メディア運営で得たものと失ったもの|Web制作会社がアフィリエイトに取り組んだ話③
4日連続で更新する予定のこの「Web制作会社がアフィリエイトに取り組んだ話」ですが、この記事で3日目となります。
1回目は、アフィリエイトに取り組んだきっかけ・目的と総収益について、そして昨日更新した2回目は、アフィリエイトと受託事業の現在について書きました。
そして第3回目となるこの記事では、当社(≒僕個人)がアフィリエイトメディア運営で得たものと失ったものについて書いていきます。
Webメディア、特にアフィリエイト収益を主体としたそれを運営するのは、企業によるオウンドメディア運営とは目的が大きく異なります。
地方で受託制作を主業にしている制作会社がオウンドメディアに取り組むのは、成果が出ているかどうかは置いておいて、たまに目にしますよね。
しかしアフィリエイトについては言及されることは非常に少ないと感じていました。
それは「アフィリエイト」というビジネスの仕組みやイメージの影響もあると考えていますが、それにしてももう少し情報が出てきてもいいんじゃないかと。
ということでこの記事では、アフィリエイトビジネスについてあまり知らない方に向けて、まずはその大まかな仕組みを。その後、真剣に事業として取り組んだ結果どんなものを得てどんなものを失ったのかを、できるだけ包み隠さず書いていきたいと思います。
アフィリエイトビジネスとは
第一回の記事でも書きましたが、「アフィリエイト」という言葉にはちょっと胡散臭さみたいなものを感じている人が多いように思います。特にクリエイティブ系のお仕事をしている人たちは特に、少し下に見ているというか、そんな空気感を感じます。「俺たちはそんな商売やらねーよ」的な。
「まあ、良い印象ではないですよねー」
っていうのは、アフィリエイトに携わっている人なら全員感じるところではないでしょうか。企業がそれに取り組んでいることを公言することも少なく、東証一部上場の超有名企業の資本がガッツリ入った会社が、いろいろ紐解いてみると「実はやってます」というケースも少なからず存在します。
確かにアフィリエイトビジネスは、事業としての社会的貢献とは少し遠いところにあるのは事実だと思います。あと、事実として「儲かるならある程度グレーなこともやる」という方々がいるのも否定はしません。
例えば、中古ドメインを利用した被リンク施策を用いて、意図的に検索結果画面(SERPS)を操作することは頻繁に見られます(僕はこれをモラルだけで否定するのはちょっとどうかと考えていますが)。
さてそもそも、アフィリエイトの仕組みについて正しく理解できていない方もいるかも知れませんので、主なケースを図解します。
まずビジネス(要望)の流れを見ていきましょう。
このような形で、商品を売りたい広告主企業からメディアまで要望が落ちてきて、購買意欲を高めた状態で広告主のLPへアクセスを送る、と取り決めます。
次にアクセスの流れです。
検索の上位表示や広告経由でアクセス集めて、流入したメディア内のセールスライティングで購買意欲を高めた状態で広告主のLPに送ります。広告主のサイトで購入するかどうかは、アクセスした購買者によります。
最後にお金の流れです。
購買者の購入によって発生した代金は、当然のことながら購買者から広告主に直接支払われます。その後広告主から代理店へ、代理店からASPへ、ASPからメディア運営者に報酬が支払われます。
ケースによっては代理店が存在しないことや、広告主とメディアの直接取引もあり得ますが、主なケースとしてはこのようなかたちです。
さて、ここで質問です。
このビジネスモデル、どこかに怪しい要素がありますか?
広告主には名だたるナショナルクライアントも数多くいますし、ASPは上場してる企業も多くて、僕は普通に営業代行と変わらんやろと思っています。
ここを理解せずに「稼げる!と喧伝される怪しい副業」みたいな目で見ている人は割と多い印象です。
確かに「アフィリエイトで稼げる」的な高額情報商材もあります。また、実際にサラリーマンの副業で、僕が知っている限りでも1ヶ月に1,800万円の利益を上げた人もいます。さらに一部の商材は明らかに優良誤認に近い状態で販売されているのも事実です。
そういう話が悪い方に膨らんでいって、結果的にビジネス全体が悪い印象になってしまったのは理解できるところ。
でも僕はこのビジネスに、真剣に4年間取り組んできたことによって、非常に多くのものを得られたと考えています。
アフィリエイトメディア運営で得られたもの
僕がアフィリエイトビジネスで得たものは大きく3つ。
それは、
・SEOにおけるクエリ感覚と経験
・マーケットインの感覚と経験
・ある程度まとまったお金
です。
まずは「SEOにおけるクエリ感覚と経験」について。
どれだけSNSマーケティングがもてはやされたとしても、やはり検索経由の流入はまだまだ大きなボリュームを持っています。技術的にも、検索以外の方法で欲しい情報にたどり着くのは難しいことが多いですよね。
SNSで「タグれば」いいじゃん、と思うかもしれませんが、それだって何らかの言葉を使って検索します。
この「検索」という行動による集客を考える上でとても大切なのが、「クエリ感覚」だと考えています。「クエリ感覚」とは、誰かが何らかの情報を探しているときに、どんな言葉で検索するのかを想像する力です。
これがズレていると、ありきたりで激戦なクエリで施策を打って上位表示できなかったり、誰も検索しないようなクエリを自分勝手に考えて上位表示して、PVも少ない・CVしないと悩むことになります。
コンテンツSEOによるアフィリエイトは、「売りたい商品の情報」を「(潜在的・顕在的に)買いたい人」に届けることが生命線のビジネスです。
もちろん、ストレートな商品名で上位表示ができるのであれば、ぶっちゃけめちゃくちゃ売れます。めっちゃ儲かります。でもそんなのは全員が考えることですから、そこからの発想力が重要になってくるでしょう。
