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沢田研二さんの現在のバックバンド「七福神」のサウンドメイクを各パート別に徹底分析してみた

今回は沢田研二さんの現在のバックバンドである「七福神」のサウンドメイクを分析していこうと思います。

沢田さんと七福神の公式イラスト

メンバーは、柴山和彦さん(Gt.)、依知川伸一さん(Ba.)、高見一生さん(Gu.)、平石正樹さん(Dr.)、斎藤有太さん(Key.)、すわ親治さん(Cho.)、山崎イサオさん(Cho.)7名です。

・「ずっと沢田さんの相棒としてギターを務めてきた」柴山さん

・「以前沢田さんのバンドでベーシストを務めていた」依知川さん

・「依知川さんのバンド"BARAKA"のメンバー」である高見さんと平石さん

・「6人目のドリフ」と言われたすわさん

・「沢田さんの音楽劇に参加されていた」山崎さん

という豪華メンバーによるバックバンドとなっています。

LIVEの告知

僕も「七福神」の皆さんがサポートを務めるLIVEを、
・2022年 初詣ライブ!
・2022年 まだまだ一生懸命ツアー
・2023年 まだまだ一生懸命ツアーファイナル

の3本を見に行かせていただいたので、かなりしっかり分析出来ると思います。

それでは本編に移ります!

七福神のバンドとしてのサウンドメイクを各パートから徹底分析

①リズム隊について

まずリズム隊のサウンドの分析です。

・ドラム

ドラムを担当されている平石さんは"一打一打が重くドッシリとした音で叩かれる"プレイスタイルです。それでいてキメや要所要所ではテクニカルなプレイをされます。
平石さんのスタイルは"ブルース系のドラマーさんに多いプレイスタイル"ですね。

メインの使用機材はTAMAのドラムセットで、ドッシリしたビートを奏でるセットです。


今までの沢田さんのバンドのドラマーは結構"スピード系のドラマー"さんが多かったので、なかなか珍しいタイプのドラマーさんだと思います。


僕は歴代のドラマーさんの中でも平石さんの叩かれる「サムライ」が一番好きですね。
平石さんはバラード曲でのプレイがカッコいいのですが、アップテンポのロック曲もカッコよくて、"ジュリーサウンド"にとてもハマっているドラマーさんだと思います。

さいたまスーパーアリーナ公演のタイガースコーナーでは、瞳さんがメインでドラムを叩かれていたのですが、平石さんは自分のドラムで"瞳さんが演奏しきれない音を足していくような形"で演奏されていて、パーカッション的な役割を担っていました。

・ベース

続いてベースを担当されている依知川さん。

ベースの音色は"純"ベースギターと例えられるような暖かみのあるオールドジャズベースの音です。


実際に依知川さんは沢田さんのLIVEではSeymour Duncanのベースをメイン機として使用されているらしいので、この音作りなのも納得です。

弾き方に関してですが、沢田さんの曲は大半が「ロック曲」なので、依知川さんは大半の曲ではルートに沿ったベースラインをピック弾きで演奏されているのですが、ミディアムテンポの曲ではメロディアスなベースラインを指弾きで演奏されています。曲に応じて奏法やピッキングを変えられていますね。

また、さいたまスーパーアリーナ公演のタイガースコーナーでは、一徳さんが「オールダウン奏法でルートに沿ったドライブベース(使用ベースはヘフナー)」を演奏される中、依知川さんは「指弾きでメロディアスなベースライン」を演奏して、"ダブルベース"でタイガースの曲や洋楽カバーを演奏されていました。
その際の使用ベースはFenderのジャズベースでした。

②ギターについて

ギターは柴山さんと高見さんのお二人で担当されています。

LIVEを見ている限り、恐らく「明確に"どっちがリズムギター担当で、どっちがリードギター担当"というのは決まっていない」と思われます。
お二方とも曲やセクションに応じてリズムギターとリードギターをどっちも担当されます。


強いて言えば「柴山さんがリードギターの時がちょっと多いかなー」くらいですね。
(曲のイントロや間奏のリードのフレーズは柴山さんが演奏されることが多いので)

ギターソロも柴山さんが演奏される時もあれば、高見さんが演奏される時もあって、何なら「お二方でワンフレーズずつ交互にギターソロを演奏される曲」もあります。
ここのギターバトルも七福神の醍醐味です。

