はげひげ(菊仙人)

篠原菊紀。人システム研究所長。公立諏訪東京理科大情報応用工学科教授。ここではギャンブリ…

はげひげ(菊仙人)

篠原菊紀。人システム研究所長。公立諏訪東京理科大情報応用工学科教授。ここではギャンブリング障害、ゲーミング障害、危うい遊び方について書きます。ICD-11(02/2022)で軽々に障害、依存症、および疑いは言えなくなりました。これまでの調査はおおむね「危うい遊び方」疑い調査です。

最近の記事

いわゆるギャンブル依存症の結果として、反社会的な行動が起きるかのように説明されるときがあるが、まあまあ共通の遺伝的脆弱性によって説明できる、という研究。

Slutske WS, Eisen S, Xian H, True WR, Lyons MJ, Goldberg J, Tsuang M. A twin study of the association between pathological gambling and antisocial personality disorder. J Abnorm Psychol. 2001 May;110(2):297-308. doi: 10.1037//0021-843x.110.

    • スマホ依存の説明問題

       今日、テレビ局から電話があった。依存がらみなのか、スマホ依存についてドーパミン神経系から説明してくれないかという話。 「快感でドーパミンが放出されると癖になって依存する」とかいうアホっぽい説明をしてほしいらしい。 「そりゃ、無理だ」と答えた。    そもそもドーパミン神経系は、報酬に対しても活性化するが、報酬が得られそうなトリガーでも活性化する。その程度は実報酬以上になる。だから、人はドーパミンにハマるといわせたいのだろうが、ドーパミン神経は報酬予測誤差を計算する。機械

      • 「(いわゆる)ギャンブル依存症」だから、・・・・という説明は、二重に間違っています。

         コロナに感染したから熱が出る、だるい、せき込む、という話と、「ギャンブル症(☆)」だからギャンブリングをやめられない、問題がおきていても続ける、という話は同じではない。  コロナ感染症は原因によって病気が定義されているが、「ギャンブル症(☆)」は状態によって定義されているだけ。だから「ギャンブル症(☆)」を原因のように語る説明は間違っている。もしそういう説明に出会ったら、「ああ、わかってないな、この人」と思えばいい。  さて、「ギャンブル症(☆)」の必須な特徴(Essent

        • ゲーム障害の必須要件(ICD-11)

           ゲーム行動(「デジタルゲーム」または「ビデオゲーム」)の持続的なパターンで、主にオンライン(すなわち、インターネットまたは類似の電子ネットワーク経由)またはオフラインである可能性があり、以下のすべてによって明らかになる: ①ゲーム行動(例えば、開始、頻度、強度、継続時間、終了、文脈)の制御障害 ②ゲームが他の生活上の関心や日常活動よりも優先される程度までゲーム行動に与えられる優先度の増加 ③否定的な結果(例えば、ゲーム行動による家族の対立、学業成績の低下、健康への悪影

        いわゆるギャンブル依存症の結果として、反社会的な行動が起きるかのように説明されるときがあるが、まあまあ共通の遺伝的脆弱性によって説明できる、という研究。

          The Jonsson-Abbott Scale (JAS)のギャンブル障害予測性

          Jonsson J, Abbott MW, Sjöberg A, Carlbring P. Measuring Gambling Reinforcers, Over Consumption and Fallacies: The Psychometric Properties and Predictive Validity of the Jonsson-Abbott Scale. Front Psychol. 2017 Oct 16;8:1807. 以下がJAS (1) I

          The Jonsson-Abbott Scale (JAS)のギャンブル障害予測性

          ゲーミング障害(ゲーム行動症)のリスク要因

          Ivan Ropovik, Marcel Martončik, Peter Babinčák, Gabriel Baník, Lenka Vargová, Matúš Adamkovič, Risk and protective factors for (internet) gaming disorder: A meta-analysis of pre-COVID studies, Addictive Behaviors, Volume 139, 2023, 107590, 

          ゲーミング障害(ゲーム行動症)のリスク要因

          ギャンブリング障害(ギャンブル症)のリスク要因

          Moreira D, Azeredo A, Dias P. Risk Factors for Gambling Disorder: A Systematic Review. J Gambl Stud. 2023 Jun;39(2):483-511.から 「ギャンブル依存症は誰でもなりうる病気です」という主張がしばしば行われる。どんな病や障害も誰でもなりうるといえば、その通りなのだが、他の病気や障害と同様、いわゆるギャンブル依存症にはリスクの濃淡があることが繰り返し報告され

          ギャンブリング障害(ギャンブル症)のリスク要因

          「ゲーム行動症」も「ギャンブル症」も「こすっからしい」用語だと思っています。

          わたしは「ゲーム行動症」も「ギャンブル症」も「こすっからしい」用語だと思っています。 アメリカ精神医学会のDSM-5TRやWHOのICD-11での表現通り「ギャンブリング障害(gambling disorder)」「ゲーミング障害(gaming disorder)」が正しい。 「障害」は響きが強いから「症」で、という議論があるそうですが、少なくともICD-11での定義ではそのくらい強い用語です。 たとえばゲーム障害(gaming disorder)のICD-11での診断要件

          「ゲーム行動症」も「ギャンブル症」も「こすっからしい」用語だと思っています。

          これが2023年の記事か!唖然!PRESIDENT ONLINE 2023/08/18 17:00「パチンコ依存→借金→コンビニ強盗」という悪循環…世界でも類を見ない「ギャンブル大国・日本」という現実

