平沼 進/心臓外科医

茅ヶ崎中央病院・心臓血管外科部長 | 身体を預けてくださる患者さんに「私」を知っていた…

平沼 進/心臓外科医

茅ヶ崎中央病院・心臓血管外科部長 | 身体を預けてくださる患者さんに「私」を知っていただき、少しでも安心して手術を受けていただくためのブログです | SNSリンク & 連絡先 https://lit.link/shiranuma

記事一覧

カンファレンス室を作ろう

 心臓手術を成功させる鍵のひとつは「多職種協働」です。  これは医師だけでなく、看護師や薬剤師、臨床工学技師、理学療法師など様々なスペシャリストが知恵を結集する…

家族の戦い

 本稿はややプライベートな話題です。  私の実父は昨年末に食事が飲み込めなくなり、検査をした結果、食道にステージ III の進行癌が見つかりました。  県内の専門病院…

心臓手術リハビリの秘密道具(1) 「フィジオロール」

 患者さんに元気になっていただくため、「良い手術」を行うことは当然です。しかし、患者さんを元気にするのは手術だけではありません。その前後のリハビリテーションも同…

tripleSeedの樹

 茅ヶ崎中央病院・心臓血管外科のオリジナルクリアファイルを作成しました。入院中に発生するたくさんの書類を整理していただくためのものです。  イラストは なむらし…

湘南一のハートセンターになる

 作年(2023年)4月に茅ヶ崎中央病院に当診療科を開設し、およそ10ヶ月間の入念な準備期間を経て開始した心臓手術が軌道に乗って来ました。  心臓手術開始にあたり、チ…

本当の“患者さまファースト”

 これまでいくつかの病院で勤務してきましたが、多くの場合、病院はその大小によらず職種や部署ごとに高度にセクション化されています。そうした構造がときに患者さんの都…

心臓血管外科 の 修練指導者 として認定されました

 この度、平沼は 3学会構成心臓血管外科専門医認定機構 における専門医更新申請が通り、同時に 心臓血管外科修練指導者 として認定していただきました。  ひとえに日頃…

”医師の働き方改革” の功罪

 来年度から実施される ”医師の働き方改革” についての議論がリアルでもネットでも盛んに交わされています。 すり潰されてきたお医者さんたち  従来、特に大学病院な…

ハイブリッド手術室 が完成しました

 心臓手術スタートに向けて、ぞくぞくと準備が整ってきています。  まず、7月より工事を行なっていたハイブリッド手術室が完成しました。  ハイブリッド手術室は手術…

導かれし者たち

 心臓血管外科診療は心臓外科医がひとりで頑張ったところでどうにもなりません。来年度より「医師の意働き方改革」も控えており、タスクシェアないしタスクシフトの必要性…

手術用拡大鏡を晒してみた

 心臓手術は細かい作業をする場面が多いので、眼鏡型の拡大鏡を装着して手術をします。  倍率は執刀医だと3.5倍~5倍程度、助手の場合は2.5倍程度です。  「明るく」「…

エピソードゼロ 〜 SSA だったころの話

 もう15年も前の話です。湘南鎌倉総合病院で2年間の初期臨床研修を終えたあと、私はそのまま徳洲会の「湘南外科グループ(SSA)」と呼ばれる研修プログラムに参加しまし…

祝「湘南ちがさき下肢静脈瘤センター」オープン

 この7月から当グループの基幹病院・湘南東部総合病院の外来部門である「湘南東部クリニック」で週1回の外来枠を頂戴しました。これにより、当院(茅ヶ崎中央病院)の外…

【茅ヶ崎中央病院】心臓リハビリテーションの夜明け

 去る6月23日金曜日、心臓術後リハビリを専門にしている理学療法師(PT)の徳田雅直くんに当院リハビリスタッフ40名の前で講演を行ってもらいました。  こうした勉強会…

エピソードゼロ 〜医学部6年生の就職活動

<前編> 昔、といっても20年以上前の話ですが、医師国家試験に合格した新米医師は多くの場合、卒業と同時に大学の○○科医局に入局して、大学病院か関連病院で上司や先輩…

理不尽な環境で働いていると感じた外科医が読むブログ

 facebook のフィードに「思い出」として、1年前に自分が投稿した記事が出てきました。とある私立高校のサッカー部の暴力事件について、外科医の職場環境と絡めてやや長…

カンファレンス室を作ろう

 心臓手術を成功させる鍵のひとつは「多職種協働」です。  これは医師だけでなく、看護師や薬剤師、臨床工学技師、理学療法師など様々なスペシャリストが知恵を結集するということです。  多くのスタッフで情報を共有するためにはカンファレンスの実施が欠かせんません。  手術の前の週に1回、術後は毎朝 小ミーティングを開いて方針の確認を行なっています。  これまでは一般の会議室を使ってきましたが、かねてより、こうした話し合いや患者さんに説明を行うためのカンファレンス室の必要性を感じてい

