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息子は病院のアイドル

終業まであと30分、というところで保育園からコール。

「37.7度の熱があって、お迎えはまだ大丈夫なんですが、一応ご報告に……」ということだった。

37.5度以上の発熱はお迎え、ということになっているけれど、程度と全身状態と時間帯によってはそのまま預かってくれてたりする。ありがたい。

この程度なら上がることもあれば、下がることもあるから、と鷹揚にかまえつつ、いつもより少し早めに迎えにいった。

その夜息子の体温は40度を記録した。

◇◇◇

何度も書いているが未だに子どもの発熱には慣れない。

昨夜は、寝苦しそうな息子に久しぶりに解熱剤の座薬を入れた。その手つきだけは慣れたというか、肝が座ったと思う。
泣こうが嫌がろうが、睡眠確保のためにお尻の穴めがけてぶちこむ。

30分後、すやすや寝だした息子にほっとしたものの、急に呼吸が止まったりしたらどうしようと、しばらく隣を離れられなかった。

意外と小心者なのだ。そのうえ妄想力はたくましいから、気弱な妄想が大得意。

もっと海のようにどーんと構えられるお母さんになりたい。

実は私もよく熱を出す子どもだった。母は割と落ち着いて対応してくれていた気がする。
3人目の子で慣れてたのかもしれないし、私の記憶が適当に加工されているのかもしれない。

風邪をひくと母がいつも以上に優しいのでほんのり嬉しく、ほこほこしながら買ってきてくれたゼリーを頬張っていた。あたたかい記憶。今の私は息子の前でおろおろソワソワめそめそするばかり。

息子が物心つくころには落ち着いていられるようになりたいなぁ。

◇◇◇

そして夜が明けて。
幸い息子の熱は下がったが、流石に1日休んで病院へ行くことにした。

他の病院が閉まっている日だからだろうか、割と早めに出たものの混んでいて、1時間まち。

昨夜40度も出したのに、この暑い中を途中まで歩き、ちょこちょこ動いている息子を待たせるのも大変だったので、受付だけして先に買い出しに行くことにした。

普段は平日に買い出しをしなくても良いように週末買い込んだり、生協を活用しているが、うっかり卵を買い忘れた。あと、最近息子がいつものロールパンを食べなくなったので、違うものを買いたい。
それから実は本日8月8日は結婚記念日なので、ケーキなんかも買いたい。これは外せない。

息子は病み上がりなのにベビーカーを嫌がってちょこちょこ歩く。暑いのに。無理しないでほしいが、子どもの脳にはまだストッパーがない。
ちょっと眩しくもある。

なんとか買い物を終え、自宅の冷蔵庫に秒でぶちこみ、再び病院へ。

やっぱり混んでいて、唯一空いていた椅子に息子を膝に乗せて座る。
目の前の本棚から息子が「あんぱんまん!」と絵本をとり、広げると、近くにいたおばあちゃんが「あら、かわいい坊や」「おいくつ?」「おりこうさんねぇ」と話しかけてくださった。なんと、お2人も。

実はこれがとても助かる。
病院の待ち時間は、絵本やおもちゃを用意しても、息子はふらふら動き出しがちなのだ。
まわりも弱っている方が多いから、気を遣ってすり減ってしまう。私が。

でも不思議と人から話しかけられると、息子の動きが少し落ち着く。私がリラックスできるからかもしれないし、いつもと違う刺激があるからかもしれない。

そうこうしているうちに診察となった。風邪のようだ。おとなしく聴診器を当てられている息子は、もう診察に慣れたのかもしれない。

ここの病院ではいつも、すぐ帰れるようにと、診察室の中で診察券やお薬手帳を返却してくれる。やさしい。

終わるとすぐ会計窓口に呼ばれ、処方箋をもらう。自治体からの補助で、お支払いはなしだ。

「大きくなったね、お大事にね」

予防接種に通っているところだから、受付のお姉さんも生後数ヶ月の頃から知っていてくれている。にこにこしながらバイバイ、と手を振ってくれて、息子もはにかみながら手を揺らす。

奥から看護師さんも顔を出して見送ってくれ、待合室のおばあちゃん方も、うふふ、またね、かわいいね、と声をかけてくれた。

みんなのあたたかい視線を受けながら、手を振り、出口まで凱旋する息子はさながらアイドルのよう。

こんなふうに、わが子をかわいがって貰えると、嬉しい。私もにこにこ、ほこほこしてしまった。

おかげでその後の看病もがんばれている。

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