またギターソロの時は柴山さんも高見さんも、
持ち場から離れてステージの前の方ギリギリまで出てきて激しい演奏をされます。


僕は柴山さんが1人でバックを務められていた時のLIVEから行き始めたので、柴山さんのことを"凄い寡黙なギタリスト"だと思っていたのですが、初詣ライブの時に前の方に出てきて激しいギターソロを演奏される姿を見て「こんな人なのか…!」と思いました。

演奏スタイルとしては、
柴山さん…「ジュリーサウンドを知り尽くした歴戦のギタリストで、ハードロックのジャンルに一番強いと思われるが、様々なジャンルに対応出来る。ギターソロの時の音色はファズが効きまくっている。エッジの効いたギターを奏でるギタリスト。」
高見さん…「プログレの世界で活躍しているだけあって、テクニカルな演奏をされるギタリスト。ソロが一番分かりやすいがリズムギターのストロークパターンからもその手数の豊富さが伝わってくる。それでいてギターの音色はゴリっとしたロック寄り。変幻自在のロックギタリスト。」
という感じです。

沢田さんの楽曲で一番大事なパートはギターと言っても過言ではないので、今現在このお二方以上の適任は居ないと思います。

使用機材は、柴山さんのメイン機は「FenderのSwinger(赤)」、高見さんのメイン機は判別がつかないのですが、恐らく「Fenderのストラト(水色のものと黒のもの1本ずつ、仕様は不明)」だと思われます。

さいたまスーパーアリーナ公演のタイガースコーナーでは、SGを演奏する太郎さんを含めたトリプルギター編成で演奏されていました。

③キーボードについて

キーボードは斎藤さんが単独で担当されています。
斎藤さんはキーボードだけでなく、LIVEで演奏する楽曲の"七福神用のアレンジ"も手掛けられています。

(曲のLIVEアレンジなどは通常であれば主にバンマスが行う業務だと思いますが、
・アレンジ担当は斎藤さん
・バンマスは柴山さん
だと思われます。)

更に近年の沢田さんの新曲のアレンジも手掛けられています。

新譜のクレジットには「編曲/斎藤有太」との記載

「TOKIO」のラウドアレンジとなる「TOKIO 2022」は音源リリース前の2021年5月の「BALLADEツアー 初回公演」からエレキギター1本で披露されていますが、これも恐らく裏で斎藤さんがアレンジしたものを柴山さんがステージで1人で演奏していたと思われます。
(もしくはギター1本ver.はカズさんが考えて、バンドver.は全パートのリフを斎藤さんが考えたか。)


斎藤さんのキーボードの一番の特徴は何と言っても、その仕事量の多さです。


沢田さんの初期の曲は「ド派手なストリングスやブラスが多用される曲が多い」ので、ピアノやキーボード、オルガン以外にもそのあたりのパートのフレーズを演奏する必要があります。


更に(これは後で詳しく書くのですが)、恐らく七福神は、
同期音源(事前に録音した音声データ)を使った演奏を行っていない
ので、こういった"上モノの演奏パートは全て斎藤さんが生演奏する必要がある"と思われます。


演奏スタイルとしては、
近年の楽曲…ロック曲が中心なので、ほとんどの曲はメインキーボード専念で演奏、サウンドに厚みを出す役割を担当
初期の楽曲…色んな上モノパートを多くのキーボードで演奏
というような感じです。


プレイは非常に安定感があり、凄い品のある弾き方をされるのですが、反面"最高に七福神のサウンドを楽しんでいる"ようにも見えて「ロックっぽさ」を感じますね。


機材はメイン機が
・YAMAHA CP1 (ピアノ音色用)
・YAMAHA MOTIF XS7 (シンセ音色用)

周りに
・Nordのアナログシンセ
・Minimoog Voyager
・オルガン
計5台のキーボードを使用されています。

④コーラスについて

コーラスは山崎さんとすわさんのお二人で担当されています。

七福神のコーラス隊の特徴は
全ての楽曲のコーラスを男声コーラスで行っていること」です。

例えば「サムライ」や「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」のコーラスは、原曲では女声コーラスで歌われていますが、七福神では同じコーラスラインをオクターブを調整した上で男声コーラスで歌われています。

しかも「同期で女声コーラスを流す」などは行わず、全て山崎さんとすわさんの生コーラスで沢田さんのボーカルを支えています。

(一応楽器隊全員の立ち位置の前にもスタンドマイクがあるので、曲によっては全員でコーラスをしてコール・アンド・レスポンスパートを歌われたりしています。)