          わたし、たまにPRESIDENTから取材を受ける。信頼しているメディアだが、この記事にはおどろいた。「パチンコ依存→借金→コンビニ強盗」という悪循環、と記載しながら本文にその記述はなく、あおりコピーだ。こういう議論をしたいならデータを示しつつでないと偏見(スティグマ)を生み出す。実際、このような犯罪との関連が一般以上に有意に強いことを示したデータはないはずだ。 また「世界でも類を見ない「ギャンブル大国・日本」という現実」の根拠として示した数字は以前対策会議などで参考資料として

          これが2023年の記事か!唖然!PRESIDENT ONLINE 2023/08/18 17:00「パチンコ依存→借金→コンビニ強盗」という悪循環…世界でも類を見ない「ギャンブル大国・日本」という現実

          香川、ネット・ゲーム学習シート(中学生版)について。今後、この手の学習ツールを作ろうとする場合の注意点。

          香川県では「ネット・ゲーム依存予防対策学習シート」を作って学習しているそうです。 これがそれ↓ https://www.pref.kagawa.lg.jp/kenkyoui/gimukyoiku/syokai/sonota/internet/gakusyusheet.html その中学生版を覗いてみました。 https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/17874/cyugakkou_worksheetr5.pdf まあ、批判が多かった、

          香川、ネット・ゲーム学習シート(中学生版)について。今後、この手の学習ツールを作ろうとする場合の注意点。

          いわゆる依存症、雑感

          私の立場はこれまでのいわゆるギャンブル依存症、ゲーム依存症うたがい調査は、ICD-11基準なら「障害」や「疾病」ではない「危ない遊び方」やそこにすら至らない場合を大量に含むので、「依存症」「障害」「症」を使うべきではない、というもの。 SOGSで調査すると当該行為をしている人の十数%は疑いになる。そんなのICD-11いうところのギャンブリング障害(ギャンブル症)のわけがない。疾病や障害ではない危険な遊び方すらこのうちうち。嗜癖過程をカウントするのはうまくない。 「ゲーム等

          いわゆる依存症、雑感

          「ゲームを繰り返すと」の説明を、「ゲームに依存している場合」の説明に切り替えるロジックには注意しましょう。

          以下は久里浜医療センターの「3)ゲームの依存性について」からhttps://kurihama.hosp.go.jp/hospital/section/internet/information-box.html 以下は久里浜医療センターのHPからの引用。この表現には重大な論理の飛躍またはすり替えがある。 「もちろん、依存には脳内の機能変化が関係している。ゲームは上記のような、ワクワク感や多幸感を生み出す。そこには、脳の深部に存在する脳内報酬系が関わっている。ゲームを繰り返して

          「ゲームを繰り返すと」の説明を、「ゲームに依存している場合」の説明に切り替えるロジックには注意しましょう。

          「ギャンブリング障害」と「危ない遊び方」は違う。ギャンブル等依存症などという呼称でその区分をごまかすのは治療、予防対策上、望ましくない

          「ギャンブル等依存症」と「ギャンブリング障害」は違う  いわゆるギャンブル依存症は、「WHOも認めた病気」などといわれる。実際、ICD-10(死亡率と罹患率のための国際疾病分類第10版)では「病的賭博」、2022年のICD-11(死亡率と罹患率のための国際疾病分類第11版)ではギャンブリング障害(gaming disorder)と記載されている。一方、DSM-5 (精神障害の診断と統計マニュアル第5版)では2013年からギャンブリング障害が記載されている。  わが国ではギャン

          「ギャンブリング障害」と「危ない遊び方」は違う。ギャンブル等依存症などという呼称でその区分をごまかすのは治療、予防対策上、望ましくない

          「ゲーム行動症(ゲーミング障害)」と「危険な遊び方」は違う、責任あるゲームプレイを

          以下、ゲーム障害全国調査報告書、付録14-18、ゲーム障害調査研究会、ゲーム障害全国調査報告書、2023年4月 https://www.cesa.or.jp/uploads/2023/info20230424.pdf  より多少加筆 「ゲーム行動症(ゲーミング障害)」と「Hazardous Gaming(ゲームの危ない遊び方、仮訳)」は違う  いわゆるゲーム依存症への注目は、WHOがICD-11(死亡率と罹患率のための国際疾病分類第11版)にゲーム障害(gaming dis

          「ゲーム行動症(ゲーミング障害)」と「危険な遊び方」は違う、責任あるゲームプレイを

          ゲーム障害と言いすぎる問題について教えてください CHATGPT様

          以下、CHATGPTのお答え ゲーム障害とは、一定期間を超えて、ゲームに対する異常な執着や制御不能な状態に陥ることを指します。ただし、最近の研究では、この状態は非常にまれであり、誤診される可能性があることが示されています。 「ゲーム障害」という用語が問題視される理由は、以下のような点が挙げられます。 1,ゲーム障害は、単なるゲームのプレイ時間が長いだけの状態とは異なります。ゲーム障害の診断には、その人の生活や仕事、学業などに悪影響を与えているかどうかを考慮する必要があり

          ゲーム障害と言いすぎる問題について教えてください CHATGPT様

          ゲーム症にだまされないように、ギャンブル症も同じです

          DSM-5(DSM-5-TR)でのインターネットゲーム障害、診断基準としてよく出てくるもの 1.インターネットゲームへのとらわれ、執着 2.インターネットゲームをしていない時の離脱症状 3.より多くの時間をインターネットゲームに費やそうとする耐性 4.インターネットゲームをやめたり減らしたりするこのの困難、制御不能 5.インターネットゲーム以外の過去の趣味・娯楽への興味の喪失 6.心理社会的問題があってもインターネットゲーム使用を継続すること 7.インターネットゲーム利用につ

          ゲーム症にだまされないように、ギャンブル症も同じです