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【授業・研修のレシピ】セミナーではオペレーターが必要

オンラインにおけるセミナーの運営では、講師のほかにオペレーターをおくことをお勧めします。オペレーターとは、対面セミナーでいう「会場係」を指します。オンラインセミナーの場合、アプリケーションの設定や操作などテクニカルな部分はオペレーターに任せることにより、講師はセミナーに注力できるとともに、参加者のサポートがよりスムーズになります。これまで実施してきたオンラインセミナーの経験を踏まえてご紹介します。

オペレーターの役割

オペレーターの役割はセミナー時間や参加者の人数によっても異なりますが、主に事前準備、セミナー当日の運営、参加者のサポート、セミナー後の対応を行います。

●事前準備
・セミナーの告知(オンラインで受講するための要件も提示)
・参加申込対応、グループ分け
・事前課題の周知と取りまとめ
・アプリケーション、会議室(リンク作成)・機材の準備
・当日のスケジュール、参加方法、会議室(リンク)などを送付
・当日と同じ環境で講師とリハーサル(画面共有、音声、ビデオ)

●セミナー当日の運営
・アプリケーションの操作(ホスト)
・講師を共同ホストに設定
・講師の画面共有、音声、ビデオの事前テスト
・ブレイクアウトセッション(グループ)の設定
・講師のインターネット回線の不具合時に対応(事前に講義資料を受け取っておき、代わりに画面共有するなど)
・チャット、投票の管理
・参加者受付(ログイン)、出席確認
・アンケート実施(チャットにアンケートのリンクを提示)
・チャットや投票のデータ保存

●参加者のサポート
・会議室のログイン
・ツールの使い方の説明
・テクニカルな質問に対する対応
・メインルームからブレイクアウトセッションへの移動
・インターネット回線が不安定な参加者のサポート

●セミナー後の対応
・チャットや投票のデータを講師に送付
・アンケートデータの取りまとめ
・事後課題の周知を取りまとめ

基本的な項目だけでも、多くの役割を担う必要があります。また、対面セミナーの会場係とは役割が異なるといこともイメージしていただけたのではないでしょうか。講師も参加者も安心してセミナーに臨めるようにするためにも、オペレーターは不可欠でしょう。

配信チェックリスト(Zoomの場合)

オンラインセミナーで、オペレーターはホストの役割を担います。十分リハーサルを行い、当日に備えるようにします。リハーサルは、セミナーの10日〜1週間前、セミナー当日(1時間〜30分前まで)に行うことをお勧めします。

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セミナーで困ったときの対処方法

相手の反応がわからないので講義しにくい
オンラインセミナーでは、物理的に同じ空間にいないため、相手の反応が読み取りにくくなります。一方で、ビデオをオンにすれば様子がわかるのかといったら必ずしもそうではありません。ビデオをオンにしたとしても、数名の参加者の顔しか確認することはできません。反応がないと話しにくいと感じる場合、以下のツールを活用するとよいでしょう。
 ・チャット
 ・アンケート
 ・投票
 ・反応機能

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どうしても一方向で話をしてしまう
講師は一生懸命伝えようとしていると、つい話が長くなりがちになります。しかし、伝えるだけで参加者の記憶に残らなければ、現場での実践に活かすことはできません。参加者が主体的に参加できるように設計を見直すとよいでしょう。
 ・マイクロフォーマットになっているか確認する
 ・短いリフレクションを取り入れる
 ・活動(グループワーク、対話)を入れる

配布資料を印刷して配布できない
PDFで資料を用意し、Googleドライブなどのフォルダにアップロードしてリンクを提供すると便利です。このとき、大量の資料をプリントアウトができない、複数枚のスライドを1ページにして印刷することができない参加者がいることに考慮する必要があります。配布資料は用紙1枚あたり4〜8スライドにしてPFD化するなど、少しでも印刷枚数が減るように配慮します。

時間通りに進められるか心配
講習会が時間通りに進んでいるか確認するために、実施計画をプリントアウトして手元に置いておくようにします。加えて、時計とタイマーをみやすい位置に設置し、講習会の流れと時間が一目でわかるようにするとよいでしょう。またワークは想定よりも時間がかかることがあります。余裕をもって時間を設定しておくことにより、臨機応変に対応することができます。

図1

使ったことのないアプリケーションで講義を依頼されたので自信がない
テクニカルな部分はオペレーターに任せられるか確認したうえで依頼を受けるようにします。その際、使い慣れているアプリケーションとの類似点、相違点、予定しているワークや投票などを行うことができるか確認します。その上で、使い方に慣れるための練習やリハーサルを事前に行うようにします。