また、綺麗事だけじゃないSEOについても知見を深めることができます。被リンクを自演でないかたちでどうやって構築するか。もちろん場合によっては自演リンクだって有効な手段となりえることを理解できているかどうか。
こういったことを実践を通じて、しかも危機感を持って培えたのです。
制作会社は、Webサイトを納めたら「地道に育てましょう」と言わざるを得ないと思いますが、どう育てればよいかを経験則としてわかっていることは、大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。
次に「マーケットインの感覚と経験」について。
僕らって往々にして、自社事業を行うときにプロダクトアウト的な発想になりがちです。「こういうサービスは絶対受けるはずだ!」という思い込みを、様々な方法を駆使して正当化していく。
正当化されちゃってるもんだから、周囲の人もなんとなくその気になって盛り上がっちゃう。
その結果、まったく支持されないサービスやプロダクトをつくって、大赤字まではいかなくとも、微妙な結果となって終了する(これは事実僕が以前に経験してることです笑)。
アフィリエイトに取り組む際に何度か教えていただいたこととして「マーケットを作ろうなんて思ってはダメ」ということです。すでに存在しているマーケットに乗せてもらう感覚でちょうどよい、と。
僕らがSNSなんかで普段見ている東京の起業家の方々は、超優秀で人脈も環境も整ってて、そりゃーキラキラして見えますよね。でもあの方々の足元は死屍累々のはずなんですよ。
だって僕らが普段使ってるようなイケてるサービス、いくつあります?数えるほどですよね。
toCならスマホのホーム画面の一角を占拠しなきゃならないことが多いし、toBにしてもそれぞれの分野で圧倒的結果を残さないとすぐにシェアを奪われてしまうわけで。
そんなことを「自分にだってできる」と思うのは、ちょっとぶっ飛んでないと成り立たないと思うんです。だから彼らはすごいわけで。
凡庸なる僕らとしては、彼ら、もしくは先達が切り開いたマーケットのほんの一部を貸してもらうくらいの感覚でいたほうが、何かと怪我が少なくて済むと思うんですよね。
当社が今注力しているNZワインのサイトだって、ワイン市場があって、その中にNZワインという超ニッチなジャンルがあるわけです。そこならなんとか食い込んでいけるんじゃないか、という仮定に基づいたものですし。
先程の「クエリ感覚」のところでも触れた、
誰も検索しないようなクエリを自分勝手に考えて上位表示して
といったことは、往々にして起こるんですよね。
ここの感覚も、アフィリエイトを通じて得たものなのです。
最後に「ある程度まとまったお金」について。
コンテンツSEOによるアフィリエイトは、効率の良い方法で行えば、非常に大きな利益をもたらしてくれるものでした。
もちろん「儲かる市場(=激戦ジャンル)」に突撃する勇気は必要ですが、そこである程度の立ち位置(この場合は売れるクエリでの検索順位)を持ってしまえば、制作系業務ではとても考えられないような収益を得られます。
当社の内部留保は正直それほど大きくできませんでしたが、それでも次に何かをやる場合にもしっかり投資することは可能となりました。そのひとつが先述したNZワインのサイトです(このサイトで考えているビジネスはまた別の機会に書こうと思いますが、非アフィリエイトです)。
また、破談となってしまったものの、数千万円というまとまった金額でのサイト買収のお話も進めていました。「事業売却」なんてそうそう経験できるものではないのでなんとか実現したかったのですが、タイミングの問題や、買収金額が高額なことから、双方が慎重になって流れてしまいました。
このように、手元にある程度まとまったお金を得たことについても、4年間真剣に打ち込んできた結果として受け止めています。
ただし正直なところ、この事業に取り組んだことによって失ってしまったものも、わずかながらあると考えています。
アフィリエイトメディア運営で失ったもの
厳密に言うと「失ったもの」というより、「得られなかったもの」と言ったほうが良いのかもしれません。
まず、おそらくクリエイティブ系の人からの信頼は、この事業を通じては得られていないと思います。これは、どうしてもお金にフォーカスしてしまうからだと考えています。普段からお金や売上の話が多くなってしまっていましたし。
とはいえ、そもそも僕は、よい事業を営むためには何よりもお金が必要だと考えていますから、制作会社としてのスタンスがちょっと違うのは事実です。これは仕方ないかなと思いますし、寂しいですが特に問題視はしていません。
もうひとつ、労働観が少しだけ狂いました。
以前はがんばって徹夜も辞さずに成果物を納めて、翌月末にそのぶんだけ入金があって、それに向けて納めた次の日から(もしくは多くの場合並行して)別の仕事に取り組むというスタイルでした。もちろん今だってそれは重要な事業として捉えていますし、絶対にやめない方向で考えています。
ただ一方で、検索結果という厳しい壁を乗り越えれば、ほとんど手を動かさなくても高い利益率の収入が発生する事業をつくってしまったわけです(今は低空飛行ですが涙)。
会社が潤うことによって良いサイクルになったことも多くありますが、悪い面もあるかなと思います。以前の僕とは絶対に考え方が変わっていますし、実際に離れていった人もいますから、本当に難しいところですね。
事業主として、心を強く持ちたいと思います。
今回のまとめ
さて「Web制作会社がアフィリエイトに取り組んだ話」も、この記事で3回目。
アフィリエイトビジネスの大まかな仕組と、取り組んだことによって得たもの、そして失った(得られなかった)ものを書きました。
この記事にたどり着いた方で、1回目、2回目をお読みでない方は是非読んでいただきたいと思います。
割と赤裸々に書いていますので、何らかの参考にはなるんじゃないかと思います。
それでは次回は「この4年間の軌跡」を書きたいと思います。何もなければ明日中には。
※追記 第4回、書きました。
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