こう書くと「全部男声コーラスで大丈夫なの?」と思われるかもしれませんが、声が七福神のバンドサウンドに馴染んでいるので、「♪ジェニ〜」などがスッと入って来ます。

また普段のお二人の立ち位置は後ろの方なのですが、「ダーリング」などの一部の振り付け楽曲では、間奏中にステージの前の方まで出てきて、沢田さんの両隣で一緒に振り付けをこなされたりしています。

⑤沢田さんのボーカルについて

沢田さんは以前のベースレスの記事で書いた通り、物凄い轟声のロックボーカリストな上に、御年75歳で最高に経験を重ねた状態です。

ツアータイトルの「まだまだ一生懸命」を最高に体現していますね。

そのためロック曲では"渋味を活かした豪快なシャウト"で会場を湧かせたり、バラードでは"深味を活かした情感たっぷりの声"で会場を包み込むなど、まさにプロの境地のボーカルパフォーマンスを見せつけてきます。

それでいて、
・ステージの端から端までのダッシュ往復
・ジャンプ
・ヘドバン
・ダンスや振り付け

などのパフォーマンスもまだまだこなされます。
とても「75歳」だとは思えません。

(余談ですが、初詣ライブの時は「カサブランカ・ダンディ」の水芸はコロナ禍のため封印し、
代わりに"ペットボトルを空中で1回転させてキャッチ"を繰り返していました。)


更に、沢田さんの真骨頂である「曲に入り込んで圧倒的な世界観を醸し出す」力も全く衰えていません。
「いつか君は」や「LOVE (抱きしめたい)」などは"70代だからこその味"が最高に作用していると思います。

御本人は
「皆さんから"ジュリーもう歌キツそうだな…"思われたら、音楽LIVEツアーを辞めてトークLIVEツアーに切り替える(意訳)」
と仰っていましたが、多分もうしばらく歌い続けると思います。


・各パートのごとの分析を終えて、全体的なバンドサウンドに踏み込む

①アンサンブル面について

先程も書きましたが、七福神は恐らく「同期演奏」をほとんど行っていません。上モノもコーラスも全て生演奏です。

(「そのキスが欲しい」が始まる時のアカペラの「♪そのキスが欲しい〜」はサンプラーで鳴らしていると思われます。)

加えて、最近のバンドでは演奏を合わせる目的や同期演奏を行うために、クリック(ドラマーがイヤホンで曲のテンポに合ったメトロノームを聴きながら演奏)を使った演奏を行うことが多いのですが、七福神や平石さんはクリックを使った演奏を行っていません

そして、ステージにいる8人全員が誰もイヤモニを使用していません。
全員がイヤモニを使わずにアリーナLIVEが出来るのがプロすぎます。

バンドメンバーは自分の足元に「モニタースピーカー」を置いて前から音を聴きながら演奏していますが、沢田さん本人は"昔からのこだわり"のため、今でもモニタースピーカーも歌詞モニターも使っていません。

沢田さんは、「セトリの全曲分の歌詞を暗記し、自分の後ろから迫ってくるバンドを聴いて歌っている」のです。普通はありえないことです。

クリックや同期、イヤモニを使っていないからこそ、バンドとしてあのような
自然ながらも重みのあるグルーヴ感
が出せているのだと思います。


また、沢田さんのLIVEは基本的に「アンコールまでMC無しでずっと演奏が続く」という流れなのですが、1曲歌い終わるごとに沢田さんは「ありがとう!サンキュー!ありがとうね!!!」と全方向のお客さんへお礼をします。

その間、楽器隊の皆さんは素早く次の曲用に音色を切り替えたり、楽器を変えたりします。
そして沢田さんがお礼を言い終わった瞬間から次の曲が始まり、大体「その素早く切り替えた音で1曲引き通す」のです。

LIVEを見る度にここの切り替えの速さが凄すぎて圧倒されます。

②アレンジ面

アレンジ面に関してですが、基本的には斎藤さんによるアレンジは原曲のフレーズを大事にしたアレンジとなっており、「勝手にしやがれ」などはほとんど原曲から変えていないと思われます。