家族の戦い

 本稿はややプライベートな話題です。  私の実父は昨年末に食事が飲み込めなくなり、検査をした結果、食道にステージ III の進行癌が見つかりました。  県内の専門病院に相談したところ、年末につき年明けまで対応困難、とのことでした。途方に暮れて、研修医時代に世話になった先輩医師であるS先生に電話で相談しました。S先生は腫瘍を専門とした外科医で、毎年海外の学会に参加するなど勤勉な人物です。  先生は快く父の治療を引き受けてくださいました。  父は3日程度の検査入院のあと、年明

心臓手術リハビリの秘密道具(1) 「フィジオロール」

 患者さんに元気になっていただくため、「良い手術」を行うことは当然です。しかし、患者さんを元気にするのは手術だけではありません。その前後のリハビリテーションも同じくらい重要です。  心臓手術のような比較的大がかりな手術を受けた患者さんの体は少なからずダメージを受けます。順調な回復のために、適切なリハビリが欠かせません。  「無気肺」は術後にしばしば起こりうる合併症のひとつです。術後になるべく早く身体を起こすことは 無気肺 を予防する上で、とても重要です。  普段、私たちは肺

tripleSeedの樹

 茅ヶ崎中央病院・心臓血管外科のオリジナルクリアファイルを作成しました。入院中に発生するたくさんの書類を整理していただくためのものです。  イラストは なむらしゆ さんにお願いしました。  私たちは開設以来、3つのC(tripleSeeds)を標榜しています。   ・Commitment(責任と結果)   ・Company(チーム医療)   ・Comfort(快適な手術体験)  この3粒の種を芽吹かせ生長させ、やがて絡み合った一本の大樹(tripleSeedの樹)に育て

湘南一のハートセンターになる

 作年(2023年)4月に茅ヶ崎中央病院に当診療科を開設し、およそ10ヶ月間の入念な準備期間を経て開始した心臓手術が軌道に乗って来ました。  心臓手術開始にあたり、チームの結成に機材の選定、スタッフ教育、各部門の連携を文字通りゼロから着手しました。  心臓手術は病院内すべての部署が関わる総力戦となります。決して平坦な道のりではなかったものの、前職で心臓外科部門をスタートアップさせた経験をおおいに活かすことができました。  意気投合した2名の診療看護師(NP)が入職してくれ

本当の“患者さまファースト”

 これまでいくつかの病院で勤務してきましたが、多くの場合、病院はその大小によらず職種や部署ごとに高度にセクション化されています。そうした構造がときに患者さんの都合よりも優先されることがあり、私は以前から気になっていました。  家族が病気になって、患者の立場としていくつかの病院を受診する中でも、より一層強く感じています。  例えば、既往歴やアレルギー歴といった質問を外来でも病棟でも、医師からも看護師からも、あるいは薬剤師からも、幾度となく聴取されたり、その上で大量の書類に名前

心臓血管外科 の 修練指導者 として認定されました

 この度、平沼は 3学会構成心臓血管外科専門医認定機構 における専門医更新申請が通り、同時に 心臓血管外科修練指導者 として認定していただきました。  ひとえに日頃からご支援いただいている皆様方、そして私を信頼してお身体を預けてくださったすべての患者様のお陰です。  これにより、当院は心臓血管外科専門医の関連型修練施設の認定を目指すことが可能になりました。  資格に恥じぬ仕事ができるよう取り組んで参りますので、引き続きお力添えのほどよろしくお願い申し上げます。

”医師の働き方改革” の功罪

 来年度から実施される ”医師の働き方改革” についての議論がリアルでもネットでも盛んに交わされています。 すり潰されてきたお医者さんたち  従来、特に大学病院などの大きな病院に勤める若い勤務医を中心として、膨大な時間外労働やタダ同然のオンコール勤務といった非常識な勤務体制がまかり通ってきました。  臨床研修制度が整備されたことなどで近年はだいぶ改善されてきましたが、「勉強中の身でありながら報酬を要求することは烏滸がましい」「患者さんの幸福のために働いているのだから、金銭

ハイブリッド手術室 が完成しました

 心臓手術スタートに向けて、ぞくぞくと準備が整ってきています。  まず、7月より工事を行なっていたハイブリッド手術室が完成しました。  ハイブリッド手術室は手術中に透視装置を使用できる手術室で、手術の最中でも速やかに造影検査が行えるため、大動脈ステントグラフト手術やペースメーカー設置手術、透析シャントの再建術などの血管手術をスムーズに行うことができます。  また、心臓手術に欠かすことができない人工心肺装置が本日いよいよ納入されました。  人工心肺装置は一般に施設ごとにオ

