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突然の雨も君と一緒なら

昨日、保育園のお迎えに向かう途中、突然ぼたぼたぼたっと音がした。

雨だ、それも大粒。

アスファルトを水玉模様に変えたそれは、あっという間に本降りに変わる。

折り畳み傘忘れたなぁ、だって今日は晴れ予想。
洗濯物だって干してるし。ちょっと聞いてないぞ。

一瞬の夕立ならばどこかで雨宿りすればやり過ごせる。けれどもう保育園の契約終了時間まであと8分。止まっている暇はない。

鞄の中からひっぱり出したタオルハンカチで眼鏡だけ守り、腕に雨粒を感じながら保育園へ向かう。


「止まないか……」

期待しながら息子と園を出たけれど、目の前には滝のような雨。

同じく濡れながらお迎えに来たよそのお母さんと「突然の雨でしたよね!」「こんなの聞いてない!」と廊下ですれ違いざまに話しながら、出る頃には止んでないかなと淡い期待を抱いていたのだが。

玄関先は、2人の子の手を引きながらレインコートを着させたりベビーカーに乗せたりしているお父さん、お利口にお母さんと手をつないで雨宿りしてる子などでいっぱい。

さぁどうしよう。
我が家の防御力はゼロだが。

そこで一切躊躇することなく、てけてけてけっとむすこが屋根の外へ歩み出る。

「わぁーー!ぬれちゃうねぇ!!」

くるりと振り返って満面の笑み。

うむ。

母も覚悟を決めたぞ。

息子と一緒に進み出て、門のロックをはずす。

ざあざあ振りの雨の中、2人して傘もなく。

走るしかない!

と、思う前に既に息子は走り出している。

「わぁ〜!雨だぁ〜〜〜!!」
「雨だねぇ!濡れちゃうねぇ」

「ぬれちゃう〜!」
「雨だから、おうちまではしるよ!」
「うんっ!」

「帰ったらお風呂ね!」
「うん!あははははははは!!」
「ふふっあはははは!」

外は暗くて、すぐにずぶ濡れ。
息子の髪が額に張り付いている。

お互いの顔を時々拭きながら、手を繋いで笑いながら駆け抜けた。

幸い園から家まで徒歩3分。

全行程を走り抜けたので、あっという間だった。

繋いだ手が濡れてつるつる滑り、時々走るテンポが落ちるむすこが転ばないかと気遣ったが、結局最後まで走り続けてくれた。

いい大人が、雨の中傘もささず走るなんてばかみたい。笑いながら雨の中走っている母子は側から見たら不気味だったかも。

けれど、これがとっても楽しかった。

私は真面目に見えるし実際真面目だけれども、以外とこういうあほな事をし始めると楽しくなっちゃうタイプなのだ。

雨の中、目を輝かせて雨雲を見上げる息子。
雨音の中響く笑い声。
つるつる滑る掌。
濡れて重くなっていく太もも。
風呂上りより濡れた息子の髪。

散々なのに、キラキラと輝いて、たのしくて。

最後は2人でケラケラ笑いながら家の中へなだれこんだ。

むすこはまだ常識や慣習に捉われないみずみずしい心で、濡れるなんてお構いなしに、突然の雨を全身で楽しんでいた。
好奇心全開だ。

私はそのおこぼれに預からせていただいたかたちになる。

子育てしながら働いていると、毎日予定がぎっしり詰まって、心休まる暇も「あそび」も日常から締め出されてしまう。
けれど、時折今回のような、キラキラして、とてつもなくたのしくて、眩しい瞬間に立ち会えることがある。

ありがたいことだなぁと思う。

子どもを産んで、こんなに大変だとは思わなかったと感じることも沢山あるけれど、

こんなに楽しくてキラキラしてて奇跡みたいな面白さがあることも知らなかった。

これだから人生はやめられないなぁ

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