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チンパンジーに負けた

こんばんは。
すでに10月も下旬、だいぶ涼しくなってきましたね。好きな毛布にくるまってぬくぬくしながら本を読む幸せを堪能できる季節がひたすら嬉しい。おうち大好き人間です。

そしてついさっきひたすら嬉しいと書いたばかりなのに全然違う感情の話をしますが、今日読んだ本でこの記事のタイトル通りの出来事が起きて若干真面目に打ちひしがれました。なんてこった。
先入観は大敵だと認識しているのに懲りもせず見誤る。自分の愚かさに対する自戒を込めてこのnoteを書いています。

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
ハンス・ロスリング 他 / 日経BP社

厚みのある本なので今日だけでは読み終わらないだろうと思っていたものの。
いざ手に取って開いてみれば、軽妙な語り口が面白くてあっという間の一気読みでした。
医師として活躍された著者のエッセイとしても読み応え十分。
(マラリアの薬の入札者を詐欺ではないかと調べたエピソード、驚きすぎて結末に思わず変な声が出たよ)


まず本書の帯に書いてある質問をふたつご紹介します。

世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?
A.20%
B.50%
C.80%
いくらでも電気が使える人は、世界にどのくらいいる?
A.20%
B.50%
C.80%

本書の冒頭には、このふたつを含めた合計13問の質問があります。
この13問をチンパンジーに出題した場合の例え話も書かれているのですが、その方法でいくとチンパンジーの正解率は33%、だいたい4問は正解するだろうという予測が語られています。

人間のわたし、正解数13問中3問
なんてこった。
そりゃ打ちひしがれもしますよ。びっくりしたよ。
冒頭にこの13問を持ってきて、そこから一気に本の世界に引き込む手法には落ち込みつつも拍手喝采ですよ。

人は自分が知っている言葉や知識の範囲で思考する生き物だけど、その内側にいるからこそ、無自覚の思い込みに簡単に囚われます。
恐怖や動揺で思考の幅が狭められるのはまだかわいいもので、過去の体験やただの先入観でしかなかったりする情報を、月日を経てもいつまでもどんな事にも当てはめ続けたり。
凄惨な事件が起きた際に語られる動機が分かり易いものであれば、そこで納得してその背景に思いを馳せる事を止めてしまったり。
身についてしまった思考の癖を引き剥がすのはなかなか容易ではないもの。

本書は人間が陥りがちな10の思い込みを「××本能」として取り上げて、そこから自由になる方法をデータの客観的な見方という形式で紹介する一冊です。
今は誰もがスマホを持っていて情報にアクセスし易い時代だけれど、その分ニュースになりやすい悲愴な話題ばかりを目にしてしまいがち。
それらの過剰摂取は凝り固まった固定観念へと繋がりかねないので、ニュースでは決して取り上げられない世界の情勢や進歩にも目をやる事が、そしてそのためにデータの見方を身に付ける事がいかに重要かを解いています。

それでなくても分断、単純化、犯人探しといった話法はSNSでの煽動と相性抜群なので、そこに乗せられて大事なことを見誤れば自分自身をも損ないかねない。
そうならないために必要なこと、インターネット全盛の現代における教養をまとめた本とも言えます。
メディアリテラシーを学ぶのにも最適なんじゃないかな。チンパンジーに負けた人間が何を言うかという話かな。

ただ読み終えるだけでなく、実践して日々の思考に活かして自分自身をアップデートする事で、初めて胸を張って読了と呼べるんでしょう。
だからわたしもそこに辿り着けるように頑張ります。勘違いを取っ払って。

恐れは分断を生み、分断は憎悪を招くもの。
そうならないために、そしてウィズコロナを生き抜くために。本当の教養の入り口に、触れてみてはいかがでしょうか。



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