すぎうらまゆみ

北海道大学高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター所属。博士(人間科学)(早稲…

すぎうらまゆみ

北海道大学高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター所属。博士(人間科学)(早稲田大学)。専門は,教育工学,インストラクショナルデザイン,医学・看護教育。全国で医療従事者向けのセミナーや研究カフェなどを開催している。https://www.asunaro-juku.com

マガジン

  • 教える技術オンライン研究会(OGOK 2023A)

    • 13本

    教える技術オンライン研究会は、Zoomによるオンライン研究会です。研究会では、教える技術に関連した研究を中心にして、以下のような活動の場を提供します。 * 研究スキルについてのチュートリアル * 最近の研究トピックや研究動向の共有 * メンバーの研究についての議論と相談 教える仕事に関わっている人を対象に、自分の仕事をより専門化したい人、教えることを研究してより良いものにしたい人のための研究会です。

  • 授業・研修のレシピ

    授業や研修で ”教える人” はその分野の知識やスキルを十分にもっているでしょう。しかし,なんだかうまく教えられない,伝わらないということがあるのではないでしょうか。このマガジンでは,難しい理論はかみくだき,教える場面の味付けに使っていただけそうな「授業・研修のレシピ」をお伝えしていきます。

  • インストラクショナルデザイン 伝わる・身につく“教え方”

最近の記事

【授業・研修のレシピ】セミナーではオペレーターが必要

オンラインにおけるセミナーの運営では、講師のほかにオペレーターをおくことをお勧めします。オペレーターとは、対面セミナーでいう「会場係」を指します。オンラインセミナーの場合、アプリケーションの設定や操作などテクニカルな部分はオペレーターに任せることにより、講師はセミナーに注力できるとともに、参加者のサポートがよりスムーズになります。これまで実施してきたオンラインセミナーの経験を踏まえてご紹介します。 オペレーターの役割 オペレーターの役割はセミナー時間や参加者の人数によっても

    • ゴールの設定:死人テストと具体性テストをクリアする

      誰かに何かを教えるとき、ゴールが「行動レベル」になっているかどうか確かめるために「死人テスト」と「具体性テスト」を用いるという方法があります。 死人テスト 「死人」と聞くと嫌な印象を持ってしまう方が多いかもしれませんが、これは行動分析学の基礎用語です。死人テストとは、『行動は死人にはできないもの』という考えから、死人にもできることは行動とみなさないというテストです。 行動とは「状態」ではなく「否定形」でもありません。「肯定形」で表すというところがポイントです。 たとえば

      • 【寄稿】 eラーニングを活用して教育の効果・効率を高める

        ナーシングビジネス2021年1月号(メディカ出版)に寄稿しました。 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、看護教育は急速にオンライン化が進んでいます。そこで、eラーニングの特徴と活用ノウハウについてご紹介させていただきました。 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、集合研修の開催が難しくなっている中、eラーニングが改めて注目されています。ある施設の看護師長からは、このようなお話を伺いました。 「新人看護師から『eラーニングはスマホで簡単にみることができるから便利』と聞い

        • 【授業・研修のレシピ】 対多人数のオンライン研修を双方向性にする3つのポイント

          COVID-19感染拡大予防のため、研修はオンラインにシフトするというケースが多いのではないでしょうか。また、グループワークや双方向コミュニケーションをどのように実現するのか悩むこともあるでしょう。 今回、ナース向けの「教える技術」研修を、対多人数かつオンラインという新しい形式で実施しました。こうした経験から生まれたオンライン研修を双方向性にする3つのポイントについてご紹介します。 1.研修会場にカメラを設置する研修は、リアルタイムに受講生の反応をみながら進める必要がありま

        【授業・研修のレシピ】セミナーではオペレーターが必要

        マガジン

        • 教える技術オンライン研究会(OGOK 2023A)
          13本
          ¥5,000
        • 授業・研修のレシピ
          13本
        • インストラクショナルデザイン 伝わる・身につく“教え方”
          7本