ただ、大半の曲のBPM(テンポ)が原曲の0.8倍速くらいになっています。

鉄人バンドの時は「原曲より速かった曲」がほとんどでしたが、七福神は「今の70代の沢田さんに一番合った音作り」をされているので、このBPMなのだと思います。

キーは沢田さんはほとんどの曲を原曲で歌われるため、1回のLIVEでアンコール含め大体18曲ほど歌われる中、3曲しかキーを下げている曲がありません。

七福神がバックバンドになってからキーを下げて演奏された曲は
・ス・ト・リ・ッ・パ・ー
・A・C・B
・サーモスタットな夏
・TOKIO (TOKIO 2022として)
・Come on!! Come on!
・危険なふたり
・あなたへの愛
・花の首飾り
くらいだと思います。

こういった背景もあり、七福神は結構「全体的なサウンドがラウド」です。

TOKIOは「BALLADE」以降の全てのLIVEで、当時の社会情勢を表すようにキーとコード進行を変えて大胆にラウドアレンジされた状態で演奏されましたが、さいたまスーパーアリーナ公演からオリジナルのキーとアレンジに戻りました。

③つまり「七福神」はどういう演奏をするバンドなのか

総括すると七福神は、
アンサンブルとしてはゆったり包み込むように良い意味でふわっとした演奏を行うが、音作りは激しいハードロックサウンドなバンド
だと思います。

キャッチフレーズを付けるとしたら
"70代のジュリーに一番合ったサウンド"で演奏する完全体バックバンド
です。

今までの沢田さんのバンドはキーボードが居なかったり、ベースが居なかったり、逆にエレキギター以外居なかったりなどの変則的な編成でした。

しかし、七福神はキーボードもベースも居て、ギターも2人居て、更に専任コーラスも2人居るという「7人組バンド」です。

そのため、「完全体のバックバンド」という表現が適切だと思います。
(特に一昨年までの柴山さん一人体制は音数が最小限だったため、よりそのように感じます。)

④何故またバンドに戻ったのか

沢田さんが長い間構想していた「柴山さん一人体制」を辞めて、バンド編成に戻った理由としては、
バンドでしか出来ない音楽をやりたかったから
ではないかと思います。

沢田さんもMCでよく「70代を迎えたご自身の今後の歌手活動」について語られるので、
柴山さん一人体制を4年ほど続けてみて、今の情勢、今後の歌手活動、自分の出来る表現について考えた結果、バンド編成に戻す
ことを決断されたのでは無いかと思います。

また「柴山さん一人体制」ではステージでの演奏面でも音作りの面でも柴山さんの負担が凄かったですが、そこの部分もかなり解消されたと思います。

さいたまスーパーアリーナ公演のリハーサルの取材記事で、
沢田さんがバンドメンバーに意見を求めた時、依知川さんが意見を出して解決した
という文章を見た時、
「恐らく一人体制の時は沢田さんからの問いに柴山さんが1人で意見を出して解決していたんだろうけど、これからは7人で意見を出し合って解決できるのか…!
と思い、何故か安心しました。


まとめ

・今の沢田研二さんのバックバンド、七福神は「"70代のジュリーに一番合ったサウンド"で演奏する完全体バックバンド」である


あとがき

少し僕の話になってしまうのですが、僕はさいたまスーパーアリーナ公演で「オリジナルアレンジのTOKIO」のイントロが流れた瞬間、
「今までラウドアレンジで演奏していたTOKIOを今日はオリジナルアレンジで演奏するのか…!?」
と思って涙が溢れだしてしまいました。


沢田さんがTOKIOをオリジナルアレンジで演奏した理由は、
・世の中の情勢が2年前から変化したから
・75歳の誕生日だから
・バンド編成に戻って初のアリーナ公演だから
・さいたまスーパーアリーナのリベンジ公演だから
・75歳の沢田さんがスーパースター"ジュリー"だった自分に「まだやれてるぞ!!」と言いたかったから
・今オリジナルのTOKIOを解禁して狼煙をあげたかったから
など、色々考えられますが、BALLADEの初日から沢田さんのLIVEに通い始めた僕としては「初めてのオリジナルバンドアレンジのTOKIO」だったので、それだけで一気に色んな想いが溢れだしてしまったのです。

同時に終演後「3年近くLIVEに通ったけど、これからもまだまだ沢田さんのLIVEが見たい」と強く思いました。

来年のお正月にも沢田さんと七福神によるLIVEツアー「甲辰 静かなる岩」が決まっています。

これからも1日でも長く歌い続けてもらうことを期待して、沢田さんの応援を続けようと思います!

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