいいのだろう」と囚われていることに嫌気がさした。首の違和感や咽の異物感も更年期にありがちな症状らしく、これもまた「気にしない」しかやりようがない。

そして私の唯一の楽しみと言ってもいい、毎晩の晩酌のワインでさえも、明らかに以前のような味わいを楽しめないのは事実だが、嘆いていても仕方ない。なにより不思議なのが、例えば大切な友達や好きな人と、楽しくお喋りしながらのランチや外での飲み会の時は、その違和感など全然気にならずに以前と同じように「美味しい!」と感じるのだから面白いなと思う。これは本当に不思議な現象だ。

気にしだすとどんどん気になる。きっと酷い人は鬱になったり引きこもりになったりするのだろう。実際にそうなった知り合いも一人や二人ではない。何年もその状態で苦しんだと聞くと空恐ろしく、他人事ではない。

いかに日常的な身体の不調を自分なりに上手くやり過ごすか。そしてどのようにそれらの症状と共存するか。それはこの2年間、禍の中でたくさんのことを制限されてきた状況にもどこか通じるものがある。できなくなったことに対しても気のもちようで、悲観しているより例えば他に楽しめることを探す。気を逸らす。そしてクヨクヨしない。いつかは終わるだろうと気長に構える。そう、“ 期限を設けない “というのはとても大事かもしれない。いつまでにとか、あと何年頑張らなければと決めてしまうと余計に焦ったり落ち込んだりするもので。なるべく気にせず、「 気づいたら終わってた 」というのが理想的なのではないかな。

とにかく気にしない。鷹揚に構える。これは色んな経験を踏まえた上で今の私に言えること。そして自分の身体と真摯に向き合って、その都度相談しながら少しでも気分よく過ごせる方法を探していきたいなと思うのである。

どう頑張っても年齢は逆戻りはしない。そしてもれなく誰もがいつかはあの世へ行く。それまでの道のりをいかに機嫌よく過ごすか。それに尽きるのではないだろうか。とにかく好きなことをして、ストレスなく過ごす。これが一番大事だと思う今日この頃。

この今生の期間限定の着ぐるみを、最期まで愛おしく扱い、最大限楽しみ、味わい尽くしていきましょうや。と、自分自身に言い聞かせている。


*あくまでも個人的な経験と考えで書いた文章ですので、全ての人に当てはまるものではありません。ご了承ください。


#体質 #更年期 #不調 #身体 #気にしない #楽しみ #ストレス









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?