        記事

          【授業・研修のレシピ】 「教えられ上手」 8つのポイント

          効率的で効果的,そして魅了ある教え方をするためには,「教え方のスキル」を身につけておく必要があります。そのため,この時期には,新入職者を迎える準備として「教え方研修」をいくつか開催しています。しかし,どれだけ教え方がうまい人でも,このような経験をしたことがあるのではないでしょうか。   ・教えやすい人と教えにくい人がいる   ・同じように教えても,相手によって伝わり方が違う   ・教えてもらうことを当たり前だと思っている人がいる   ・教え方が悪いなど,教える側の非難ばかり

          【授業・研修のレシピ】 「教えられ上手」 8つのポイント

          【授業・研修のレシピ】 シネメデュケーションで “プロフェッショナル” のイメージ化を図る

          専門職は「プロフェッショナル」ともいわれます。しかし,医療系の学生たちは,自分たちが目指す医療専門職が「プロフェッショナル」だということ,さらに「高い倫理観」が求められているということをなかなかイメージできません。 今回,全学部を対象として「医療人に求められるプロフェッショナリズム」について講話をする機会がありました。その目的は「将来,医療に携わるものとして必要な高い倫理観を醸成する」というものです。 しかし,与えられた時間は15分。とはいえ一方的な講話では,彼らにプロフェ

          【授業・研修のレシピ】 シネメデュケーションで “プロフェッショナル” のイメージ化を図る

          【授業・研修のレシピ】 アイスブレイクで話しやすい雰囲気をつくる

          先日,札幌医科大学病院キャリア支援センター(6月5日,6月14日),刈谷豊田総合病院(6月26日)にて教育担当者を対象とした研修を3時間のプログラムで開催しました。 今回は研修で実践した「アイスブレイク」についてご紹介します。 研修にも柔軟体操が必要組織内の研修の場合,グループメンバー間で自己紹介はあるものの,部署と名前の紹介のみで,おもむろに研修が始まるというケースが多いのではないでしょうか。初対面同士だったり,普段交流の少ない人たちと集まった場合には「どんな感じの人な

          【授業・研修のレシピ】 アイスブレイクで話しやすい雰囲気をつくる

          【授業・研修のレシピ】ブレンド型授業の設計で “半完成品”を作ってみる

          授業や研修の担当になったら,まずは企画(設計)を考えはじめるのではないでしょうか。どんな目標を設定してどのような内容にするのか,トピックから全体の進め方まで,しっかりと作りこむべく準備を進めていくものです。こうした準備には時間も労力もかかります。なので,全体を企画して全ての教材を作り終えてから ”運用がうまくいかない” ”イメージとは異なる”という事態は避けたいものです。とはいえ,その領域に関する知識が十分にあったとしても,教育の専門家ではない人が教材開発をすることは容易では

          【授業・研修のレシピ】ブレンド型授業の設計で “半完成品”を作ってみる

          【授業・研修のレシピ】反転研修で「教える技術」を身につける

          今年度から,看護師向けの指導者研修は「反転研修」で実践します。反転研修で研修生は,eラーニングでレクチャーによる先行知識を獲得し,対面研修ではグループによる体験学習を中心に行います。 対象者は,大学病院,総合病院などに勤務する中堅看護師です。中堅看護師は部署における中心的な存在であるため,研修で集る時間には限りがあります。そのため,できる限り効率的で効果的な研修を実現する必要があるのです。 なぜ中堅看護師に教える技術が必要なのか 中堅看護師には,質の高い看護実践とともに

          【授業・研修のレシピ】反転研修で「教える技術」を身につける

          【授業・研修のレシピ】反転授業で「リーダーシップ」を学ぶ

          新年度が始まりましたね。今年度から新たに医学部で「新入生セミナー」を担当することになりました。 第2回のトピックは「リーダーシップ」です。 日向野幹也先生の著書「高校生からのリーダーシップ入門」を参考に,授業内容を設計しました。 なぜ医学生がリーダーシップを学ぶ必要があるのか?リーダーシップは「権限のある人が持つべき資質」「選ばれた人が持っている才能」と考えられがちです。しかし,リーダーと言われる人に限らず,チームで活動するときにはメンバー全員が目標を共有し,主体的・自律的

