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クリテリウムが得意なE1実業団選手がレース中に考えていること

コロナの影響でレースが続々中止となり、実業団レーサーの夫はしょんもりしています。
皆さんいかがお過ごしですか?

先日はニセコクラシックのホテル等をキャンセルしました。今年は家族で行こうかと検討していたのですが、この状況ではと、延期開催されても夫だけでの参加となる見込みです。
今はとにかく生き延びたいですね。

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さて、「レース中、選手って何を考えているの?」と常々聞いてみたいと思っていました。

自転車レースを観戦していると、その速さ、通り過ぎる時のラチェット音、ロードノイズに圧倒されます。

でも、正直それ以上のことは、素人にはあまりわからない。

私の父は大阪出身なのに巨人ファンで、実家ではよく野球中継が流れていました。けれど私には何が面白いのかちっともわからず、ひたすらつまらなかった。

ところが、野球漫画『おおきく振りかぶって』を読んで、「プレー中こんなこと考えてるんだ」「こんな駆け引きがあるのか」「こんな風にリードするのか」というのを知り、へぇ、野球って面白いのかも、と見方が変わったんです。

自転車レースも、選手の頭の中が見えたら違って見えるのでは。

というわけで、自転車実業団レーサーの夫に聞いてみました。今回は特に、夫が得意なクリテリウムでレース中考えていることについて。

※クリテリウム:市街地などで短いコースを何周も走り、順位を競うレース。コースは平坦であることが多い。

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私「レース中は何を考えているんですか?たとえばクリテリウムでは」

夫「えっ⁉︎だいたい残りの周回数に絶望している……」

(最大で45周したことがあるそうです。)

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■自分がどこにいようと先頭の動きをみる

私:夫さんはクリテリウムが得意だよね。ロードレースや山登りでは完走出来ないこともあるから、E1の中では脚力がある方でもないと思うんだけど、クリテリウムを走るコツってあるんですか?

夫:コツ、かどうかはわからないけど、集団の流れを読むのが得意なのかもしれないね

私:集団の流れはどうやって読むの?

夫:自分が集団のどこにいようと、先頭の動きをみるんだよ。そこから次の集団の動きを予測し、自分の動きに反映させる。そして、最も効率の良い動きを実行する

私:へぇ、自分の周りや目の前の人を注視してるだけじゃないんだ

夫:それだけじゃ反応が遅れるからね。先頭を見れば全部わかるし


■「流れ」が見えている人に動きを合わせる

私:集団の動きが予測できても、なかなか前に出れないこともあるんじゃない?30人近く一斉に走るわけだし

夫:それは、周りを見て、自分と同じように「周りが見えている人」に動きをあわせるんだよ。そうすると、するする前に行けるか、結果的に前の方に残れる

私:なるほど。そういう人は見ていればわかる?

夫:わかるね。雰囲気とか、動きで。そういう人の側にいて動きをあわせるのが、スムーズに走り、怪我や事故を避ける上でも大事。
「強い人」というより、「上手い人」の後ろについていく感じかな。「強い人」は脚力で前に出れちゃうから、同じ脚がないとついていけない。もちろん、最終的には「強くて上手い人」が勝つんだけどね

私:ちなみに「効率の良い動き」というのは、どういうこと?いまいちイメージがわかなくて……

夫:うん、コース上に、一番効率が良いコースが線で浮かぶイメージかな

私:あぁ、グランツーリスモ的な

夫:そう!完全にグランツーリスモのあれ

私:他の人の参考にならないんですけど!

夫:仕方ないよねぇ。ゲームもレースの役に立ってます!

■集団の動きが見えてない人からは絶対に距離を置く

夫:逆に、周りが見えてない感じの人とは距離を置くね。危ないから

私:それも、見ていればわかるもの?

夫:わかる。ふらふらしてたり、動きが自分の予測と違うから。そういう人は、落車したり、変な動きでぶつかったりする

私:リスクヘッジは大事よね

■クリテリウムは10秒ダッシュが出来れば良い

私:ところで今までの話はクリテリウムだけでなく他のレースでも同じことが言えそうだけど……

夫:そうだね。まぁクリテリウムは登りがないぶん、先頭がずっと見えるのが違いかな。ロードレースだと登りもあるから、脚が強くないと話にならないよね。先頭から離されちゃう

私:なるほど。クリテリウムの方がテクニックでなんとかなりやすい、ということ?

夫:クリテリウムは10秒ダッシュが出来ればいいからね。僕は10秒ダッシュは出来るけど、3分ダッシュはがんばれない

私:何言ってるのかわかりません……

夫:クリテリウムで大事なのは、ずっと前の方に位置取ることと、危険な逃げについていくこと

私:クリテリウムでの逃げ(=集団から飛び出すこと)って大抵集団に吸収されるイメージがあるけど

夫:そう。1人抜け出したところで、大抵集団で追えば追いつけちゃう。逃げた人の脚が保たないこともあるし。危ないのは、本当に強い人4〜5人の逃げ。これは本当に追いつけないし、これが優勝争いになる。そういう集団が動き出した時に、瞬時に反応して後ろについていけば、上位にくいこめるわけ

私:本当に強い人が動き出した時に、ついていけることが大事。だから、その時の「10秒ダッシュ」が出来ればいいってことね

夫:そう

私:言ってることは筋が通ってるからわかるけど、言うは易し、行うは難しって感じがする…

夫:チームメイトにもよく説明するけど「わかんない」って言われるよ

私:えぇ……この記事大丈夫かな

夫:だからグランツーリスモを

私:もういいわ!

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素人の私が聞いたものなので、有用な内容が不安が残りますがいかがでしたでしょうか。

クリテリウムは観戦するには楽しいレースですよね。
目の前を何度も通るし、全体の動きも把握しやすいです。

ひとり飛び出す人は大抵吸収される印象ですが、目立って場を盛り上げるため、チームを盛り上げるための飛び出しや、全体のスピードがあまり上がらず、集団が大きすぎる際に変化を起こすための飛び出しもあると観戦する中で教えてもらったのも面白かったです。

また普通にレースができる日常が戻ってくるといいですね。

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#E1

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