やさしくして貰えたから頑張れる インフル明けの朝に
インフル明け、週の頭、久しぶりの保育園。
「ふえぇ……」
予想通り、息子が涙目でしがみついてくる。
先週、私が自宅で、息子が避難先の実家でインフルエンザを発症し、丸一週間離れ離れだったのです。
そうだよね、そうなるよね……。
私も離れがたいよ。
1週間ぶりに会えたのに、またすぐ離れるなんてね。
たっぷり日差しが降り注ぐあたたかな部屋で、私の足にひしと手を回す息子の力強さが愛おしい。
なりふり構わぬ泣き顔が、ちくりと痛い。
それでもくしゃくしゃの泣き顔も、鼻水たらしたしわしわの力の入った口元も、かわいいんだからなぁ。
すべてが愛おしく、エネルギッシュで、幸福で、途方にくれる瞬間である。
◇
日曜日に再会してから息子は、我々にべったり。
1歳5ヶ月の小さな体で、体調不良とさみしさと闘ったのだ。無理もない。
こちらも寂しくておかしな遊びを開発するほどだった。
日曜日はたっぷりくっついて、転がって、きゃきゃっと笑って過ごした。月曜の朝もご飯を食べる時以外はべったり。
私も家事や準備をしつつ、いつも以上に抱っこして、抱きしめて過ごした。
でも、私にはやらねばならぬことがある。
断腸の思いで仕事に、保育園に向かった。
そして冒頭の泣きべそをかきながらしがみつく息子の姿につながるのである。
「すみません、1週間離れ離れだったので、離れがたいようで……」
と先生に説明すると、すべて把握してくれていた先生が、
「そうですよね。荷物、預かりますね!おもちゃも持ってくるので、側にいてあげてください」
と、エプロンを所定の場所に入れたり、着替えを用意したり、という諸々の準備を引き受けてくれた。
普段はもちろん、そんな事はない。
保護者が自分で準備する。
たまたま登園一番乗りで他の子がいなかったし、居たのが息子インフル発症の報せを受けてくれた先生で、事情を把握してくれていたからかもしれない。
私は恐縮しきりだったが、おかげで息子を抱きしめながら、落ち着くよう、少しでも長く側にいることができた。
息子の背中をさすりながら、
「そうだよねぇ、離れがたいよねぇ。お母さんも、仕事いきたくないよ」
と思わず本音を漏らすと
「そうですよねぇ……」
とおもちゃを持ってきた先生が真顔でしみじみと相槌をうってくれた。
いや、先生は既に出勤して働いていらっしゃるのに、すみません。ほんとに。
と思いつつ、同意してくれたことにちょっと笑いながら、息子をおもちゃの方に向かわせる。すると、久しぶりのアンパンマンが乗った大きな音の出るおもちゃにそわそわと目を輝かせた。
幸い、楽しそうに遊び始めたので、私は先生にお礼を言って、そっと園を後にした。
◇
………うん、私もがんばろうかな。
いつも通り駅まで全力疾走してへろっへろになりながら、揺れる電車の中でそんなことを思った。
私は私のやるべきことを、がんばろう。
本当は、私も仕事に行くのに気乗りしていなかったのだ。
私自身も病み上がりで元気ではなかったし、息子とは離れがたい。なんならもう1日休んで息子とのんびり過ごしたい。
でももう有給もがっつり使ったし、これ以上休むわけにはいかない。
特別好きな仕事ではないけれど、働くこと自体は好きだし、なにより生活のため。
そう思って、自分を奮い立たせた。
けれど、今日は先生がやさしくしてくれたから。
特別に、慮って、やさしさをくれたから。
だから私もがんばろうかな、と思えたのだ。
◇
人間関係はまずGIVE&GIVEから、というけれど、だれかの活躍を願うなら、まずやさしくするのが良さそうだ。
これまでも、誰かがやさしくしてくれたから、頑張れたことが何度かあった気がする。
励まされるより、発破をかけられるより、ご褒美をちらつかせられるより、やさしくされるのが一番効果があるような気がしてきた。
自然と、やる気が出てくるように思う。
私も、やさしい人になりたいな。
と本気で思う。
しかし私も人間なので、いつでも、どこでも、誰にでもやさしくすることはできない。
やさしくする余裕がある時だけになってしまうけれど。
それでも、今日、保育園の先生に救われたように、貰ったやさしさを誰かに返せたらと思う。
人にあげるより貰ったやさしさの方が多い気がするんだよなぁ。
いかんいかん、ちゃんと循環させないとな。
増やせたらなお良いけど、無理はしません。
明日誰かにやさしくします。
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