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ウチの店長さん10iro booksさんの「10年いろいろ」の感想文②


練馬区の江古田で「ぼっとう&よはく」というコワーキングスペース兼一棚本屋さんを運営してしる、s.akkoです。

今日は、予告通り一棚本屋の店長さんの著書の感想文の続きを。
毎日更新は、無理だった・・・。挫折早い。

プロローグの個性的なお母さんのところまでだったと思う。

著者のお母さんは、東京芸大の声楽科を卒業した後、ハンガリーの作曲家の提唱した独特なやり方で子供達に歌を教える合唱団の先生だったそうだ。「音楽教育の第一歩は、自国のわらべうたをうたう事」合唱コンクールと全く違うピアノ伴奏も一切ない聖歌隊に近い、上手くなって、コンクールで入賞するという事とは、真逆の疲れた子供が疲れを癒し、明日への活力を呼び起こす『合唱浴』のできる場でありたいと子供たちに歌を教えていたというプロローグを読んで、そんな凄いお母さんがいきなり倒れてしまったら・・・。そして、寝たきりになってしまったら・・・。

と、何だか想像もつかないなぁと思いながら、どんどんページを捲っていった。

お母さんの日々の様子と自分の変化する想いを可愛いイラストと一緒に綴り、ところどころ、病院に置かれている「お見舞いノート」というお見舞いに来た方方の言葉も挟み込まれている。このノートもお母さんをいかに多くの方が支えてくれるかがわかる道標として、心を掴まれる。介護の支柱のお父さん、家族だからこその心の声を書くお兄さん、親戚、友人、SWさん、看護師さん、合唱の教え子の保護者の方ととても沢山の方が言葉を寄せている。

そして、著者のお母さんの介護をしながら抱える葛藤は、今、現在、ヤングケアラーと呼ばれている若くして近親者の方の介護をしている方にとても寄り添える内容となっているのでは、ないかと思った。

途中、大学生の著者が今までの自分とは、全然違う世界、チアリーディングに打ち込む様子がある。そして、一生懸命打ち込むあまり、大怪我を負ってしまう。それ以降、著者の想いは、少しずつ変化していくのだが、そんな小さな日常の変化や積み重ねが本当に丁寧に丁寧に綴られていて、今、現在、普通だと思っていた日常がなくなる事やそれまで元気だった人が突然、変わっていくという事を改めて、考えさせられる。

そう、私自身、コロナの事以外にも父が大腸癌で手術をしていたり、母が認知症になり、日々、変化していく様を目の当たりにしる中でこの本を読んでいたのだ。父の手術への想いだけでなく、色々な感情が溢れてきてしまった。待合室でティッシュで鼻をかみ、涙をぬぐい目と鼻を真っ赤にした。


こうして、順番に感想を書いていくと物凄い膨大になっていきそうなので、最後に私の特に好きだった箇所を引用したい。

「存在論的人間観」この言葉に出会えただけでも、もうこの講座を受講したことには十二分の価値があったと思った。私が母に対して抱き始めた気持ちは、ここにあった。この気持ちが勝手に湧き出てきて、どう受け止めればいいのか、わからなかった。いつまでも親離れできず、寝たきりになってもまだ甘えているだけなのか、それとも私は何か乗り越えることができたということなのか?

「ただ、いてくれればいい」「触れるとあったかいのが、うれしい」そんな複雑な思いを認めてもらえる気がしたのだ。母は、そりゃ機能的に劣るのはあたりまえだけれど、その事実を全部、受け止める。それがその人なのだから、そのままのその人を受け容れりゃいい。元気に指揮者をやってないと母じゃないなんてことはまったくないのだ。


著者は、私のママ友でもあると同時にちょっと大変な子育てをしている仲間でもある。でも、どんな時も彼女は、その人にあったペースをゆっくりと見守ってくれ、そして受け容れてくれる。なかなか、出来る事じゃない。

この本を読むと著者とお母さんの介護を通して語られる、丁寧な日々や想いを自分自身にも重ねる事ができるように思う。それは、キラキラした日常だけでなく、心の中にある見たくない想いや深く考える事を避けてきたような澱のような物も含めてだ。それでも自分自身の事、周りの事も含めて丁寧に掬い取ってあげる事がとても大事なのではないかと思える。

出版されて13年程の歳月が経っているが、もっともっとたくさんの人に手に取って貰いたいと思った。一人一人の小さな物語こそコロナ禍のこの時代、とても大事なのではないかと思わずには、いられないから。


という訳でこの本は、アマゾンでもまだ販売しているようですが、うちのお店にも置いてあります。お店で購入していただけると嬉しいなぁと思います。著者の『10iro books』さんとお話ししてみたい!と思った方は、彼女が店長さんをやる際にお店に来てみては、いかがでしょうか?
只今、緊急事態宣言中で休業中ではありますが、お店が再開した際には、ぜひ!

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一棚本屋さんの問い合わせは、こちらまで。

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