予期せぬトラブルに対応できるか不安
オンラインセミナーの場合、物理的に異なる空間にいるため、トラブルが起きたときは自力で対応しなければなりません。そのとき迅速に対応するためにも、バックアップを用意します。講師は2台のパソコンでログインして、メインのパソコンで不具合が生じた際には、2台目のパソコンへ切り替えるようにします。また、Zoomのアプリケーションやウイルスソフトウェアが古いバージョンの場合、画面共有がうまくいかないなどのトラブルが起こる可能性があります。ソフトウェア類が最新のものになっているか、常に確認が必要です。

図2

参加者の理解度が把握できない
ビデオをONにするなど、視覚情報で理解度を把握するには限界があります。オンラインで使えるツールを用いて講義の途中(目安は8分ごと)で理解度を把握するとよいでしょう。短い質問を用意してアンケートに回答してもらい、理解できている部分とそうでない部分を明確にします。その場で補足説明をすることによって、参加者が途中でついていけないといった事態を回避することができます。

ブレイクアウトセッションでワークの進行具合が把握できない
グループワークの進行を把握するためには、第3章で紹介した「手書きツールの活用」をお勧めします。各グループのシートを確認・巡回することにより、グループに入らなくても進行具合を確認することが可能です。

図3

ブレイクアウトセッションでワークが進まない
参加者が必ずしもオンラインセミナーに慣れているとは限りません。ブレイクアウトセッションに入るまえには、グループでどのような活動をするのか、より具体的に説明するようにします。また口頭の説明だけではなく、配布資料にもワークの進め方を示しておきます。
また、個々の考えがまとまらないうちにワークに入ると、対話が進まなくなる場合があります。事前に個人で考える時間を設けてからブレイクアウトセッションを始めるのもポイントの一つです。

『グループに分かれてワークを行います。テーマは〇〇です。グループに入ったらリーダーを決めていただきます。リーダーはxxxxxの人です。ワークの時間は8分です。yy時zz分に終了となります。ワークの進め方など困るようなことがあれば「ヘルプ」を求めてください。』

研修ガイドブック_図表

参加者のインターネット環境が心配
参加者の中には、インターネット回線が不安定で途中で通信が途切れてしまう方もいます。こうしたトラブルが起きたとき対応できるように「トラブルシューティング」を事前に配布しておきます。緊急連絡先を明記しておくことによって、参加者は不測の事態にも落ち着いて対処することができます。また、オンラインセミナーに不慣れで不安を抱いている参加者には、事前に接続テストを行う機会を設けるとよいでしょう。

準備しているツールを参加者がうまく使えるか不安
ツールの基本的な使い方は配布資料などで事前に伝えておくことによって、スムーズにセミナーを進めることができます。Googleドライブを併用するときには、事前にリンクを知らせて、ログインできるか確認してもらうようにします。また、オリエンテーションではセミナーで使用するツールを紹介しつつ、アクティビティに参加してもらうという方法もあります。
『〇〇について考えていただく時間を60秒とります。チャットは一斉に送信してもらいますので、書き込んだら送信ボタンを押さずに待っていてください。』
『xxxについてどう考えますか?30秒後に合図をしたら。反応ボタンの「はい」「いいえ」を押していただきます』

スマートフォンやタブレットで受講する参加がいる
スマートフォンやタブレットの場合、アプリケーションのすべての機能が使えるとは限りません。また、画面やボタンの見え方や操作方法が異なることがあります。事前準備では、パソコン、スマートフォンなどあらゆるデバイスでログインして、想定しているワークが実施できるのか確認します。さらに、投票、チャット、反応機能など質問があった場合に、いずれのデバイスについても説明できるように事前に確認しておきます。
とくに、Googleドライブは、スマートフォンで参加している場合、うまく書き込みができない場合があります。そうしたケースも考慮して『グループの中で書き込みができない方がいたら、他のメンバーが代わりに入力の手助けをしてください』など周知しておくとよいでしょう。

チャットの質問をどう取りまとめて答えたらいいのかわからない
オンラインセミナーでは、質問をチャットで受け付けることが多いです。一方で、ワークでもチャットを利用していると、質問が埋もれてしまう可能性があります。こうした事態を避けるためにも、チャットの質問の取りまとめはオペレーターが担当するとよいでしょう。回答をGoogleスライドにまとめて講師を共有すると便利です。質疑応答では、スライドを画面共有することによって、参加者もどのような質問に答えているのかわかりやすくなります。テクニカルな質問については、適宜オペレーターが対応するとよいでしょう。

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