導かれし者たち

 心臓血管外科診療は心臓外科医がひとりで頑張ったところでどうにもなりません。来年度より「医師の意働き方改革」も控えており、タスクシェアないしタスクシフトの必要性、重要性は論を俟たないでしょう。  いずれにせよ、心臓血管外科診療における要となるのはチーム医療です。当院における心臓血管外科チームとは「心臓血管外科診療に少しでも関与するスタッフすべて」だと考えます。  こうした中、この10月より心臓血管外科チームとしてふたりの診療看護師(NP)が仲間に加わってくれました。 診療

手術用拡大鏡を晒してみた

 心臓手術は細かい作業をする場面が多いので、眼鏡型の拡大鏡を装着して手術をします。  倍率は執刀医だと3.5倍~5倍程度、助手の場合は2.5倍程度です。  「明るく」「軽く」「安い」商品が理想ですが、カメラのレンズと一緒ですべてを満たす商品はありません。いわゆるトリレンマですね。  この度、新しい手術用の拡大鏡を入手しましたので、この機に私が心臓外科医を志してからの拡大鏡遍歴をまとめました。 ■2011年〜  最初に購入したのは、キーラー社の跳ね上げ式のもの(パノラミッ

エピソードゼロ 〜 SSA だったころの話

 もう15年も前の話です。湘南鎌倉総合病院で2年間の初期臨床研修を終えたあと、私はそのまま徳洲会の「湘南外科グループ(SSA)」と呼ばれる研修プログラムに参加しました。  これは北は北海道から南は沖縄まで、日本中に点在する徳洲会病院を3~6ヶ月ごとにローテーションしながら、4年間かけて一般外科治療について経験を積むものです。ちょっと紛らわしいですが、美容の湘南グループとはまったく関連はありません。  SSA は発足から40年近く経つ歴史のある民間医局で、輩出された卒業生たち

祝「湘南ちがさき下肢静脈瘤センター」オープン

 この7月から当グループの基幹病院・湘南東部総合病院の外来部門である「湘南東部クリニック」で週1回の外来枠を頂戴しました。これにより、当院(茅ヶ崎中央病院)の外来と併せて、茅ヶ崎市のより広いエリアから当科にアクセスしていただくことが可能になりました。  また、この度 院内ブランドとして「湘南ちがさき下肢静脈瘤センター」を立ち上げました。有病率が高くお悩みの方が多い下肢静脈瘤の患者さんに、より気軽に受診していただくべく、当科の2枚目の看板として掲げるものです。  先の「湘南東

【茅ヶ崎中央病院】心臓リハビリテーションの夜明け

 去る6月23日金曜日、心臓術後リハビリを専門にしている理学療法師(PT)の徳田雅直くんに当院リハビリスタッフ40名の前で講演を行ってもらいました。  こうした勉強会での講師経験が豊富な彼ですから、流石の語り口でした。スライドや資料も非常に充実しており、特にこれから心臓リハビリについて勉強を始めるスタッフにとっては、とても濃密な2時間だったと思います。  ひとくちに外科手術といっても、術式ごとに特徴があります。悪性腫瘍を取り除く手術、損傷を修復する手術、失われた機能を補填す

エピソードゼロ 〜医学部6年生の就職活動

<前編> 昔、といっても20年以上前の話ですが、医師国家試験に合格した新米医師は多くの場合、卒業と同時に大学の○○科医局に入局して、大学病院か関連病院で上司や先輩医師から指導を受けていました。  現在はいわゆる初期研修が必修化されており、医学生は最終学年になると、大学病院か市中病院の研修プログラムに応募して、卒後2年間の研修を受けることになっています。この2年間はスーパーローテーションといって、ひとつの診療科に所属せず、だいたい1~2ヶ月ごとに色々な科をまわりながら、幅広い

理不尽な環境で働いていると感じた外科医が読むブログ

 facebook のフィードに「思い出」として、1年前に自分が投稿した記事が出てきました。とある私立高校のサッカー部の暴力事件について、外科医の職場環境と絡めてやや長文の所感を述べたものです。  折角なので、この記事を加筆修正してご紹介します。 高校サッカー部の暴行事件を受けて思うこと  暴行の事実はもとより、炎上に対する初期対応において動画や音声のSNS流出が続いたことですべて裏目に出てしまい、監督は世間からの信用をすっかり失った。  良くも悪くも現代は、SNSによ