          【授業・研修のレシピ】反転授業で「リーダーシップ」を学ぶ

          【授業・研修のレシピ】覚えにくい数字や文字列を記憶する方法を教える

          学習の場面、とくに試験のときにはしっかりと「覚えること」が重要視されます。しかし、聞き慣れない用語だったり、数字だらけだったりして、なかなか覚えられないということがあるのではないでしょうか。 記憶には「短期記憶」と「長期記憶」がある日常生活では、すぐに忘れてしまってもよい記憶というものがあります。たとえば、知り合いの電話番号を聞いて自分の携帯電話に入力してしまえば、その番号はすぐに忘れてもいいですし、実際はほとんどその場で忘れてしまうでしょう。このような種類の記憶を「短期記

          【授業・研修のレシピ】覚えにくい数字や文字列を記憶する方法を教える

          【授業・研修のレシピ】 身体を使う “運動スキル” は「スモールステップの原則」と「即時フィードバック」で教える

          医学部では,病院で実際に患者と接しながら,医師としての能力を磨いていきます。その臨床実習の開始前に,全国の医学部生を対象に課されるのが「共用試験」です。これをクリアしなければ進級できず,臨床実習に入ることもできないことになっています。その準備の一つとして,先日「静脈血採血」の技術のトレーニングを行いました。 小さなステップを踏んで段階的に教える みなさんは健診などで “採血” を受けたことがあるのではないでしょうか。もし,いきなり採血を「やってみて」と言われたらどうでしょ

          【授業・研修のレシピ】 身体を使う “運動スキル” は「スモールステップの原則」と「即時フィードバック」で教える

          【授業・研修のレシピ】 導入で “ハッとする” 体験を取り入れる

          授業(研修)を企画しよう!と思っても,実際にはどのような方法でどれくらいの時間をかければよいのかわからないということがあるのではないでしょうか? 授業では,限られた時間の中で,講義,グループワーク,ロールプレイ,フィードバックなどを行います。どの順番で行い,それぞれにどのくらいの時間を割り当てるのかということが重要となります。そこで,授業を組み立てるときには,ロバート・ガニエの「9教授事象」のモデルを使うと便利です。これは9つのステップで授業を組み立てるというものです。 授

          【授業・研修のレシピ】 導入で “ハッとする” 体験を取り入れる

          【授業・研修のレシピ】 ゲームの要素を取り入れる

          近年,「ゲーミフィケーション」という用語をよく耳にするのではないでしょうか。ゲーミフィケーションとは,ゲームではないもの,たとえば授業や研修にゲームの要素を取り入れることです。そうすることで,あまり楽しめないものや,続けることが難しいものへのモチベーションを高めることができるというのです。 学生をみていると,ゲームは楽しそうにやっているのに,授業は楽しそうでもないし,集中力も続いていないようにみえます。 そこで,ゲーミフィケーションとまではいかないですが,手軽に使える「トラン

          【授業・研修のレシピ】 ゲームの要素を取り入れる

          【近況報告】札幌医科大学に入職して半年経ちました

          2018年4月から札幌医科大学 医療人育成センター教育開発研究部門で講師として勤務をしています。 もともと名古屋出身で初の県外,しかも北海道ということもあり,仕事のみならず,生活も激変しました。車のない生活もはじめてです。半年が経過し,ようやく仕事にも生活にも慣れてきたので,「ナースのための教える技術」を再開します。 引き続きよろしくお願いいたします。

          【近況報告】札幌医科大学に入職して半年経ちました

          ナースのための“教える技術” 研修の改善に役立つ理論(2)

          前回のnoteで,「研修コースの要素」と「研修設計のロケットモデル」についてご紹介しました。 https://note.mu/s_mayumi/n/n0cdd99c880e8?creator_urlname=s_mayumi 研修コースには,次の6つの要素があります。 ①ニーズ:個人が何らかの技能を習得したいと思うこと,あるいは組織がある個人に何らかの技能を習得させたいと考えていることを示します。ですから,ニーズがなければコースの設計は始まりません。コースを設計するときには

          ナースのための“教える技術” 研修の改善に役立つ理論(2)